週明け27日の東京株式市場で、日経平均株価は前週末比320円04銭高の6万4931円19銭と反発しました。トランプ米大統領がイランへの大規模攻撃を当面見送る方針を表明したことで、中東の地政学リスクが後退したことが最大の材料です。

ただし、この日の相場を「320円高」という数字だけで理解すると、実態を大きく見誤ります。東証プライム市場では約9割の銘柄が上昇し、TOPIXは1.37%高と日経平均の上昇率を大きく上回りました。指数寄与度の大きい半導体関連が重荷となった一方で、それ以外のほぼすべての銘柄が買われるという、めったに見ない構図の一日でした。

本記事では、寄与度と騰落銘柄数のズレを手がかりに、この日の相場の中身を掘り下げます。通常版の記事はこちらからご覧いただけます。

相場サマリー

指数終値前日比騰落率
日経平均株価64,931.19円+320.04円+0.50%
TOPIX4,066.07+54.76+1.37%
東証グロース市場250指数694.92+8.80+1.28%
項目数値
始値/高値/安値65,164.98円/65,220.69円/64,123.40円
売買代金(プライム概算)9兆3,556億円
売買高(プライム概算)22億6,988万株
値上がり/値下がり銘柄数1,397/139

日中値幅は約1,097円と大きく、寄り付きから前場にかけては安値64,123円まで売られる場面がありました。後場に入って半導体関連の下げ幅が縮小するとともに切り返し、大引けにかけてプラス圏を固めた形です。

日経平均を動かした主な要因

中東の地政学リスク後退

最大の材料は、トランプ米大統領がイランへの大規模攻撃を当面見送る方針を表明したことです。23日まで13日間続いた米軍によるイランへの空爆が24日から収まり、イラン側も報復攻撃を停止していることが週末に報じられました。これを受けて、原油高とインフレ再燃という「有事のシナリオ」がいったん巻き戻される展開となりました。

原油急落と国内金利の上昇一服

WTI原油先物は1バレル89.40ドルと前日比3.03%安で90ドルを割り込みました。原油安はインフレ圧力の後退を意味し、追加利上げ観測を和らげます。加えて、前週から水準を切り上げていた国内の新発10年債利回りも上昇が一服し、金利上昇を嫌気してきた内需株にとって買い直しの条件が整いました。

米半導体株の急落という逆風

一方で、前週末の米国市場ではフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が3%を超える下落となり、ナスダック総合指数は3日続落しました。東京市場でも指数寄与度の大きい半導体関連には売り圧力が残り、これが日経平均の上値を抑えました。相場全体は強いのに指数の伸びが鈍いという、この日のねじれの正体はここにあります。

寄与度分析

区分銘柄コード寄与度
押し上げ上位ファーストリテイリング9983確認できず
押し上げ上位リクルートホールディングス6098確認できず
押し上げ上位コナミグループ9766確認できず
押し下げ上位アドバンテスト6857確認できず
押し下げ上位ソフトバンクグループ9984確認できず
押し下げ上位信越化学工業4063確認できず

銘柄別の寄与度(円)は当日分が確認できませんでしたが、プラス寄与上位5銘柄(上記3銘柄にバンダイナムコHD、京セラを加えたもの)の押し上げ効果が合計で約237円、マイナス寄与上位5銘柄(上記3銘柄に中外製薬、フジクラを加えたもの)の押し下げ効果が合計で約477円と伝えられています。

ここが、この日を読み解く最大のポイントです。寄与度上位10銘柄だけを合計すると、差し引きで約240円のマイナスになります。それでも日経平均が320円高で終わったということは、上位銘柄以外の膨大な数の銘柄が小幅高を積み上げて指数を押し上げたことを意味します。「主力株が指数を引っ張った日」ではなく、その正反対の日だったわけです。

東証プライム騰落状況

東証プライム市場の値上がり銘柄数は1,397、値下がり銘柄数は139。比率にしておよそ10対1で、市場全体の約9割が上昇する全面高の様相となりました。変わらず銘柄数は確認できていません。

東証33業種のうち上昇は29業種、下落はわずか4業種にとどまりました。下落した4業種が非鉄金属、鉱業、化学、石油・石炭製品と、いずれも原油・資源価格の反落に直結するセクターで固まっている点も、この日の値動きの筋が通っていることを示しています。

売買代金は9兆3,556億円と、ここ減少傾向にあった水準から再び増勢に転じました。買いの広がりと商いの回復が同時に起きており、単なる自律反発以上の資金の動きがあったと見ることができます。

業種別・テーマ別の動き

上昇セクター

上昇率上位は、空運業、その他製品、ゴム製品、サービス業、鉄鋼の順でした。空運業がトップに立ったのは、原油安による燃料コスト低下期待が直撃したためと考えられます。ゴム製品(タイヤ)も原材料コストの改善が意識されやすい業種で、原油急落が業種別の序列をそのまま作り替えた格好です。

その他製品には任天堂、バンダイナムコHD、コナミGといったゲーム関連が、サービス業にはリクルートHD、ベイカレント、SHIFTなどが含まれます。AI・半導体というテーマから外れて出遅れていた内需・ソフト系に、リターンリバーサル狙いの買いが顕在化しました。

下落セクター

非鉄金属、鉱業、化学、石油・石炭製品の4業種のみが下落しました。中東リスクの後退は資源価格の下落を通じてこれらのセクターには逆風となるため、市場全体の上昇とは逆方向に振れています。

