2026年8月31日から9月4日までの一週間、東京株式市場を動かしたのは金利でした。国内の新発10年物国債の利回りは2.940%から3.015%へと1996年9月以来の水準まで上昇し、株式市場はその過程で買い戻し、資金移動、全面安、反発と目まぐるしく表情を変えました。

週の後半には為替が主役に交代します。日銀の利上げ観測が急速に強まり、ドル円は週間で3円46銭の円高。長く続いた円安トレンドの終了を指摘する声も出始めました。日経平均は週間1,384円62銭安と3週ぶりの下落です。

今週の数字を一目で振り返る

日経平均の日次値動き

曜日日付終値前日比騰落率
月8月31日66,311.93円-93.63円-0.14%
火9月1日66,215.34円-96.59円-0.15%
水9月2日64,325.64円-1,889.70円-2.85%
木9月3日64,214.48円-111.16円-0.17%
金9月4日65,020.94円+806.46円+1.26%

週間サマリー

項目日経平均TOPIX
週初(8月28日終値)66,405.56円4,146.71pt
週末(9月4日終値)65,020.94円4,103.23pt
週間騰落-1,384.62円-43.48pt
週間騰落率-2.09%-1.05%

週内の高値は9月1日の66,525円70銭、安値は9月3日の63,772円80銭で、値幅は2,752円90銭に達しました。5営業日のうち4日が下落で、そのうち3日は下落率0.2%未満。実質的に9月2日の1営業日で週の下げのすべてが生じたことになります。

注目すべきは日経平均とTOPIXの下落率の差です。日経平均が2.09%安に対しTOPIXは1.05%安と、ちょうど2倍の開きがつきました。この差が今週の相場を読み解く鍵になります。

今週の主要テーマ

テーマ1:長期金利3%突破が相場の重心を動かした

今週最大の変化は金利です。国内10年債利回りは8月31日の2.940%から、9月1日に一時3.000%、9月2日には3.015%と、1996年9月以来およそ30年ぶりの水準に達しました。木原官房長官が「極めて高い緊張感を持って注視」と述べる局面です。

重要なのは、株式市場の反応が金利水準の上昇とともに段階的に変わっていったことです。月曜と火曜の段階では、金利上昇は「銀行や商社にプラス、値がさグロース株にマイナス」というセクター間の明暗を作るにとどまっていました。9月1日には東証33業種のうち26業種が上昇しており、市場全体では買い優勢だったのです。

それが水曜に一変します。3%を突破した途端、金利は特定業種の相対評価を変える要因から、株式全体のバリュエーションを切り下げる要因に変質しました。33業種すべてが下落し、東証プライムの値下がり銘柄比率は92.3%。逃げ場そのものが消えました。

週後半は金利の上昇が一服し、木曜に下げ止まって金曜には値がさグロース株が急反発しています。金利が上がれば売られ、落ち着けば買われるという、単純ですが強い関係が一週間を通して働いていました。

テーマ2:円安トレンドが終わった可能性

週の後半、主役は金利から為替に移ります。

日付・時点ドル円
8月31日 15:24159円80銭
9月1日 15:26159円90銭
9月2日 15:00159円81銭
9月3日 15:00157円37銭
9月4日 15:00156円34銭

起点は9月2日の日銀・高田審議委員による講演でした。連続利上げや大幅利上げの可能性に言及したことで、160円台前半にあったドル円は急落。9月3日には終値ベースで約1.8%の大幅安となり、直近2日間で5円前後の下落となりました。市場は9月18日の日銀会合での0.25%利上げをほぼ完全に織り込み、年内もう1回の追加利上げもほぼ織り込んだ状態です。

週間では3円46銭の円高。ドル高・円安トレンドは終了したのではないかとの見方も出ています。ただし7月末の日米協調介入後につけた8月3日の安値155円21銭は割り込んでおらず、この水準が当面の下値メドとして意識されそうです。

株式市場への影響は明確でした。金曜の日経平均は806円高となりましたが、円高が自動車など輸出関連株の売りを促し、相場全体の上値を抑えています。同じ日に買われたのは為替感応度の相対的に低い値がさグロース株でした。

テーマ3:値がさ株1銘柄が指数を決めた5日間

今週は5営業日連続で、特定の1銘柄が日経平均の方向を大きく左右しました。

日付その日の主役銘柄寄与度日経平均の値動き
8月31日アドバンテスト約-381円-93.63円
9月1日東京エレクトロン約-146円-96.59円
9月2日ソフトバンクグループ約-271円-1,889.70円
9月3日ファーストリテイリング約-193円-111.16円
9月4日ソフトバンクグループ約+473円+806.46円

8月31日は日経225構成銘柄の値上がりが131、値下がりが91と値上がりが優勢でしたが、アドバンテスト1銘柄の381円安が指数をマイナスに沈めました。9月1日も値上がり170対値下がり55で、指数だけがマイナスです。

そして金曜は逆方向で同じことが起きます。値上がり86、値下がり137と値下がりが多数派でありながら、ソフトバンクグループの約473円が指数を806円高に押し上げました。TOPIXは0.03%高とほぼ横ばいで、市場全体は強くも弱くもなかったことを示しています。

これは日経平均が株価加重、TOPIXが時価総額加重という算出方法の違いによるものです。株価水準の高い銘柄ほど日経平均への影響が大きくなる構造が、今週は上下両方向で毎日のように表面化しました。週間の下落率が日経2.09%対TOPIX1.05%と2倍の差になったのも、この積み重ねの結果です。仕組みについては株価加重と時価総額加重の違いで詳しく解説しています。

