2026年7月27日から31日の一週間、日経平均株価は前週末比249円13銭安の6万4362円02銭で取引を終えました。週間騰落率にすると0.39%安。月曜と金曜の数字だけを並べれば、ほとんど動かなかった週に見えます。

しかし実際には、水曜に週間安値6万448円90銭まで売られ、そこから金曜に6万5000円台を回復するという、約4600円の値幅を伴う荒い一週間でした。さらに特筆すべきは、5営業日すべてで指数の動きと市場の中身が一致しなかったことです。指数が上がった日に大半の銘柄が下がり、指数が下がった日に大半の銘柄が上がる。そんな日が5日続きました。

本記事では、この週に何が起きていたのかを、日次の記事では見えない週単位の視点から整理します。

今週の数字を一目で振り返る

曜日日付日経平均終値前日比騰落率TOPIX騰落率値上がり/値下がり
7/2764,931.19円+320.04円+0.50%+1.37%1,397/139
7/2862,364.92円-2,566.27円-3.95%-2.52%480/1,047
7/2961,434.19円-930.73円-1.49%+0.26%1,044/491
7/3061,867.43円+433.24円+0.71%-0.54%534/993
7/3164,362.02円+2,494.59円+4.03%+1.29%612/922
項目数値
前週末(7/24)終値64,611.15円
週末(7/31)終値64,362.02円
週間騰落-249.13円
週間騰落率-0.39%
週間高値6万5000円台(7/31)
週間安値60,448.90円(7/29)
週間値幅約4,600円
TOPIX週間騰落-8.01(-0.20%)
売買代金の推移9兆3,556億円 → 9兆1,959億円 → 13兆1,999億円 → 12兆6,645億円 → 10兆1,069億円

売買代金は水曜と木曜に12兆円を超え、5営業日すべてで9兆円台を維持しました。値動きの荒さに見合った商いが伴っていたことになります。

今週の主要テーマ

テーマ1:5営業日連続でねじれ続けた指数と中身

この週を一言で語るなら、これに尽きます。日次の値動き表を見ると、日経平均とTOPIXの騰落率が逆方向を向いた日が2日、同方向でも騰落銘柄数と食い違った日が3日。5営業日すべてで、指数の数字が市場の実態を正確に表していませんでした。

個別に見ると、月曜は市場の約9割が上昇しながら指数の上昇率は0.50%。水曜は指数が930円下げたにもかかわらずTOPIXはプラスで、押し下げ寄与上位5銘柄の効果1209円が下落幅そのものを上回りました。木曜はその逆で、アドバンテスト1銘柄の押し上げ660円が上昇幅433円を超え、日経平均だけがプラスに。そして金曜は上位5銘柄で上昇幅の93%を説明でき、4%高の日に値下がり銘柄が値上がりを上回るという極端な形で週を終えました。

原因ははっきりしています。アドバンテスト、東京エレクトロン、ソフトバンクグループ、キオクシアHDといった値がさの半導体・AI関連が、日経平均に対して過大な影響力を持っているためです。これらが動けば指数が動き、それ以外の1500社近くがどう動こうと指数にはほとんど反映されません。今週はその構造が、5日連続であらゆる角度から可視化されました。この現象についてはリターンリバーサルの解説もあわせてご覧ください。

テーマ2:AI投資への懸念が膨らみ、そして一巡した

週の中盤にかけて相場を支配したのは、AI関連投資の採算に対する疑念でした。火曜は韓国総合株価指数がサーキットブレーカー発動を伴う急落となり、キオクシアHDがストップ安。中国政府系企業の液浸型DUV露光装置への参入報道も重なりました。水曜にはフィラデルフィア半導体株指数が4日続落し、米KLAが好決算にもかかわらず時間外で急落。「良い決算でも売られる」という、疑念が極まった局面です。

流れが変わったのは木曜でした。アドバンテストの業績上方修正を起点に半導体株が買い戻され、金曜にはマイクロソフトが一時17%上昇。AI向け需要の強さと通期のフリーキャッシュフロー黒字維持の見通しが示されたことで、投資回収を巡る過度な懸念が後退しました。SOX指数は6営業日ぶりに8.2%高と急反発しています。

ただし、懸念が完全に消えたと見るのは早計かもしれません。週を通じて売られた局面も買われた局面も、動いていたのはほぼ同じ数十銘柄です。市場全体がAIの成長を確信して買ったというより、特定セクターの需給が振れ続けた週だったと整理するほうが実態に近そうです。

テーマ3:為替は週前半に動かず、週末に一晩で6円動いた

月曜から木曜まで、ドル円は163円50銭から163円80銭という狭いレンジに収まっていました。日経平均が3000円以上動いた週にもかかわらず、為替は驚くほど静かだったのです。この間の株式の値動きが、為替要因ではなくほぼ完全に半導体セクターの需給で説明できることを示しています。

それが木曜夜のニューヨーク市場で一変しました。円が急伸してドル円は163円台から157円98銭まで下落し、200日移動平均線に一時到達。市場では日本の通貨当局による円買い介入の観測が広がりました。円先物の取引量が急増しており、介入時によく見られる動きだとの指摘も出ています。ただし実際に介入が行われたかどうかは確認されていません。

金曜の東京市場では買い戻しが進み、15時時点で160円60銭。週前半の163円台からは3円ほどの円高水準です。半導体に買いが集中したこの日、トヨタやホンダといった自動車株に売りが出た背景には、この円高がありました。

