29日の東京株式市場で、日経平均株価は前日比930円73銭安の6万1434円19銭と大幅に続落しました。下げ幅は一時1962円まで拡大し、6万円台前半まで売り込まれる場面がありました。

ところが同じ日、TOPIXは10.44ポイント高の3974.03と、プラスで引けています。東証プライム市場では約3分の2の銘柄が上昇し、33業種のうち25業種がプラス。指数だけを見れば急落、市場の中身を見れば上昇という、極端なねじれが起きた一日でした。

なお、28日夕に発生した熊本県での地震では人的被害が生じています。本記事は相場材料としての整理にとどめるものであり、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。通常版の記事はこちらからご覧いただけます。

相場サマリー

指数終値前日比騰落率
日経平均株価61,434.19円-930.73円-1.49%
TOPIX3,974.03+10.44+0.26%
東証グロース市場250指数666.12-10.45-1.54%
項目数値
始値62,734.68円
高値/安値63,138.04円/60,448.90円
売買代金(プライム概算)13兆1,999億円
売買高(プライム概算)36億844万株
値上がり/値下がり1,044/491

朝方は前日の急落の反動で自律反発狙いの買いが先行し、一時773円高まで上げ幅を広げました。しかし韓国総合株価指数(KOSPI)が朝方の上昇後に大幅安となると、日本のAI・半導体関連にも売りが波及。後場に下げ幅は一時1962円まで拡大しましたが、取引中盤を境に空売り筋の買い戻しが入り、後場の高値近辺で引けました。日中値幅は約2689円です。

日経平均を動かした主な要因

SOX指数の4日続落と韓国株安

前日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が大幅安となり4日続落しました。米市場ではマイクロン・テクノロジーやAMD、半導体製造装置のラムリサーチの下げが目立ち、SOX指数は一時6%を超えて下落しています。中国のAI開発企業や半導体関連企業の台頭に加え、米企業のAI過剰投資への懸念が根強く残っている状況です。

29日の韓国市場では、同日早朝に四半期決算を発表したSKハイニックスが上昇して始まったものの、買い一巡後は大幅に売られました。KOSPIが午後に一段安となると、東京市場でもサプライチェーン全体への懸念からAI・半導体関連への売りが加速しています。

熊本地震によるサプライチェーン懸念

28日に熊本県で最大震度7を観測した地震も、市場心理に影を落としました。熊本県は近年、国内有数の半導体集積地となっており、複数の企業が県内工場の稼働を停止しています。ルネサスエレクトロニクスは川尻工場と錦工場、東京エレクトロンは合志事業所と大津事業所で操業を停止。ソニーグループも県内工場を止め、TSMCは新工場の建設を中断しました。ホンダも県内工場を停止しています。生産再開の見通しが立たないことが、半導体関連株への売り圧力を強めました。

KLA決算への失望

28日夕に四半期決算を発表した米半導体製造装置のKLAが、時間外取引で急落したことも重荷でした。7〜9月期の業績見通しは市場予想を上回っていましたが、一部ではより高い水準が見込まれており、物足りないとみた売りが出た形です。好決算でも株価が下がるという、AI関連に共通する厳しい反応が続いています。

寄与度分析

区分銘柄コード寄与度
押し下げ上位東京エレクトロン8035確認できず
押し下げ上位ソフトバンクグループ9984確認できず
押し下げ上位キオクシアホールディングス285A確認できず
押し上げ上位コナミグループ9766確認できず
押し上げ上位リクルートホールディングス6098確認できず
押し上げ上位KDDI9433確認できず

銘柄別の寄与度は確認できませんでしたが、合計値は判明しています。押し下げ上位5銘柄(上記3銘柄にイビデン、TDKを加えたもの)の効果が約1209円、押し上げ上位5銘柄(上記3銘柄にトヨタ自動車、ファーストリテイリングを加えたもの)の効果が約255円です。

ここが、この日を読み解く決定的な数字です。マイナス寄与上位5銘柄の押し下げ効果1209円は、この日の下落幅930円を上回っています。つまり、この5銘柄がなければ日経平均はプラスで引けていた計算になります。TOPIXがプラスで終えたこととも完全に整合します。

