2026年8月17日から21日までの週、日経平均株価は前週末比2697円44銭(3.93%)安の6万6016円36銭で取引を終えました。TOPIXは3.10%安の4067.29ポイントです。
数字だけを見れば「大きく下げた週」ですが、この5営業日はそれ以上に珍しいものでした。日経平均だけが上がる日、日経平均だけが下がる日、市場全体が下がる日、市場全体が上がる日、そして再び日経平均だけが下がる日——相場の性格が5日連続で入れ替わっています。何がそれを起こしたのかを整理します。
今週の数字を一目で振り返る
| 曜日 | 日付 | 終値 | 前日比 | 騰落率 |
|---|---|---|---|---|
| 月 | 8/17 | 69,220.25円 | +506.45円 | +0.74% |
| 火 | 8/18 | 67,460.73円 | ▲1,759.52円 | ▲2.54% |
| 水 | 8/19 | 65,326.42円 | ▲2,134.31円 | ▲3.16% |
| 木 | 8/20 | 66,216.79円 | +890.37円 | +1.36% |
| 金 | 8/21 | 66,016.36円 | ▲200.43円 | ▲0.30% |
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 週初(8/14終値) | 68,713.80円 |
| 週末(8/21終値) | 66,016.36円 |
| 週間騰落 | ▲2,697.44円 |
| 週間騰落率 | ▲3.93% |
| 週間高値 | 69,225.57円(8/17) |
| 週間安値 | 65,133.98円(8/19) |
| TOPIX週間騰落 | 4,197.20pt→4,067.29pt(▲3.10%) |
| NT倍率 | 16.37倍→16.23倍 |
週の値幅は4091円。売買代金は8.9兆円、10.2兆円、10.1兆円、8.6兆円、7.9兆円と、荒れた週半ばに膨らみ、週末にかけて縮小しました。
今週の主要テーマ
1. 指数の性格が5日で5回変わった
今週最大の特徴はここにあります。東証プライムの値上がり比率と日経平均の騰落率を並べると、両者がまったく噛み合っていない日が続きました。
| 項目 | 8/17 | 8/18 | 8/19 | 8/20 | 8/21 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日経平均 | +0.74% | ▲2.54% | ▲3.16% | +1.36% | ▲0.30% |
| TOPIX | ▲0.31% | ▲1.05% | ▲3.09% | +1.18% | +0.19% |
| プライム値上がり比率 | 約40% | 46.4% | 23% | 84.8% | 56.7% |
| 寄与度集中率 | 上位5で上昇幅の140% | 上位5で下落幅の66% | 上位5で下落幅の54% | 上位5で上昇幅の48% | 上位2で下落幅の164% |
| 相場の性格 | 指数だけ上昇 | 指数だけ下落 | 全面安 | 全面高 | 指数だけ下落 |
とくに週の両端が鏡像になりました。月曜はアドバンテストなど上位5銘柄が上昇幅の140%を稼ぎ、値上がり銘柄は4割しかないのに日経平均だけが上昇。金曜はファーストリテイリング1銘柄で指数の下落幅を上回る222円を押し下げ、東証プライムの56.7%が値上がりしたのに日経平均だけが下落しました。同じ現象が符号を変えて現れた形です。
火曜には「指数が2.5%下げた日のほうが、指数が0.7%上げた日より値上がり銘柄が多い」という逆転も起きています。日経平均が株価水準の高い銘柄の影響を強く受ける指数である以上、終値の増減だけを見ていると市場の実態を取り違えかねない——今週はそれが5日続けて示された週でした。
2. 主役は企業業績ではなく金利だった
今週の値動きは、金利の4段階の変遷にほぼそのまま連動しています。
週前半は国内要因でした。18日に新発10年物国債の利回りが一時2.945%と30年ぶりの高水準をつけ、日銀の9月利上げ観測と財政悪化懸念が背景となりました。PERの高い半導体関連が集中的に売られています。
19日には震源が海外に移りました。米30年債利回りが一時5.34%と19年ぶりの水準に上昇し、フランス債やドイツ債の利回りも高水準で推移。AI投資に絡む巨額の社債発行が需給悪化への警戒につながりました。この日は国内の長期金利がむしろ低下したにもかかわらず、日経平均は3.16%下げています。
20日は米財務省が国債の買い入れ消却の上限額を20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げると発表し、日米の金利が急低下。日経平均は890円高となり、東証プライムの84.8%が上昇しました。ところが21日には「効果は長期的に限られる」との見方が優勢となり、米10年債利回りは1日で発表前の水準に戻っています。
3. 中東情勢と原油高が通奏低音に
米国とイランが6月に署名した戦闘終結に向けた覚書は、60日の交渉期間内に最終合意に至らないまま期限を迎えました。延長も見送られ、WTI原油先物は週を通じて上昇。20日には86.47ドルで引け、時間外では87.69ドルまで買われています。
