2026年9月7日から11日までの東京株式市場を振り返ります。週初は米半導体株高を追い風に日経平均が1378円高と大幅上昇しましたが、そこが週の頂点でした。火曜に円が約7カ月ぶりの152円台まで急伸して輸出株が総崩れとなり、週後半は米インフレ指標の上振れを受けた金利上昇が相場を押し下げています。金曜には一時2000円を超える下げとなり、週間では1009円60銭安と3週間ぶりの下落に転じました。主役が円高から金利へ、そしてAIテーマのなかでも半導体からメモリ、光ファイバー、検査装置へと日替わりで交代した一週間です。
今週の数字を一目で振り返る
| 曜日 | 日付 | 終値 | 前日比 | 騰落率 |
|---|---|---|---|---|
| 月 | 9月7日 | 66,399.84円 | +1,378.90円 | +2.12% |
| 火 | 9月8日 | 65,269.33円 | ▲1,130.51円 | ▲1.70% |
| 水 | 9月9日 | 65,142.78円 | ▲126.55円 | ▲0.19% |
| 木 | 9月10日 | 65,270.95円 | +128.17円 | +0.20% |
| 金 | 9月11日 | 64,011.34円 | ▲1,259.61円 | ▲1.93% |
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 週初(9月4日終値) | 65,020.94円 |
| 週末(9月11日終値) | 64,011.34円 |
| 週間騰落 | ▲1,009.60円 |
| 週間騰落率 | ▲1.55% |
| 週間高値 | 66,791.84円(9月8日 前場) |
| 週間安値 | 63,200円台(9月11日 前場) |
週の値幅は約3600円。上下に大きく振れた割に、週間の下落率は1.55%にとどまっています。売買代金は5日とも8兆円を超え、水曜には9兆2303億円まで膨らみました。相場が膠着しているように見える日でも、資金の入れ替えは活発だったことを示しています。
今週の主要テーマ
主役が「円」から「金利」へ交代した
週前半と後半で、相場を動かす材料が入れ替わりました。前半の主役は円です。日銀が9月17〜18日の会合で追加利上げに動くとの観測に加え、米財務長官が日銀に早期の利上げを促しているとの見方から円買いが加速。火曜には一時1ドル152円88銭と約7カ月ぶりの円高水準をつけ、4月末から7月の介入でも超えられなかった155円の節目を、介入なしで突破しました。
ところが後半は構図が変わります。木曜発表の米8月卸売物価指数(PPI)が前年比5.4%増と予想を上回り、米長期金利が2023年10月以来の水準へ上昇。金利差拡大を意識したドル買いで、円は金曜に154円台へ戻しました。同時に国内の長期金利も節目の3%に迫り、日米同時の金利上昇がバリュエーションの高いAI・半導体株を直撃しています。
円高局面で売られた自動車株が週末には買われ、逆に円高メリットで買われた内需株が金利上昇局面では支えを失う。同じ一週間のなかで、勝ち組と負け組が入れ替わりました。
原油が一本調子で14%上昇した
今週もっとも方向感が明確だったのが原油です。前週末に1バレル91ドル48銭だったWTIは、金曜朝には一時104ドル台半ばと5月中旬以来の高値をつけました。週間で約14%の上昇です。
背景には供給不安が3つ重なっています。サウジアラビアが8月の原油生産を1990年来の低水準に減らしたとOPECに報告したこと、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海に面する港湾都市モカを制圧したこと、そしてイランが弾道ミサイルの生産を再開したと伝わったことです。米国とイランの戦闘終結は11月の米中間選挙後になるとの観測も浮上しました。
興味深いのは、同じ原油高への株価の反応が日ごとに変わった点です。水曜は非鉄金属が業種別上昇率トップでしたが、木曜と金曜は下落率トップ。金曜には石油・石炭製品まで下落業種に入りました。原油高がインフレ懸念を通じて金利を押し上げ、相場全体のリスク回避を強めたことで、セクター個別の恩恵が打ち消された形です。
AIテーマの主役が日替わりで交代した
今週の日経平均で押し上げ寄与トップになった銘柄を並べると、選別の激しさが見えてきます。月曜から水曜まではソフトバンクグループが3日連続でトップを守り、この3日間だけで約750円分を押し上げました。木曜はTSMCの8月月次売上が前年同月比53.3%増と好調だったことを受け、アドバンテストが約261円でトップに立ちます。
その間、買われるテーマも移り変わりました。月曜はマイクロンの高帯域幅メモリ増産報道でメモリ関連、火曜は円高メリットの内需株、水曜は米コーニングの光ファイバー大型受注で電線株、木曜は半導体検査装置。ところが金曜には、そのすべてが売られました。押し上げ寄与トップは京セラのわずか22円。連日200円から500円の押し上げ役がいた週の締めくくりとしては、あまりに小さな数字です。
注目銘柄——明暗を分けたもの
| 銘柄 | 週間の動き | 材料 | コメント |
|---|---|---|---|
