2026年8月3日から7日までの日経平均株価は、週間で1,244円69銭(1.93%)上昇し6万5,606円71銭で取引を終えました。数字だけを見れば穏やかな上昇週ですが、中身はまったく違います。

週明けは日米協調介入の公表による全面安、水曜は2,342円高のV字回復、そして木曜と金曜は「市場全体は上がっているのに日経平均だけが下がる」という展開でした。5営業日のうち4営業日で、日経平均という数字と市場の実感がずれています。ドル円は介入直後の155円23銭から158円台前半まで3円以上戻り、企業の業績前提すら週の途中で書き換わりました。

今週の相場を、数字と構造の両面から振り返ります。

今週の数字を一目で振り返る

日次の値動き

曜日日付終値前日比騰落率
8月3日63,754.90円-607.12円-0.94%
8月4日63,957.53円+202.63円+0.32%
8月5日66,300.44円+2,342.91円+3.66%
8月6日65,683.26円-617.18円-0.93%
8月7日65,606.71円-76.55円-0.12%

週間サマリー

項目数値
週初の基準(7月31日終値)64,362.02円
週末終値(8月7日)65,606.71円
週間騰落+1,244.69円
週間騰落率+1.93%
週内の最高値(終値ベース)66,300.44円(8月5日)
週内の最安値(ザラ場)62,864.43円(8月4日)
TOPIX 週間騰落+71.63pt(+1.79%)4,003.30→4,074.93

週間の値幅は、ザラ場安値6万2,864円から水曜終値6万6,300円まで3,400円超。日経平均が1日で2,342円動いた日と、76円しか動かなかった日が同じ週に同居しています。

今週の主要テーマ

テーマ1:日米協調介入と、5営業日で反転した業績前提

すべての起点は月曜朝でした。日米両政府が7月31日に円買いの協調介入を実施したと発表し、円は一時1ドル=155円台前半まで急騰。7月下旬には約40年ぶりの円安水準となる163円台をつけていただけに、市場の受け止めは強烈でした。

この日、株式市場が最も警戒したのは為替そのものではなく、決算への波及です。4〜6月期決算の発表が本格化するなかで、想定為替レートを円安方向に見直した企業が多いとされ、円高が続けば通期業績の下方修正につながるとの見方が売りを呼びました。翌火曜、トヨタが営業利益を4,000億円上方修正しながら株価が下げて終えたのは象徴的です。上方修正の主因が「想定為替レートの円安方向への見直し」だったため、介入後の局面では素直に評価されませんでした。

ところが週の後半、ドル円はじりじりと戻します。水曜以降は157円台後半で膠着し、金曜には158円33銭(15時時点)と200日移動平均線を上回りました。介入直後の安値からは3円以上の円安です。そして金曜、ロート製薬が「円安効果など」を理由に業績予想を上方修正し、ストップ高で東証プライム上昇率1位となりました。

月曜に「円高で下方修正が出るのでは」と警戒した市場が、金曜には「円安効果による上方修正」を買っている。わずか5営業日で前提そのものが反転したことになります。

テーマ2:日経平均という数字と、市場の実感のズレ

今週を通じて最も特徴的だったのがこれです。

日付日経平均東証プライムの実態ズレの向き
8月3日-0.94%68%が下落(全面安)指数が実感より強い
8月4日+0.32%58%が下落指数が実感より強い
8月5日+3.66%65%が上昇一致
8月6日-0.93%73%が上昇指数が実感より弱い
8月7日-0.12%60%が上昇指数が実感より弱い

週の前半は指数が実感より強く見え、後半は弱く見えました。向きは途中で反転していますが、原因は一貫しています。指数の方向を決めているのが、ごく少数の値がさ株だということです。

木曜はキオクシア、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソフトバンクグループの4銘柄だけで日経平均が850円ほど押し下げられました。実際の下げ幅は617円ですから、残り221銘柄は合計で230円ほど押し上げていた計算になります。金曜も同様で、アドバンテストとソフトバンクグループの2銘柄で約293円の押し下げ。実際の下げ幅は76円でした。