今週の3営業日を並べると、この構図はさらに鮮明になります。27日は寄与度上位10銘柄が差し引きマイナスでも指数が320円高。28日は上位2銘柄で下げ幅の56%。そして29日は上位5銘柄の押し下げが下落幅そのものを超えました。28日の全面安だけが例外で、27日と29日は「一部の値がさ株が指数を歪めている」という同じ現象の裏表です。この現象についてはリターンリバーサルの解説も参考になります。

東証プライム騰落状況

東証プライム市場の値上がり銘柄数は1044と全体の約67%を占め、値下がりは491でした。前日の480対1047から再び反転しています。変わらず銘柄数は確認できていません。東証33業種のうち上昇は25業種、下落は8業種。市場の3分の2が上昇し、業種の4分の3以上がプラスという状況で、指数だけが930円下げたことになります。

売買代金は13兆1999億円と、前日の9兆1959億円から4兆円も増加しました。今週で突出した水準です。この増加分の多くは半導体関連の投げ売りと買い戻しによるもので、後場中盤からの下げ渋りには空売りの買い戻しが寄与したとみられます。相場が総崩れになったのではなく、半導体という一点に売買が集中し、そこから出た資金が他のセクターへ流れたと整理するのが実態に近いはずです。

業種別・テーマ別の動き

上昇セクター

上昇率の上位5業種は輸送用機器、ゴム製品、サービス業、陸運業、空運業でした。ゴム製品、陸運、空運は原油安によるコスト改善期待が背景で、3営業日連続の上昇業種入りです。原油は3営業日で89.40ドルから79.26ドルへ約11%下落しています。

輸送用機器が上昇率トップに立った点も注目です。円高が進み、ホンダの熊本工場停止という悪材料もあったなかで、トヨタ自動車が上値を追いプラス寄与4位に入りました。

下落セクター

下落したのは非鉄金属、ガラス・土石、電気機器、金属製品、建設業など8業種のみ。電気機器は半導体関連の比重が大きく売りを正面から受けました。非鉄金属は3営業日連続の下落業種です。

ゲーム・エンタメへの資金退避

プライムの値上がり率上位には、円谷フィールズホールディングスが連日のストップ高で1位、カプコンがストップ高で2位、以下コナミグループ、コメリ、シマノ、キーエンス、スクウェア・エニックスHD、コーテクHDと並びました。任天堂やソニーグループ、東映も買われています。半導体から最も遠いセクターへ資金が退避した構図が、値上がり率ランキングにそのまま表れました。

値下がり率上位はすべて半導体・電子部品

値下がり率上位10傑はコクサイエレクトリック、SCREENホールディングス、キオクシアHD、日本マイクロニクス、村田製作所、太陽誘電、メイコー、芝浦メカトロニクス、ユニオンツール、東京エレクトロンと、すべて半導体・電子部品関連で占められました。この日の売りが特定分野に限定されていたことを裏づける並びです。

為替・米国株・金利の影響

項目水準時点
ドル円163.48円2026-07-29 15時
NYダウ52,747.32ドル(+537.24)2026-07-28
S&P5007,428.78(+15.60)2026-07-28
ナスダック総合24,876.91(-55.17)2026-07-28
米10年債利回り4.607%(-0.038)2026-07-28
WTI原油先物79.26ドル(-3.35)2026-07-28

前日の米国市場では、ダウ平均が537ドル高と3日続伸し、構成銘柄の約9割が上昇する全面高となりました。一方でナスダック総合は5日続落し、4月下旬以来の安値。メモリー・ストレージ関連の下げが目立ちました。ダウとナスダックの明暗が、そのまま東京市場の日経平均とTOPIXのねじれに翻訳された格好です。

ドル円は15時時点で163.48円と、12時時点の163.72円から24銭ほど円高に振れました。後場に日経平均が下げ幅を拡大するなか、一時163.28円まで下値を広げています。前日は株安でも円買いの反応が鈍かったのに対し、この日はリスクオフの円買いが素直に機能しました。

米長期金利は原油安を背景に3営業日連続で低下しました。なお東京市場の終了後、トランプ米大統領がイランへの攻撃を警告したことでNY原油先物は84ドル台まで反発しています。今週続いた原油安を前提とした物色が、明日以降は巻き戻る可能性がある点は意識しておきたいところです。

