2026年8月24日から28日までの東京株式市場を振り返ります。日経平均株価は週初の6万6016円から週末6万6405円へ、週間で389円20銭(0.59%)の上昇にとどまりました。

ただ、この数字だけを見て「動かない週だった」と結論づけると、実際に起きていたことを丸ごと見落とすことになります。週間の値幅は2,345円。日々の値幅も1,000円を超える日が3日ありました。そして同じ週にTOPIXは1.95%上昇し、日経平均の3倍以上の上昇率を記録しています。

この週を貫いていたのは、アドバンテスト1銘柄の動きでした。5営業日のうち4日で寄与度ランキングの首位に立ち、日経平均を▲338円から+302円まで振り回しています。それでいて株価自体は週間で1.75%下げただけでした。

「指数」と「市場」は同じものではない。今週はそれが数字ではっきりと示された1週間でした。

今週の数字を一目で振り返る

日次の値動き

曜日日付終値前日比騰落率TOPIX売買代金
月8/2465,528.09円▲488.27円▲0.74%+0.15%7兆636億円
火8/2565,856.43円+328.34円+0.50%+0.50%7兆99億円
水8/2666,262.16円+405.73円+0.62%+0.42%6兆7057億円
木8/2766,131.98円▲130.18円▲0.20%+0.15%7兆8700億円
金8/2866,405.56円+273.58円+0.41%+0.72%8兆1223億円

週間サマリー

項目数値
週初(8/21終値)66,016.36円
週末(8/28終値)66,405.56円
週間騰落+389.20円
週間騰落率+0.59%
週間高値66,954.69円(8/27)
週間安値64,609.47円(8/25)
週間値幅2,345.22円

日経平均とTOPIXの週間比較

指数8/21終値8/28終値週間騰落週間騰落率
日経平均66,016.36円66,405.56円+389.20円+0.59%
TOPIX4,067.29pt4,146.71pt+79.42pt+1.95%

TOPIXは週の5営業日すべてでプラスとなり、8月20日から7日続伸しました。日経平均とTOPIXの比率を示すNT倍率は16.23倍から16.01倍へ低下しています。

今週の主要テーマ

テーマ1:アドバンテスト1銘柄が指数を振り回した5日間

今週の日経平均は、この1銘柄を追うだけでかなりの部分が説明できてしまいます。

日付終値前日比寄与度順位日経平均
8/21(金)35,900円———66,016.36円
8/24(月)34,500円▲1,400円▲337.90円押し下げ1位▲488.27円
8/25(火)34,450円▲50円▲12.07円押し下げ2位+328.34円
8/26(水)35,700円+1,250円+301.70円押し上げ1位+405.73円
8/27(木)34,610円▲1,090円▲263.08円押し下げ1位▲130.18円
8/28(金)35,270円+660円+159.30円押し上げ1位+273.58円

5営業日のうち4日で寄与度首位。寄与度の合計は▲152円05銭です。それでいて株価は3万5900円から3万5270円へ、週間で630円(1.75%)下げただけでした。

なぜこの1銘柄がこれほどの影響力を持つのか。日経平均が株価の高い銘柄ほど指数への影響が大きくなる株価平均型の指数だからです。アドバンテストは3万円台後半という高い株価水準にあり、1日1,000円を超える値動きがそのまま指数に反映されます。

背景にあったのは米エヌビディアの決算です。同社に半導体検査装置を供給するアドバンテストは、決算発表を挟んで期待と失望の間を往復しました。26日には決算を先回りする買いで急伸し、27日には決算が好内容だったにもかかわらず利益確定売りで急落。28日にはエヌビディア株の急反発を受けて再び買われています。

テーマ2:好材料が売り材料に転じた2つの事例

今週は「良い材料が出たのに株価が下がる」という場面が2日連続で起きました。

1つ目は27日のアドバンテストです。エヌビディアの決算は市場予想を上回る増収増益で、通期は約70%の増収見通しという好内容でした。それでもアドバンテストは3.05%安。前日に先回りして買われていたためです。

