2026年8月10日から14日までの週、日経平均株価は4営業日で約3,107円(4.74%)上昇し、6万8,713円80銭で取引を終えました。11日は山の日で休場だったため、実質4日間の相場です。

週を通じて上昇し続けた一方、その中身は日ごとに大きく表情を変えました。米雇用統計・CPI・PPIと3つのインフレ指標が連続して鈍化し、FRBの早期利上げ観測が後退したことが一貫した追い風です。ただし買われる銘柄は月曜と金曜でまったく違いました。

この週を振り返るうえで最も雄弁な数字が、上位2銘柄の寄与集中度です。59%→39%→59%→88%。この乱高下が何を意味していたのかを、週全体を俯瞰して整理します。

今週の数字を一目で振り返る

曜日日付終値前日比騰落率
月8月10日66,970.22円+1,363.51円+2.08%
火8月11日山の日(休場)
水8月12日67,524.06円+553.84円+0.83%
木8月13日68,308.59円+784.53円+1.16%
金8月14日68,713.80円+405.21円+0.59%
項目週初(8月7日終値)週末(8月14日終値)週間騰落
日経平均65,606.71円68,713.80円+3,107.09円(+4.74%)
TOPIX4,074.93pt4,197.20pt+122.27pt(+3.00%)

4営業日すべてが上昇でした。ただし上げ幅は1,363円→554円→785円→405円と、13日を除けば縮小傾向です。一方で売買代金は9兆1,904億円→9兆4,421億円→10兆206億円→10兆3,156億円と一貫して増加しました。推進力は落ちながら、参加する資金は増えていた週といえます。

今週の主要テーマ

テーマ1:米インフレ指標の3連続鈍化

週の起点は8月7日発表の7月米雇用統計でした。非農業部門雇用者数が予想外の減少となり、9月の利上げ確率が発表前の55%程度から40%程度へ低下。これを受けた10日の東京市場が1,363円高となり、週の勢いが決まりました。

12日夜のCPIは前年比3.4%上昇と予想通りに鈍化。13日夜のPPIも前月比変わらず、前年比4.7%上昇と予想を下回りました。雇用・物価・卸売物価と、FRBが見る指標が3つ揃って落ち着いたことになります。

興味深いのは金利の反応です。CPIが鈍化した13日、米10年債利回りは前日比+0.008%とわずかに上昇しました。株が反応したのは政策金利に近い短期金利だけで、長期金利は動かなかったのです。12日実施の米10年債入札が最高落札利回り4.683%と2007年以来の高さだったことが示すように、長期側を押さえていたのは物価ではなく国債需給と原油でした。その長期金利がようやく低下したのは、PPIと原油急落が重なった13日夜です。

テーマ2:寄与度の集中と裾野の広がりが同時進行

今週の相場を最も的確に表すのが、以下の対比です。

日付上げ幅上位2銘柄の寄与集中度プライム値上がり比率
8月10日+1,363円約801円約59%58%
8月12日+554円約218円約39%63%
8月13日+785円約460円約59%65%
8月14日+405円約356円約88%72.2%

集中度は乱高下しましたが、値上がり比率は58%→63%→65%→72.2%と一貫して上昇しています。通常、この2つは逆方向に動きます。少数の値がさ株が指数を引っ張る日は市場全体が弱いのが普通だからです。

ところが今週は、集中度が最高の88%に達した金曜日に、値上がり比率も最高の72.2%を記録しました。指数の数字は少数の値がさ株が作り、市場の広がりはそれ以外の資金が作る——2つの層が別々に動いていたことになります。

テーマ3:同じ材料の解釈が数日で反転した

今週は、まったく同じ材料が正反対に受け取られる場面が繰り返されました。

材料8月10日の受け止め8月12〜13日の受け止め
国内長期金利の上昇不動産・銀行に逆風(下落上位)銀行は利ざや拡大期待(12日上昇、13日は上昇率トップ)
原油をめぐる中東情勢需給緩和観測で石油・石炭が下落率トップ原油高で鉱業が上昇上位

さらに14日は原油が2%下落したにもかかわらず、鉱業が業種別上昇上位に残りました。材料そのものより、その時点でどのセクターに資金を置きたいかが先にあり、材料は後から理屈として使われていた印象です。相場の解釈は固定的なものではないと確認できた週でした。

