28日の東京株式市場で、日経平均株価は前日比2566円27銭安の6万2364円92銭と大幅に反落しました。下げ幅は一時3000円を超え、終値は約2カ月ぶりの安値水準です。

前日27日は、東証プライム市場の約9割が上昇しながら日経平均の上昇率は0.50%にとどまるという、めったに見ない構図の一日でした。そして28日は、その関係がそっくり裏返ります。アドバンテストと東京エレクトロンのわずか2銘柄で、日経平均の下げ幅の半分以上を説明できてしまう相場になったのです。

本記事では、この2営業日で寄与度と騰落銘柄数の関係が正反対に振れた背景を掘り下げます。通常版の記事はこちらからご覧いただけます。

相場サマリー

指数終値前日比騰落率
日経平均株価62,364.92円-2,566.27円-3.95%
TOPIX3,963.59-102.48-2.52%
東証グロース市場250指数676.57-18.35-2.64%
項目数値
始値64,539.92円(391円27銭安)
高値/安値確認できず(安値は下げ幅一時3,000円超の水準)
売買代金(プライム概算)9兆1,959億円
売買高(プライム概算)25億9,337万株
値上がり/値下がり/変わらず480/1,047/31

寄り付きの下げ幅は400円弱にとどまっていましたが、前場に一気に3000円近くまで拡大し、一時6万2000円を割り込みました。後場は下げ渋ったものの戻りは限定的で、大引けは安値圏で終えています。

日経平均を動かした主な要因

韓国KOSPIの暴落

最大の材料は韓国株の急落です。28日の韓国市場では総合株価指数がサーキットブレーカー発動を伴う10%を超える下落となりました。半導体メモリーの競争激化懸念が震源で、サムスン電子やSKハイニックスといったメモリー大手に売りが集中。日本市場では、これらと連動性を強めているキオクシアホールディングスが直撃を受けました。

中国の露光装置参入報道

中国の政府系企業が液浸型深紫外線(DUV)露光装置の製造を開始したと報じられたことも、市場心理を冷やしました。装置は中国の主要半導体メーカーに納入される見通しとされ、蘭ASMLが強みを持つ市場の競争環境が変わるとの警戒が浮上しています。前日の米国市場ではこの報道を受けて半導体製造装置株が売られており、その流れをそのまま引き継いだ形です。

需給の悪化

海外投機筋による日経平均先物への売りが膨らんだことも下げに拍車をかけました。市場関係者からは、信用買いを入れた個人投資家による持ち高解消売りが誘発されやすく需給環境が良くないとの指摘が出ています。加えてFOMCと日銀会合を目前に控え、リスクを落とす動きが出やすい地合いでもありました。

寄与度分析

区分銘柄コード寄与度(15時時点)
押し下げ上位アドバンテスト6857-730.11円
押し下げ上位東京エレクトロン8035-696.92円
押し下げ上位ソフトバンクグループ9984-238.14円
押し上げ上位ファーストリテイリング9983+152.06円
押し上げ上位KDDI9433+23.33円
押し上げ上位コナミグループ9766+21.62円

数値は15時0分7秒時点のものです。押し下げ上位はこの3銘柄に続いてキオクシアHDが234.65円、イビデンが130.40円。押し上げ上位は中外製薬が18.30円、リクルートHDが16.09円と続きました。

ここが、この日を読み解く核心です。押し下げ上位2銘柄だけで約1427円。日経平均の下げ幅2566円の実に56%を、たった2銘柄が説明してしまいます。一方で押し上げ上位5銘柄の合計は約231円にすぎません。前日27日は、寄与度上位10銘柄の差し引きが約240円のマイナスでも指数が320円高で終わりました。つまり2営業日で、寄与度が指数に対して持つ支配力が正反対に振れたことになります。

東証プライム騰落状況

東証プライム市場の値下がり銘柄数は1047と全体の約7割を占め、値上がりは480、変わらずは31でした。前日は値上がり1397対値下がり139でしたから、わずか1営業日で構図が反転しています。

ただし、これを単純な全面安と整理するのは正確ではありません。値上がり銘柄が480もあり、東証33業種のうち11業種は上昇していました。前日に買われた小売や空運、陸運といった内需・非半導体セクターは、この日も上昇業種の上位に残っています。震源は半導体・電機に限定されており、そこからの資金流出先として内需が受け皿になり続けた、というのがこの日の実態です。

売買代金は9兆1959億円と前日の9兆3556億円とほぼ同水準でした。もっとも、キオクシア1銘柄だけで前場に売買代金1兆3000億円超を記録しており、商いが特定銘柄に極度に集中した点は前日と大きく異なります。

業種別・テーマ別の動き

下落セクター

15時時点で下落が目立ったのは非鉄金属、電気機器、金属製品でした。電気機器は半導体関連の比重が大きく、売りを正面から受けています。非鉄金属は資源価格の急落を反映し、2営業日連続の下落業種となりました。

上昇セクター

上昇業種の上位は小売、空運、陸運、輸送用機器の順。空運と陸運は原油急落による燃料コスト低下の恩恵で、2営業日続けて上昇業種に名を連ねました。小売はファーストリテイリングやニトリホールディングスが牽引し、リスクオフ局面での退避先として機能しています。輸送用機器は円高が進まなかったことも支えになりました。

半導体は総崩れ、ただしAIサービスは選別

アドバンテスト、東京エレクトロン、キオクシアHD、イビデン、レーザーテック、SUMCO、コクサイエレクトリック、ディスコ、SCREENホールディングス、太陽誘電、TDK、村田製作所と、半導体・電子部品は文字どおり総崩れでした。前日に買い戻されたSUMCOとレーザーテックがこの日は値下がり率上位に転じており、前日の反発は戻り売りに飲まれた形です。