2つ目は28日のキオクシアHDです。同社は27日引け後、サンディスクとともに2032年までに総額約5兆円の投資計画を発表しました。AI関連需要の急拡大に対応する大型投資です。それでも株価は8.76%安。市場では過剰投資への警戒感につながったとの見方が出たうえ、前日には岩手県での新工場棟建設報道を受けてすでに5%高となっていました。

材料の中身がどれだけ良くても、株価がすでにそれを織り込んでいれば、発表は売り材料になります。この構図を今週は2度、異なる銘柄で確認したことになります。

テーマ3:イベント待ちで細り、通過して膨らんだ商い

曜日売買代金前日比
月(8/24)7兆636億円—
火(8/25)7兆99億円▲537億円
水(8/26)6兆7057億円▲3,042億円
木(8/27)7兆8700億円+1兆1,643億円
金(8/28)8兆1223億円+2,523億円

水曜の6兆7057億円は4月21日以来、約4カ月ぶりの7兆円割れでした。エヌビディア決算とジャクソンホール会議という2つのイベントを前に、参加者が動けなくなっていたことを示しています。

そして決算を通過した木曜から一転して商いは膨らみ、金曜には今週最大の8兆1223億円まで回復しました。きれいなV字です。板が薄い状態で1,000円を超える値幅が出ていた週前半と、参加者が戻った週後半では、同じ値動きでも意味が異なります。

注目銘柄——明暗を分けたもの

銘柄週間騰落率材料コメント
リクルートHD+11.95%米ソフトウェア株高への連動週後半に急伸。28日は押し上げ寄与2位
東京エレクトロン+3.57%エヌビディア決算とAI需要期待週内で唯一、大きく崩れずに上昇を維持
フジクラ+1.14%AI・データセンター向け電線需要25日に押し上げ3位、28日は押し下げ2位と乱高下
アドバンテスト▲1.75%エヌビディア決算を巡る先回り買いと利益確定5日中4日で寄与度首位。今週の主役
ソフトバンクG▲1.79%AI関連株全般の変動24日に押し下げ2位、25日に押し上げ1位と往復
ファーストリテイリング▲3.06%確認できず週の複数日で押し下げ寄与の上位に定着
キオクシアHD▲11.82%5兆円投資計画の発表と過剰投資への警戒週間の下落率が最も大きい主力株

この表から読み取れるのは、今週の物色が「AI関連」という括りでは動いていなかったという点です。同じAI関連でも、東京エレクトロンは3.57%上昇し、キオクシアは11.82%下落しました。フジクラや古河電気工業といった電線株も、週内で上昇率トップと下落率トップを往復しています。

一方で、日経平均に採用されていない中小型株や内需株には、週を通じて着実に買いが入りました。東証グロース市場250指数先物は5日続伸、TOPIXは7日続伸です。指数の数字が示す姿と、市場の実態にはこれだけの差がありました。

来週の注目点5選

1. ウォーシュFRB議長のジャクソンホール講演の解釈

28日23時に予定されている講演の内容を、東京市場は週明けに織り込むことになります。同議長はフォワードガイダンスに慎重な姿勢とされ、今回は質疑応答も予定されていません。踏み込んだ言及がなければ方向感の乏しい展開が続きますが、9月会合での利上げに明確な示唆があれば、米金利上昇とドル高・円安が同時に進む可能性があります。その場合、輸出関連には追い風、値がさグロース株には逆風という形で物色が分かれやすくなります。

2. 米雇用統計と日本の財政動向

市場の関心はジャクソンホール後、米雇用統計へ移ると見込まれています。今週は米週次新規失業保険申請件数が予想外に減少するなど、雇用の底堅さを示す指標が続きました。強い雇用が続けば利上げ観測が強まり、金利上昇を通じて株式の相対的な割高感につながりやすくなります。日本側では財政拡張への懸念が長期金利に影響を与えうる点も焦点です。