アラブ首長国連邦がイランからミサイル攻撃を受けたと発表し、トランプ米大統領は「1国に対してこれまで実施された中で最も壊滅的な経済作戦を開始する」と表明しました。原油高はインフレ懸念を通じて金利を押し上げ、そして株式のバリュエーションを圧迫する——今週の下落の背後には、この経路が一貫して流れていました。一方で海運、鉱業、石油・石炭製品には資金が向かい、週を通じて最も安定して買われたセクターになっています。
注目銘柄——明暗を分けたもの
| 銘柄 | 週間騰落率 | 材料 | コメント |
|---|---|---|---|
| 太陽誘電(6976) | 約▲15.6% | ヘッジファンドが8月に持ち株を大幅削減との報道 | 金利上昇でPERの高い電子部品が真っ先に売られた |
| ソフトバンクG(9984) | 約▲8.4% | オープンAIの成長鈍化報道、個人向け社債1兆円の準備報道 | 19日は1銘柄で485円押し下げ。AI投資の調達コストを象徴 |
| 東京エレクトロン(8035) | 約▲8.2% | 金利上昇による割高感 | 20日の全面高でも下落し、上昇日に参加しなかった |
| 三菱UFJ(8306) | 約▲4.8% | 金利の解釈が週内で4回反転 | 買い→売り→売り→買いと日替わりの評価 |
| ファーストリテイリング(9983) | 約▲4.7% | 米ウォルマート決算による消費関連株売り | 21日は1銘柄で指数の下落幅を上回る222円を押し下げ |
| アドバンテスト(6857) | 約▲2.6% | 指数寄与度の大きさ | 月曜+219円、火曜▲463円、金曜+130円と上下双方で首位級 |
| キオクシアHD(285A) | 約+1.1% | メモリー需要期待と金利上昇が交錯 | 日中は▲12.6%から+15.1%まで振れたが週間ではほぼ横ばい |
キオクシアHDの動きが今週を象徴しています。月曜に15.1%上昇し、水曜に12.6%下落し、木曜に6.0%戻して、週間ではほぼ変わらず。個別企業の事情ではなく、金利と需給で株価が振り回された週でした。
来週の注目点5選
1. エヌビディアの5-7月期決算(8月26日)
今週はAI・半導体関連が指数を上下に振り回し続けました。その中核企業の決算だけに、内容次第で来週の方向感が変わりうる局面です。今週すでに「決算を見極めたい」として買いを見送る動きが出ていました。
2. ジャクソンホール会合とウォーシュFRB議長の初講演(8月27〜29日)
就任後初の講演となる見通しです。同議長はフォワードガイダンスを絞る方針を掲げており、金利の先行き観測が大きく動く可能性があります。今週の値動きが金利にほぼ連動していたことを踏まえれば、来週最大のイベントといえます。
3. 米財務省の財政健全化策とバイバックの実効性
ベッセント米財務長官は今週末か週明けにも財政健全化策を公表する予定で、買戻し額が40億ドルを上回る可能性にも言及しています。20日のバイバック発表が1日で効果を失ったことを踏まえると、踏み込みの度合いが問われます。市場が納得すれば金利低下と株高に、失望すれば再び上値が重くなりやすい局面です。
4. 東京8月消費者物価指数と日銀9月会合
今週発表の7月全国CPIは生鮮食品を除く総合が前年比1.8%上昇と、日銀目標の2%を7カ月連続で下回りました。日銀の9月利上げはすでにほぼ織り込まれており、焦点は利上げペースとその先の水準に移っています。来週は氷見野日銀副総裁の講演も予定されており、発言内容が注目されます。
5. 中東情勢と原油価格
ベッセント財務長官は24日に対イラン措置について記者会見を開く予定です。原油高が続けばインフレ懸念を通じて金利上昇圧力となり、株式には逆風になりやすい一方、海運や資源関連には追い風が続きます。事態が緩和に向かうかどうかで、セクターの明暗が変わりうる局面です。
来週の日経平均シナリオ
| シナリオ | 想定レンジ | 主な前提条件 |
|---|---|---|
| 強気シナリオ | 68,000円〜71,000円 | エヌビディア決算が市場予想を上回り、ジャクソンホールでの講演がハト派的に受け止められる。財政健全化策が評価され米長期金利が低下方向に向かう |
| 基本シナリオ | 64,000円〜68,000円 | 2つの大型イベントを前に様子見が続き、金利と原油をにらんだ神経質な値動き。値がさ株の振れで日中の変動幅は大きくなりやすい |
| 弱気シナリオ | 61,000円〜64,000円 | エヌビディア決算が失望を誘い、米長期金利が一段と上昇。中東情勢の悪化で原油が90ドルに接近し、インフレ懸念が再燃する |
今週の相場を一言で総括
「下げたのは日経平均であって、日本株ではない日が3日あった週」
週間で3.93%下落しましたが、その内訳を見ると、市場全体が本当に売られたのは19日の1日だけでした。残る4日は値がさ株の動きが指数を実態以上に振り回しています。企業業績ではなく金利が主役の週であり、その金利は国内要因から世界的な債券需給、さらにAI投資の資金調達コストへと震源を移していきました。来週はエヌビディア決算とジャクソンホール会合という2つの大型イベントを控え、方向感が定まりにくい局面が続きそうです。
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