| エアトリ〈6191〉 | 2日間で約+39% | 最終利益を3.3倍に上方修正、期末配当を10円から160円へ | 3期間で総額100億円超の還元方針も示し、木曜はストップ高 |
| アルビス〈7475〉 | 2日間で約+48% | ライフコーポレーションによるTOB(3,780円、51%プレミアム) | 非公開化を企図。買付価格へのサヤ寄せが続いた |
| ソフトバンクG〈9984〉 | 月〜水で計約750円押し上げ、金曜▲3.96% | 週前半はAI関連の中心。個別材料は特定されず | 火曜は1銘柄で約273円押し上げ、下げ幅を大きく抑えた |
| アドバンテスト〈6857〉 | 水▲231円→木+261円→金▲531円 | TSMC月次の好調と、その後の金利上昇 | 寄与度が2日連続で最下位と最上位を行き来した |
| 古河電工〈5801〉 | 水曜+12.63% | 米コーニングとベライゾンの光ファイバー長期供給契約 | AIインフラ投資が光通信にも及ぶとの見方が広がった |
| 東京エレクトロン〈8035〉 | 火曜以降4日続落 | — | 同じ半導体でも検査装置が買い戻された日に取り残された |
| タイミー〈215A〉 | 金曜▲16.61% | 5〜7月期の連結営業利益が市場予想を下回る | 登録ワーカー数や稼働率は伸びたが利益面で失望を招いた |
| セイコーG〈8050〉 | 火曜▲15.48% | 材料は確認できず | シチズン時計、カシオ計算機も同日に大幅安となった |
来週の注目点5選
1. 米8月消費者物価指数(CPI)
PPIが前年比5.4%増と予想を上回った直後だけに、消費段階の物価がどうなるかが最大の焦点です。加速が確認されればFRBの早期利上げ観測が強まり、米長期金利の一段の上昇を通じて日本の値がさグロース株に逆風となります。逆に想定内にとどまれば、売られすぎた半導体関連に自律反発の余地が出てきます。
2. 米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月16日開催との観測が出ています。8月雇用統計が16万2000人増と予想を大きく上回り、PPIも加速したことで、利上げの織り込みが進んできました。声明文やパウエル議長の会見で今後の道筋がどう示されるかが注目されます。
3. 日銀金融政策決定会合(9月17〜18日)
政策金利を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げるとの観測が根強く、今週の円高もこの思惑が起点でした。利上げが実施されれば銀行・保険にはプラス、不動産・建設には逆風となりやすく、セクター間の明暗がさらに分かれる可能性があります。声明のトーン次第で円相場も振れやすい局面です。
4. 中東情勢と原油価格の水準
サウジの減産、フーシ派のモカ制圧、イランのミサイル生産再開という3つの供給不安が同時進行しています。原油が104ドル台で高止まりすればインフレ圧力が続き、金利上昇を通じて株式の重荷となります。逆に緊張が緩和して原油が落ち着けば、金利低下と株価反発の両方が期待できる構図です。
5. 日本の長期金利3%とNT倍率の行方
新発10年物国債利回りは金曜に節目の3%まで上昇する場面がありました。明確に突破するかどうかで、不動産・建設株とグロース株への圧力の強さが変わります。あわせてNT倍率が金曜に15.89倍と16倍を割り込んだ点も注目です。日経平均とTOPIXのどちらが先に戻るかで、相場の回復パターンが見えてきます。
来週の日経平均シナリオ
| シナリオ | 想定レンジ | 主な前提条件 |
|---|---|---|
| 強気シナリオ | 65,500円〜68,500円 | 米CPIが想定内にとどまり金利が低下、原油も落ち着く。日銀が利上げを見送るか慎重なトーンを示し、売られすぎたAI・半導体に買い戻しが入る展開 |
| 基本シナリオ | 62,500円〜66,000円 | CPIはまちまち、原油は100ドル前後で高止まり。FOMCと日銀会合を前に様子見が広がり、64,000円を挟んだ神経質な推移が続く展開 |
| 弱気シナリオ | 58,900円〜62,500円 | CPIが上振れて米長期金利が5%台へ、国内金利も3%を明確に突破。中東情勢がさらに悪化して原油が110ドルを試し、リスク回避が加速する展開 |
いずれも断定的な予測ではありません。来週は米CPI、FOMC、日銀会合と重要イベントが立て続けに控えており、結果次第でどちらにも振れやすい局面です。
今週の相場を一言で総括
今週を一言で表すなら、「日経平均という指標の性質が、5日間で余すところなく見えた週」です。
月曜は値下がり銘柄が過半でも2.12%高、火曜は値下がり4分の3の全面安、水曜は値上がり銘柄が優勢でも小幅安、木曜は前場956円安から高値引け、そして金曜はTOPIXの3倍下げての約1カ月ぶり安値。5日間すべてで、銘柄数や体感と指数の数字がかみ合いませんでした。原因はいずれも同じで、株価水準の高い銘柄が指数を左右する仕組みにあります。
保有している銘柄の値動きと日経平均のニュースがどうも合わない。今週そう感じた方は、相場を正しく見ています。各日の詳しい分析は、日次の深掘りノートでご確認いただけます。