注目銘柄——明暗を分けたもの

銘柄コード週内の動き材料
アドバンテスト6857火曜に押し下げ1位、金曜はストップ高で押し上げ1101.80円業績上方修正
キオクシアHD285A火曜ストップ安、水曜4万円割れ、金曜7,000円高特許訴訟、大株主売却、決算期待
東京エレクトロン8035水曜に5万円ちょうどまで下落、金曜は5万5,500円熊本の事業所停止、上期経常6%上方修正
ソフトバンクG9984週前半は押し下げ常連、金曜ストップ高AI関連センチメントの反転
ファーストリテイリング9983月曜から水曜まで押し上げ上位、金曜は押し下げ側へディフェンシブ退避と巻き戻し
コナミグループ9766週前半に連日上昇、金曜は1,200円安非半導体への資金退避と流出
第一三共4568金曜に321.5円安取引時間中の決算発表
イビデン4062火曜水曜と下落、金曜は3,000円高(21.98%高)半導体パッケージ基板の見直し

この表が示しているのは、多くの銘柄が週内で往復したという事実です。アドバンテストは火曜に指数を最も押し下げ、金曜には最も押し上げました。キオクシアHDはストップ安とストップ高の両方を経験しています。逆にファーストリテイリングやコナミグループは、週前半の避難先として買われ、週末に半導体へ資金が戻ると売られました。銘柄そのものの評価が変わったというより、資金の居場所が週内で二往復したと見るのが妥当でしょう。

来週の注目点5選

1. 為替介入の実態と、その後の円の動き

木曜夜の急激な円高について、通貨当局が介入を実施したかどうかは公表されていません。7月分の外国為替平衡操作の実施状況は対象期間が7月29日までで、30日夜の分は8月末の公表となります。当面は日銀当座預金残高の推計から間接的に探るしかありません。介入があったと市場が確信すれば、当局の許容水準が意識されて円安の進行が抑えられる可能性があります。逆に観測が否定されれば、再び円安圧力がかかる展開も考えられます。輸出関連株への影響を通じて、株式市場の方向感を左右する要因です。

2. 決算発表シーズンの後半戦

8月3日には三菱UFJフィナンシャル・グループなど83社が発表を予定しており、決算シーズンは後半に入ります。今週は東京エレクトロンやアドバンテストの上方修正が相場の転換点になった一方、第一三共やデンソーは取引時間中の発表で急落しました。個別銘柄の値動きが指数以上に激しくなりやすい局面が続きます。特に、これまで買われてきた銘柄が期待に届かなかった場合の反落幅には注意が必要です。

3. 日銀の次回利上げ時期をめぐる思惑

日銀は7月の会合で政策金利を1.0%に据え置きました。利上げを主張したのは高田委員1名です。市場では次回の利上げ時期について、物価の状況次第で早ければ10月といった声も出ています。今後発表される物価関連の指標や日銀高官の発言が、思惑の強弱を左右します。利上げ観測が強まれば銀行株には追い風となる一方、不動産やグロース株には重荷となりやすく、セクター間の資金配分に影響します。

4. 中東情勢と原油価格の行方

原油価格は今週、1バレル89.40ドルから79.26ドルへ約11%下落した後、84.46ドルまで6.5%戻すという激しい往復を演じました。月曜から水曜にかけては原油安を背景に空運や陸運が買われ、木曜以降は原油の反発でその流れが巻き戻っています。中東情勢の緊張が続くなか、原油の水準がどちらに振れるかで物色されるセクターが入れ替わりやすい状況です。

5. 米長期金利の水準と、AI関連株のバリュエーション

7月のFOMCは政策金利を据え置きましたが、票決は9対3と異例の割れ方でした。米30年債利回りは一時5.22%と19年ぶりの高水準に達しています。政策金利が動かないなかで長期金利だけが上昇するという構図は、グロース株のバリュエーションに調整圧力をかけやすい環境です。今週後半に戻したAI関連株が、この金利水準を消化できるかが注目されます。

来週の日経平均シナリオ

シナリオ想定レンジ主な前提条件
強気シナリオ65,000円〜68,500円決算の後半戦で好業績が相次ぎ、AI投資への懸念がさらに後退。米長期金利が落ち着き、円高も一服。7月27日終値6万4931円を回復し、上値追いに転じる展開
基本シナリオ62,000円〜66,500円植田総裁会見の内容を消化しつつ、決算を個別に選別する展開。半導体の買い戻しは一巡し、6万1000円近辺の支持帯と6万5000円台の抵抗の間でもみ合う
弱気シナリオ59,000円〜63,000円決算が期待に届かず今週の戻りが剥落。米長期金利の一段の上昇や中東情勢の悪化が重なり、7月29日安値6万448円を再び試す展開

いずれも一定の前提を置いた想定であり、実際の値動きを保証するものではありません。前提が崩れればレンジの外に振れる可能性もあります。

今週の相場を一言で総括

週間0.39%安という着地は、この週に起きたことを何ひとつ語っていません。

月曜と金曜の終値だけを比べた人にとって、この週は「ほぼ動かなかった週」です。しかし実際には、半導体が崩れて内需に資金が逃げ、そこから半導体へ二往復し、為替は一晩で6円動きました。指数の数字と市場の実態がこれほど乖離した週も珍しく、騰落銘柄数や寄与度を見ていた人と、日経平均だけを見ていた人とでは、まったく違う一週間が見えていたはずです。

各日の詳しい分析は日次の深掘りノートで扱っています。7月27日7月28日7月29日7月30日7月31日からご覧いただけます。

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