注目銘柄——明暗を分けたもの

銘柄週間騰落率材料コメント
リクルートHD+24.99%通期を7,870億円→9,450億円に上方修正10日にストップ高で+301.70円の寄与。12日に上場来高値を更新したが、14日は押し下げ3位へ
フジクラ+9.26%通期を3,100億円→4,320億円に上方修正(今期2度目)10日・12日は押し上げ上位。13日以降は伸び悩み
イビデン+8.76%AI・半導体基板への需要期待13日は押し上げ3位(+72.41円)→14日は押し下げトップ(▲51.96円)へ完全反転
東京エレクトロン+8.50%米SOX指数の反発に連動13日は押し上げ2位→14日は押し下げ2位。イビデンと同じ動き
アドバンテスト確認できずAI半導体への資金回帰10日・13日・14日と3度プラス寄与トップ。8月13日までで約+11.65%、14日も2日連続で最高値更新
ファーストリテイリング▲2.76%目立った個別材料なし4営業日すべてでマイナス寄与。うち3日は押し下げトップ
トレンドマイクロ確認できず通期を564億円→444億円に下方修正。AI関連費用が想定以上に膨張14日にストップ安(▲14.60%)。AIがコスト増として現れた事例

イビデンと東京エレクトロンの動きが、今週の締めくくりを象徴しています。13日まで押し上げ役だった2銘柄が、14日には押し下げ側の1位・2位へ回りました。買われたのはメモリー系のキオクシアHDとテスターのアドバンテスト。売られたのは前工程装置と基板系です。同じ「半導体」というくくりでは説明できない選別が始まりました。

来週の注目点5選

1. 7万円の心理的節目

14日の高値6万9,608円で7万円まであと約400円に迫りました。ただしSQ値6万9,702円が現物の高値を上回る「幻のSQ」となり、そこから1,100円以上押し戻されています。7月6日の高値7万0,384円前後には抵抗が控えており、ここを超えられるかで来週の性格が変わりそうです。

2. ジャクソンホール会議

今月後半に開催され、ウォーシュ議長の発言に注目が集まっています。3つのインフレ指標が鈍化した後だけに、利上げ休止を示唆する内容なら上振れ、慎重姿勢が示されれば失望売りが出やすい構図です。

3. 9月FOMCの利上げ有無

利上げ確率は40%程度まで低下しましたが、アナリストからは次回利上げが10月または12月にずれ込むとの見方も出ています。9月までに追加の雇用・物価指標が発表されるため、確率は動き続けます。

4. 半導体内部の選別が続くか

14日に始まったメモリー・テスターと前工程装置・基板系の分裂が続くかどうか。これが続けば、指数と個別銘柄の動きがさらに乖離しやすくなります。「半導体が上がった」という表現が意味を持たなくなる可能性があります。

5. 日銀の9月追加利上げ観測

13日には政府が早期利上げを支持しているとの報道も出ました。銀行株には追い風となる一方、株式全体には割高観として意識されます。TOPIXが8日続伸した原動力の一つが銀行株だっただけに、この観測の行方は指数間の差にも影響しそうです。

来週の日経平均シナリオ

シナリオ想定レンジ主な前提条件
強気シナリオ69,400円〜72,800円ジャクソンホールで利上げ休止が示唆され、原油安と長期金利低下が定着。7月6日高値7万0,384円を上抜ければ、6月22日高値7万2,831円が次の目標として意識されます
基本シナリオ67,000円〜70,400円+1σの6万8,000円を挟んだもみ合い。7万円台では戻り待ちの売りが出やすく、上値は7月6日高値の7万0,384円前後で抑えられる展開が想定されます
弱気シナリオ63,500円〜68,000円SQ通過後の需給の剥がれや、インフレ再燃観測による米長期金利の再上昇。25日移動平均線(8月12日時点で6万5,769円)までの調整もありえます

今週の相場を一言で総括

「上がり続けたが、上がっているものは毎日入れ替わっていた」

4営業日すべてが上昇し、週間で約3,107円高。TOPIXは3日連続で最高値を更新しました。それでも、月曜に指数を押し上げたリクルートHDは金曜には押し下げ側に回り、木曜に押し上げ役だったイビデンは金曜に押し下げトップになっています。指数の連騰という表面の下で、資金は絶えず移動していました。

来週は7万円の攻防が焦点になりますが、節目の突破そのものより「何が買われて7万円に近づくのか」を見るほうが、相場の実態を掴めそうです。各日の詳しい分析は、10日・12日・13日・14日の深掘りノートをご覧ください。

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