木曜と金曜は、TOPIXが上昇するなかで日経平均だけが下落しています。金曜に至っては、TOPIX・JPXプライム150・東証グロース市場250指数がすべて上昇し、主要4指数で日経平均だけがマイナスでした。日経平均を見て「今日は弱かった」と判断すると、市場の実態を取り違えることになります。

テーマ3:AI・半導体は「決算」ではなく「ガイダンス」で動いた

今週、AI・半導体関連では同じパターンが3度繰り返されました。

発表企業内容
8月4日引け後AMD第2四半期は市場予想超えも第3四半期見通しが物足りず時間外安
8月5日夕サンディスク/ウエスタンデジタル通期は増収黒字転換も7〜9月期見通しが予想未達
8月6日引け後レーザーテック今期純利益見通しが市場予想を下回る

いずれも決算そのものが悪かったわけではありません。市場が見ていたのは先行きのガイダンスでした。金曜には太陽誘電の目標株価が2万4,000円から1万4,000円へ引き下げられるなど、アナリストの目標株価引き下げも相次いでいます。

ただし、この流れは一方通行ではありませんでした。水曜はSOX指数の6.55%高を受けて半導体セクター全体が買われ、日経平均は2,342円高。イビデンは上方修正と株式分割の発表でストップ高となり、月曜にマイナス寄与3位だった銘柄が2営業日でプラス寄与3位へ転じました。同じセクター内で、ガイダンスの良し悪しが銘柄ごとの明暗を鋭く分けた一週間だったといえます。

注目銘柄——明暗を分けたもの

銘柄動き材料コメント
イビデン〈4062〉8/5 +24.49%(ストップ高)純利益予想を580億円→840億円へ上方修正、株式分割も発表8/3は6.70%安でマイナス寄与3位。2営業日で立場が入れ替わった今週の象徴
フジクラ〈5803〉8/7 一時+14%14時に27年3月期の連結純利益見通しを大幅上方修正金曜後場の転換点。この発表で日経平均は下げ幅を955円縮小した
ロート製薬〈4527〉8/7 ストップ高円安効果などで営業利益を438億円→450億円へ上方修正週の前提が反転したことを最も分かりやすく示した銘柄
ファナック〈6954〉8/3 -14.31%営業利益見通し引き上げも市場予想に届かず一時19%安と1986年9月以来約40年ぶりの日中下落率
トヨタ自動車〈7203〉8/4 上方修正も下落通期営業利益を4,000億円上方修正、自社株買いも発表上振れの根拠が円安だったため介入後の局面では評価されず
ソフトバンクG〈9984〉8/7 マイナス寄与2位4-6月期純利益3,473億円(前年同期比17.7%減)アームの人員増や株式報酬費用の増加が響いた。野村は目標株価を引き下げ
レーザーテック〈6920〉8/7 急落今期純利益見通しが市場予想を下回る今週3度目の「ガイダンス失望」パターン
太陽誘電〈6976〉8/6 下落/8/7 目標株価引き下げ好決算にもかかわらず下落、岩井コスモが目標株価を24,000円→14,000円好決算でもセクターの逆風には勝てなかった典型例

来週の注目点5選

1. 米7月雇用統計の結果と、指標に対する金利の反応

本稿執筆時点で8月7日夜21時30分の発表を控えています。市場予想は非農業部門就業者数が前月比8万人増(6月は5万7,000人増)、失業率は4.2%で横ばい。ただしウォール街の予想は1.8万人増から8.3万人増まで大きく割れており、結果の振れ幅が読みにくい状況です。

注目すべきは数字そのものより、金利の反応です。今週は前哨戦のADP雇用が4.4万人増と予想を下回り、ISM非製造業の雇用指数も50を割り込んだにもかかわらず、米長期金利はむしろ上昇しました。指標の弱さと金利上昇が併存する状態が続けば、株式市場は方向感を失いやすくなります。

2. 日銀決定会合「主な意見」(8月10日)