3. 日銀9月会合に向けた観測

27日の氷見野日銀副総裁の発言は想定内と受け止められ、市場では9月利上げの確率がすでに高く織り込まれています。ただし28日に発表された8月の東京都区部消費者物価指数は、生鮮食品を除くコア指数が前年比1.8%上昇と、前回の2.0%から鈍化しました。物価の鈍化と雇用の改善という、方向の異なる材料が同時に出ている状況です。今後の指標次第で観測が揺れれば、銀行・保険・証券といった金融関連の物色に影響が及びます。

4. 原油価格の再上昇と中東情勢

WTI原油は8月21日の86.81ドルから25日には82ドル台前半まで約5%下落しましたが、週末にかけて中東情勢の先行き不透明感から反発しました。今週前半の相場を支えたのは「原油安、インフレ懸念後退、金利低下、ハイテク買い戻し」という連鎖です。原油が再び上昇すればこの前提が崩れ、値がさグロース株には重荷となりやすい局面です。逆に落ち着けば、週後半の流れが継続する余地があります。

5. 米政権による半導体・電子機器への追加関税検討報道

米ニュースサイトのポリティコが27日、トランプ米政権が半導体や電子機器の一部への追加関税を検討していると報じました。この報道を受けて米国市場ではAMDなどが売られています。実際の政策として具体化するかどうかが焦点で、進展があれば日本の半導体関連にも影響が及ぶ可能性があります。関税を巡る報道は突発的に出ることが多く、材料が出た場合の値動きは大きくなりやすい点に注意が必要です。

来週の日経平均シナリオ

シナリオ想定レンジ主な前提条件
強気シナリオ68,000円〜70,500円ウォーシュ議長の講演が想定より穏当な内容にとどまり、米金利が低下。原油も落ち着き、AI関連への資金流入が再開。8月20日高値6万6325円と13週移動平均線6万7023円を終値ベースで明確に上抜ける展開
基本シナリオ64,500円〜68,500円講演に新味がなく、米雇用統計待ちで方向感の乏しい展開が続く。値がさAI株の変動は続くものの、TOPIXの底堅さが相場全体を支える。8月25日安値6万4609円と8月27日高値6万6954円のレンジ内での推移
弱気シナリオ62,000円〜64,500円講演がタカ派的と受け止められ米金利が急上昇。原油の再上昇も重なりインフレ懸念が再燃。半導体への追加関税が具体化した場合、AI関連から資金が流出。心理的節目の6万4000円や100日移動平均線6万3860円を割り込む展開

今週の日経平均は、8月21日時点の25日移動平均線6万5615円と75日移動平均線6万6241円の間で推移し、週末はいずれも上回って引けました。ただし26日と27日はザラ場で8月20日高値を上抜けながら終値では届かず、28日も前日高値に届いていません。上値の重さは3日連続で確認されており、明確な上抜けにはきっかけが必要な状況です。

今週の相場を一言で総括

「1銘柄が指数を振り回した裏で、市場全体は静かに7日続伸していた週」

日経平均は週間+0.59%。この数字だけを見れば動きのない週です。しかし同じ週にTOPIXは+1.95%上昇し、東証グロース市場250指数先物は5日続伸しました。アドバンテスト1銘柄の激しい上下が、市場全体で起きていた着実な上昇を覆い隠していたのです。

指数はひとつではありません。日経平均、TOPIX、グロース250はそれぞれ異なる計算方法を持ち、異なるものを映します。ひとつの数字だけで相場を判断すると、実際に動いていた資金の流れを見落とすことになります。

今週の各営業日については、日次の深掘りノートで寄与度・業種別動向・個別材料まで詳しく整理しています。8月24日、8月25日、8月26日、8月27日、8月28日からご覧いただけます。

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