半導体は明暗が分かれる

半導体関連は一枚岩ではありませんでした。SUMCO、レーザーテック、ディスコ、東京エレクトロン、太陽誘電には買い戻しが入った一方、アドバンテスト、キオクシアHD、フジクラ、イビデンは下落。売買代金トップのキオクシアHDは取引終盤に下げ渋ったものの続落となりました。前週末のSOX指数急落の影響が、後場にかけて徐々に和らいでいった過程が読み取れます。

為替・米国株・金利の影響

項目水準時点
ドル円163円50銭台2026-07-27 東京15時台
NYダウ51,947.25ドル(+235.60)2026-07-24
S&P5007,411.98(+3.68)2026-07-24
ナスダック総合24,975.82(-161.87)2026-07-24
米10年債利回り4.675%(-0.018)2026-07-24
WTI原油先物89.40ドル(-3.03%)2026-07-24

ドル円は前週末のニューヨーク終値163.83円から水準を切り下げ、東京時間は163円45銭から163円71銭のレンジで推移しました。三菱UFJ銀行の仲値は163.69円(前営業日164.01円)。午後は163円50銭台を中心とした狭いもみ合いとなりました。

円高方向とはいえ20銭程度の小幅な動きで、輸出株の重荷になる規模ではありません。むしろ原油高の一服によって日本の貿易赤字拡大への懸念が後退したことが円買いにつながった面が大きく、株式市場にとってはプラスに作用したと整理できます。ただし現在の水準は約40年ぶりの円安圏にあり、為替介入への警戒感は引き続き市場の底流にあります。

米国株は指数によって明暗が分かれました。NYダウは3営業日ぶりに反発した一方、ナスダック総合は3日続落。この「ダウ高・ナスダック安」という組み合わせが、東京市場でも「バリュー株高・半導体株安」という形でほぼそのまま再現された点は押さえておきたいところです。

個別決算・材料株

銘柄コード材料内容株価反応
信越化学工業406327年3月期は営業益10%増の計画も物足りなさが意識される-8.31%
マクニカホールディングス3132半導体好調で4-6月期経常益3.2倍上昇
シンプレクス・ホールディングス43734-6月期(1Q)最終は4%増益で着地+8.98%
サイボウズ47766月売上高14.1%増でプラス継続上昇
東洋エンジニアリング6330プライム値上がり率上位に浮上+11.20%
KOA6999急落し値下がり率上位-9.24%

信越化学は増益計画を示しながらも市場の期待に届かず、8%を超える下落となりました。全面高の地合いのなかで指数の押し下げ役に回った点で、この日を象徴する銘柄のひとつです。反対に、半導体商社のマクニカHDは経常益3.2倍という好決算で買われており、「半導体セクター全体が売られた」という単純な整理では説明しきれない選別が進んでいます。

テクニカル面

水準終値との関係
均衡表雲上限(日足)66,383.50上値抵抗
13週移動平均線66,076.61上値抵抗
均衡表転換線(日足)65,751.42当面の上値メド
6日移動平均線65,408.98直近の上値メド
75日移動平均線64,479.12下値支持(0.70%上に位置)
ボリンジャー-2σ(25日)64,000.12下値支持
均衡表雲下限(日足)62,439.05下値支持

25日移動平均線は6万8,226円78銭にあり、終値はそこから約4.8%下方に乖離しています。短期的には売られすぎのゾーンから戻りを試す局面と整理できます。一方で75日移動平均線6万4,479円12銭を上回って引けており、中期的な下値の支えは維持されています。200日移動平均線が5万6,625円15銭と大きく下方にある点も、長期トレンドそのものは崩れていないことを示しています。

ストキャスティクスは9日Fastが41.02(前日45.83)、9日Slowが46台と、いずれも中立圏にあります。過熱感も売られすぎ感も乏しく、次のイベント次第でどちらにも振れやすい位置と言えます。当面は6日線から転換線にかけての6万5,400円台から6万5,700円台が上値の関門、75日線の6万4,479円が下値の攻防ラインとして意識されそうです。

今後の見通し

期間想定レンジ主な前提条件
翌営業日64,300円〜65,700円FOMCを翌日に控え様子見が強まりやすい局面。6日線から転換線が上値の関門となり、75日線が下値の支えとして機能するかが焦点
1ヶ月後62,000円〜69,000円FOMCと日銀会合の結果、米大手ハイテク決算の内容、中東情勢の再燃有無。25日線6万8,000円台の回復を試せるかが上振れの条件
1年後58,000円〜78,000円米金融政策の方向性、日銀の正常化ペース、AI・半導体投資サイクルの持続性、為替水準の落ち着きどころ

いずれも一定の前提を置いた想定レンジであり、実際の値動きを保証するものではありません。前提条件が崩れた場合には、レンジの外に振れる可能性も十分にあります。

今日の結論

320円高よりも、1,397対139という数字のほうが、この日の相場を正確に語っています。

中東リスクの後退と原油安、そして国内金利の上昇一服という3つの追い風が重なり、これまでAI・半導体テーマの陰に置かれてきた内需株やバリュー株に資金が戻りました。指数寄与度の大きい半導体関連が重荷となったため日経平均の上昇率は0.50%にとどまりましたが、TOPIXの1.37%高が示すとおり、市場の内側では相当に強い買いが広がっています。

もっとも、この日の買いはリターンリバーサル、つまり出遅れ修正の色彩が濃いものでした。FOMCと日銀会合、米大手ハイテク決算という重要イベントを控え、この地合いが持続するかどうかは今週の結果次第です。通常版の記事はこちらからご覧いただけます。

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