7月30〜31日会合の議論内容が公表されます。この会合では政策金利が1.0%で据え置かれた一方、1名の委員が1.25%への引き上げを提案していました。介入と同時期の会合だっただけに、利上げ姿勢に関する記述が注目されます。ベッセント米財務長官が「植田日銀総裁が必要な措置を講じると確信」と述べていたこともあり、9月会合に向けた地ならしと受け止められるかが焦点になりそうです。

3. 米7月消費者物価指数(8月12日)

今週は原油が急落から反発へと大きく往復し、FRB高官からは利上げに言及する発言が相次ぎました。ウォーシュFRB議長がインフレ高進なら利上げの用意があると報じられたこともあり、CPIの結果は利上げ観測を大きく左右します。伸びが加速すれば高バリュエーションのハイテク株に逆風となり、鈍化すれば今週の売られ方が行き過ぎだったという評価につながりやすい局面です。

4. 介入効果が続くか、円安が再進行するか

ドル円は介入直後の155円23銭から158円台前半まで戻し、200日移動平均線158円08銭を上回って週を終えました。市場では、IMFが為替介入を「半年で3回以内」「1回あたり3営業日以内」であれば自由変動相場制に区分しているとされ、当局が連続介入に踏み切りにくいとの見方も出ています。160円台に近づけば追加介入への警戒が高まる一方、当局が動かなければ円安再進行の思惑が強まりやすい状況です。

5. 営業日4日とオプションSQ(8月14日)

来週は8月11日が山の日で休場となり、営業日は4日しかありません。そのうえ金曜にはオプションSQの算出を控えています。参加者が減るお盆前の週にSQが重なる構図で、需給要因だけで指数が振れやすくなる点には注意が必要です。決算発表も一巡するため、物色の対象が変わる可能性もあります。

来週の日経平均シナリオ

シナリオ想定レンジ主な前提条件
強気シナリオ67,600円〜70,800円米雇用統計が波乱なく通過し米金利が低下。米CPIの伸びが鈍化し利上げ観測が後退。AI・半導体関連が水曜のような一斉高となり、25日線6万6,656円と7月22日高値6万7,592円を明確に上抜ける展開
基本シナリオ63,600円〜67,600円ドル円が156〜160円で推移し追加介入の観測が新たに出ない。決算一巡後も個別材料株物色が続き、指数は6万5,000円台〜6万6,000円台のもみ合いを軸に上下する展開
弱気シナリオ60,400円〜63,600円米CPIの伸びが加速して利上げ観測が一段と強まり、米長期金利が上昇。AI・半導体関連のガイダンス失望が続き、SQに向けた需給の悪化も重なる展開

いずれのシナリオも前提条件が成り立った場合の目安です。今週は1日で2,342円動いた日と76円しか動かなかった日が同居しており、値幅の想定は幅を持って見ておく必要があります。

今週の相場を一言で総括

「週間1,244円高。ただしこの数字は、今週何が起きたかをほとんど説明しない」

協調介入で始まり、V字回復を挟み、週末は市場が上がるなかで指数だけが下げる。この5営業日を「週間1.93%高」という一行に押し込めても、何も伝わりません。今週学べたことがあるとすれば、日経平均という数字を見るときは、その数字が何を代表しているのかを一度確かめる価値があるということです。指数を動かしていたのは、実質的に7〜8銘柄でした。

もうひとつ、業績の前提は思ったより速く変わります。月曜に「円高で下方修正が出る」と警戒された市場で、金曜には「円安効果で上方修正」がストップ高を呼びました。前提が変われば、同じ決算内容でも株価の反応は変わります。

各営業日の詳しい分析は、日次の深掘りノートでご覧いただけます。8月3日から7日までの5本で、今週の値動きを1日ずつ追いかけています。


■ 抜粋

8月3〜7日の日経平均は週間1,244円69銭高(1.93%高)。日米協調介入で始まりV字回復を挟み、週末は主要4指数で日経平均だけが下落。来週は米CPIとオプションSQが焦点です。