注目銘柄——明暗を分けたもの

銘柄週内の主な値動き材料コメント
ソフトバンクG〈9984〉9/2に約271円押し下げ、9/4に11%高で約473円押し上げ金利動向と米ハイテク株の連動2営業日で700円超の寄与度の振れ。今週の主役
アドバンテスト〈6857〉8/31に4.48%安の33,690円米SOX指数3.47%安の流れ1銘柄で381円押し下げ。週後半は買い戻し
住友金属鉱山〈5713〉9/2に11.55%安の10,035円NY金先物の3日続落、実質金利の上昇原油高のなか金は下落。資源内で明暗
日鉄鉱業〈1515〉9/2に15.47%安、9/3は値上がり上位非鉄市況の軟化と反発週内の振れ幅が最大級
三菱商事〈8058〉9/1・9/3に上昇、9/4に反落原油高とバークシャーCEOの投資意欲発言商社は週を通して主要テーマの一つ
九州電力〈9508〉9/1に8.16%高の2,192.5円ディフェンシブ需要電力は3営業日連続で上昇上位
壱番屋〈7630〉8/31にストップ高比例配分の1,091円ハウス食品Gによる売却・非公開化の検討報道週間で最も明確な個別材料
伊藤園〈2593〉9/2に8.70%高の3,273円1Q時点で通期計画の50%超という好決算全面安の日に年初来高値を更新

来週の注目点5選

1. 米8月雇用統計(今晩発表)

日本時間9月4日21時30分の発表で、来週の初動を決めます。市場のFRB9月利上げ織り込みは60%前後。ウォラーFRB理事が「インフレ圧力の鈍化が確認されれば政策金利の据え置きを支持する」と述べた直後だけに、雇用が弱ければ利上げ観測はさらに後退しそうです。米ISM製造業とJOLTSがいずれも予想を下回った流れが続くかが注目されます。

2. 9月16日の米FOMC

ウォーシュFRB議長が8月28日のジャクソンホール会合で示したタカ派姿勢が、その後の弱い経済指標を経てどう変化するかが焦点です。利上げが実施されれば値がさグロース株には逆風、見送りとなれば今週金曜のような反発が続きやすい局面といえます。

3. 9月18日の日銀金融政策決定会合

0.25%利上げはほぼ完全に織り込まれており、市場の関心は利上げ幅とその後のペースに移っています。一部には0.25%を超える利上げとの見方もあり、9月3日には関係者の話として0.25%の公算と伝わった際に円が売り戻される場面もありました。想定を超える内容となれば円高と株安が同時に進みやすくなります。

4. ドル円155円21銭の攻防

7月末の日米協調介入後につけた8月3日の安値です。ここを明確に割り込めば、円安トレンドの終了が確認される展開となりそうです。輸出関連株には逆風となる一方、内需株や輸入コストの高い業種には追い風が想定されます。

5. 国内長期金利3%が定着するか

3.015%まで上昇した後は一服していますが、市場には3.25%を視野に入れる見方も出ています。金利が再び上昇に転じれば銀行・保険には追い風、値がさグロース株には逆風という今週前半の構図が戻りやすくなります。9月は株式分割銘柄が53社予定されており、銀行株を中心とした個別物色の受け皿となる可能性も指摘されています。

来週の日経平均シナリオ

シナリオ想定レンジ主な前提条件
強気シナリオ66,500円〜69,500円米雇用統計が弱く利上げ観測が後退。金利低下で値がさグロース株の買い戻しが続き、25日移動平均線を回復する展開
基本シナリオ63,000円〜66,500円FOMCと日銀会合を控えて様子見。金利と為替をにらみながら、業種間の資金移動を伴うもみ合いが続く展開
弱気シナリオ60,000円〜63,000円雇用統計が強く米利上げ観測が再燃。国内長期金利も3%台で定着し、9月2日のような全面安が再現される展開

なお9月7日は米国がレイバーデーで休場となるため、週明けは手掛かり材料に乏しくなりやすい点にも留意が必要です。

今週の相場を一言で総括

「金利が上がって株が下がり、金利が落ち着いて株が戻った週」。教科書どおりの動きが、30年ぶりの水準で起きました。

国内長期金利の3%突破は、単に数字が節目を超えたということ以上の意味を持ちました。金利上昇が業種間の明暗を作る段階から、株式全体を押し下げる段階へと変質する瞬間を、市場は水曜日に目撃したことになります。そして週の後半には、日銀の利上げ観測が円安トレンドそのものを終わらせる可能性まで示しました。

もう一つの発見は、日経平均という指数の性質です。5営業日連続で1銘柄が指数の方向を決め、週間の下落率はTOPIXの2倍になりました。見出しの数字だけを追うと、市場で実際に何が起きているかを見誤りやすい局面が続いています。各営業日の詳しい分析は日次の深掘りノートでご確認いただけます。

← 前の記事 【週次相場振り返り】8月24〜28日|1銘柄が5日間指数を振り回した週。日経平均+0.59%に対しTOPIXは+1.95%、値がさAI株の乱高下が市場全体の上昇を覆い隠した 次の記事 → 【週次相場振り返り】9月7日〜11日|日銀利上げ観測の円高から米インフレ再燃の金利上昇へ、AIテーマが日替わりで回転した末に週末は1,259円安