一方で富士通が6.26%高、さくらインターネットが6.90%高、SHIFTが7.69%高と、半導体そのものではなくAIサービス・IT寄りの銘柄には買いが入りました。「AI関連が一律に売られた」わけではない点は押さえておきたいところです。

為替・米国株・金利の影響

項目水準時点
ドル円163円70銭台2026-07-28 東京15時台
NYダウ52,210.08ドル(+262.83)2026-07-27
S&P5007,413.18(+1.20)2026-07-27
ナスダック総合24,932.08(-43.74)2026-07-27
米10年債利回り4.641%(-0.037)2026-07-27
WTI原油先物82.26ドル(-7.89%)2026-07-27

前日の米国市場では、ダウ平均が262ドル高と続伸する一方、ナスダック総合は小幅安で終えました。イラン情勢への懸念後退で原油先物が一時8%安となり、資源高が企業業績を圧迫するとの見方が薄れたことがダウを押し上げています。ただし半導体関連には売りが優勢で、SOX指数は2%安。6月下旬の最高値からは20%超下落し、すでに弱気相場入りしています。

ドル円は東京市場で163円67銭から163円83銭のレンジにとどまり、前日からほぼ横ばいでした。株式が4%近く下落する局面としては、円買いの反応が鈍かったと言えます。FOMCを控えたドルの買い戻しに加え、日本の財政悪化への懸念も根強いとの声が聞かれました。

米長期金利は原油安を受けたインフレ期待の低下で年限を通じて低下しました。通常はグロース株の追い風になる環境ですが、この日はセクター固有の悪材料が金利要因を完全に打ち消しています。

個別決算・材料株

銘柄コード材料内容株価反応
キオクシアHD285A米サンディスク急落、特許訴訟で約371億円の損害額認定、米ベインキャピタルの売り抜けストップ安で引け
円谷フィールズHD2767プライム値上がり率1位+26.14%
SUMCO3436メモリー関連からの資金流出-16.53%
ローツェ6323半導体装置関連の売り-15.16%
ユアテック193427年3月期第1四半期決算一時171円高の3日続伸
ハイパー305426年12月期第2四半期累計と通期予想を上方修正一時62円高

この日の主役はキオクシアHDでした。米国発の半導体株安に加え、特許訴訟での損害額認定、大株主による売却という固有の材料が重なり、5万円を割り込んでストップ安で引けています。ストップ高6銘柄に対しストップ安も6銘柄と拮抗しており、市場全体がパニックに陥ったわけではないことが読み取れます。

テクニカル面

水準終値との関係
13週移動平均線65,879.20上値抵抗
均衡表転換線(日足)65,360.92上値抵抗
6日移動平均線65,112.94上値抵抗
75日移動平均線64,598.26下抜け。抵抗に転換
ボリンジャー-2σ(25日)63,355.25下抜け
均衡表雲下限(日足)62,994.34下抜け
均衡表基準線(週足)61,695.32下値支持
26週移動平均線61,047.70下値支持

前日は75日移動平均線の上で踏みとどまっていましたが、この日は75日線、25日ボリンジャーの-2σ、日足の雲下限という3つの節目を一気に下抜けました。25日移動平均線6万7827円22銭からの乖離は、前日の約4.8%下方から約8.1%下方へと大きく拡大しています。

ストキャスティクスは9日Fastが23.65(前日41.02)と、中立圏から売られすぎゾーンの入口まで一気に低下しました。短期的な売られすぎは相当な水準に達しています。下値の支えとして残るのは週足の基準線6万1695円、25日ボリンジャーの-3σ6万1119円、26週線6万1047円で、6万1000円台前半が次の攻防ラインとして意識されやすい位置です。戻りを試す場合は、下抜けたばかりの雲下限6万2994円と75日線6万4598円が抵抗に転じます。なお200日移動平均線は5万6712円と大きく下方にあり、長期のトレンド自体はまだ崩れていません。

今後の見通し

期間想定レンジ主な前提条件
翌営業日61,000円〜64,000円アドバンテストの決算内容と韓国株の動向が最大の変数。週足基準線6万1695円と26週線6万1047円が支えとして機能するか。戻り局面では雲下限6万2994円が抵抗
1ヶ月後57,000円〜68,000円FOMCと日銀会合の結果、米大手ハイテク決算でAI投資への懸念が和らぐか強まるか、中国製DUV装置の実用化進展
1年後55,000円〜78,000円AI・半導体投資サイクルの持続性、メモリー市況の需給、米金融政策の方向性、為替水準の落ち着きどころ

いずれも一定の前提を置いた想定レンジであり、実際の値動きを保証するものではありません。前提条件が崩れた場合には、レンジの外に振れる可能性も十分にあります。

今日の結論

2営業日で、寄与度と騰落銘柄数の関係がそっくり裏返りました。

27日は寄与度上位10銘柄が差し引きマイナスでも指数が上昇し、28日は上位2銘柄だけで下げ幅の半分以上を説明できる相場になりました。日経平均という指数が、いかに一部の値がさ半導体株に振り回されているかを、たった2日で両側から示した格好です。

もっとも、値上がり銘柄が480あり、小売や空運が2日連続で上昇業種に残っている事実も見落とせません。市場全体が総崩れになったのではなく、半導体という一点から資金が抜け、その受け皿に内需が回り続けているというのが実態に近いはずです。明日はアドバンテストの決算が控えており、この構図が加速するか一服するかの分岐点になりそうです。通常版の記事はこちらからご覧いただけます。

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