■ タグ

週次相場振り返り, 日経平均, 日本株, 週間まとめ, 来週の展望, 日米協調介入, AI半導体, 決算発表

■ カテゴリー

weekly


編集者メモ(公開本文には含めない)

取得できた日次データと各日の概要

5営業日すべての深掘りノートを作成済みで、本記事はその5本から再構成した。

日付概要
8/3(月)日米協調介入公表で全面安。-607.12円。プライムの68%が下落。アドバンテスト+ファナックの2銘柄で下落幅の70.7%
8/4(火)+202.63円。米ダウ+693ドル・ナスダック+2.13%に対し日経は+0.32%止まり。プライムの58%が下落。トヨタが上方修正も下落
8/5(水)+2,342.91円。SOX指数6.55%高で半導体が一斉復活。プライムの65%が上昇し指数と実感が一致した唯一の日
8/6(木)-617.18円。TOPIXは上昇。プライムの73%が値上がりも4銘柄で850円押し下げ
8/7(金)-76.55円。主要4指数で日経平均だけがマイナス。2銘柄で約293円押し下げ

取得できなかった日はない。

今週の主要テーマの選定理由

  • テーマ1(協調介入と業績前提の反転):週の起点であり、かつ「月曜の警戒 → 金曜のロート製薬」で見事に円環を描いている。読者が最も分かりやすく週の変化を掴める切り口
  • テーマ2(指数と実感のズレ):5営業日中4営業日で乖離が発生し、しかも週の前半と後半で向きが反転した。日次ノートでも毎日この軸を使ってきたため、週次で総括するのが自然。乖離表がそのまま論拠になる
  • テーマ3(ガイダンス相場):AMD → サンディスク/WD → レーザーテックと3度繰り返されており、来週以降も継続しうる構造的テーマ。単発の材料ではない点を重視した

来週の注目点の根拠

  1. 米雇用統計:本稿執筆時点で未発表。予想は+8万人・失業率4.2%(ロイター調べ、68社の予想中央値)。ウォール街の予想レンジは+1.8万人〜+8.3万人と異例の分裂
  2. 日銀「主な意見」:7/30〜31会合は政策金利1.0%据え置き(賛成8・反対1、高田委員が1.25%を提案)。ベッセント財務長官の発言との関連で注目度が高い
  3. 米CPI:今週FRB高官(クック理事、ウォーシュ議長)から利上げ言及が相次いだ
  4. 介入効果:IMF基準(半年3回以内・1回3営業日以内)の論点は8/4のザイFX!報道が出所
  5. SQと営業日4日:8/11が山の日で休場

シナリオのレンジ設定根拠

基準は8/7終値65,606.71円。プロンプト指定の目安(強気+3〜8%/基本±3〜5%/弱気▲3〜8%)に沿って算出。

  • 強気:65,606×1.03=67,575、×1.08=70,855 → 67,600〜70,800円
  • 基本:65,606×0.97=63,638、×1.03=67,575 → 63,600〜67,600円
  • 弱気:65,606×0.92=60,358、×0.97=63,638 → 60,400〜63,600円

強気シナリオの前提に25日線6万6,656円(8/3時点)と7月22日高値6万7,592円を置いたのは、日次ノートで一貫して使ってきた上値メドのため。

事実確認が必要な数値

  • 米7月雇用統計は本稿執筆時点で未発表。公開前に必ず結果を確認し、「来週の注目点1」の記述を実績ベースに書き換えること。結果次第では強気/弱気シナリオの前提も調整が必要
  • 週内のザラ場最高値が未確定。8/5は終値66,300.44円がほぼ高値引けとみられるが確定値未取得。8/7高値は65,990.72円。表では「終値ベース」と明記して回避している
  • 寄与度の円換算値は5日連続で未取得。ただし「4銘柄で850円」(8/6・日経新聞)「2銘柄で約293円」(8/7・株探)は取得済みで、本記事はこの2つで成立している
  • 移動平均線の値は8/3〜8/5時点のもの
  • ドル円の基準時点は8/4のみ17:00、他4日は15:00
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