個別決算・材料株

銘柄コード材料内容株価反応
カプコン9697第1四半期の営業利益が67%増ストップ高
キーエンス6861第1四半期の営業利益が45%増急騰
コマツ6301今期最終益予想を引き上げ一時702円高
シマノ7309通期最終益予想を引き上げ値上がり率5位
コメリ8218第1四半期営業利益8.8%増と自社株買い値上がり率4位
キオクシアHD285A半導体メモリー市況への懸念38,380円(6,170円安)
東京エレクトロン8035熊本の2事業所が稼働停止50,000円(5,920円安)

決算が評価された銘柄は素直に買われました。一方で東京エレクトロンは5万円ちょうど、キオクシアHDは4万円割れと節目を次々に下抜けています。ストップ高8銘柄に対しストップ安3銘柄と、上昇側が上回っている点もこの日の実態を示しています。

テクニカル面

ローソク足は4本連続の陰線となり、高値・安値・終値を連続して切り下げる「黒三兵」を形成しました。一目均衡表は三役逆転で、基準線と転換線がいずれも下向き。下降トレンドの継続を示唆する形が揃っています。

一方で、25日移動平均線からの下方乖離率は8.98%と、前日の8.05%からさらに拡大しました。短期的な売られすぎは相当な水準に達しており、リバウンドの余地も同時に大きくなっています。

下値では26週移動平均線6万1011円90銭が意識されます。ザラ場では割り込む場面がありましたが終値では上回っており、当面の下値抵抗として機能したと読めます。明確に下抜けた場合、次のメドは5月20日の直近ボトム5万9292円25銭です。

今後の見通し

期間想定レンジ主な前提条件
翌営業日59,500円〜63,000円FOMCの結果とウォーシュ議長の会見内容が最大の変数。26週線6万1011円を維持できるか、割れた場合は直近ボトム5万9292円が次のメド
1ヶ月後56,000円〜67,000円日銀会合の結果、米ビッグテック決算でAI投資への懸念が和らぐか、熊本の半導体工場の再稼働時期、中東情勢の再燃度合い
1年後54,000円〜77,000円AI・半導体投資サイクルの持続性、メモリー市況の需給、米金融政策の方向性、為替水準の落ち着きどころ

いずれも一定の前提を置いた想定レンジであり、実際の値動きを保証するものではありません。前提が崩れればレンジの外に振れる可能性もあります。

今日の結論

日経平均は930円下げ、TOPIXは上げました。この日の相場を一言で表すなら、それだけで足ります。

マイナス寄与上位5銘柄の押し下げ効果1209円が下落幅930円を上回るという事実は、日経平均という指数がいまどれほど一部の半導体株に依存しているかを端的に示しています。市場の3分の2が上昇し、33業種のうち25業種がプラスだった日に、指数だけが1.49%下げたのです。

今夜はFOMCの結果とウォーシュ議長の会見、明日からは日銀会合、31日にはキオクシアHDの決算が控えています。売買代金13兆円という商いの膨らみは、市場が大きくポジションを入れ替えていることの表れでもあります。指数の数字だけを追っていると、この入れ替えは見えません。通常版の記事はこちらからご覧ください。

3
短く確認する(約3分)
【2026年7月29日】今日の日本株ノート|日経平均は930円安でもTOPIXはプラス、市場の3分の2が上昇するなか半導体だけが崩れる
PR

ネット証券で口座を開くなら

毎日の相場チェックや実際の売買には、使いやすいネット証券口座があると便利です。日本株の取引に定評のある2社を紹介します。

ネット証券
松井証券
老舗として知られるネット証券
  • 日本株・投資信託・米国株など幅広く対応
  • 少額から積み立てられる
  • サポート体制に定評
松井証券の詳細を見る
ネット証券
DMM株
日本株も米国株もアプリひとつで
  • 取引に応じてポイントが貯まる
  • 米国株の取扱いにも対応
  • NISA口座にも対応
DMM株の詳細を見る
2社のくわしい比較と選び方を読む →

※このセクションはアフィリエイト広告(PR)を含みます。手数料やサービスの最新情報は各社の公式サイトでご確認ください。

← 前の記事 【2026年7月28日】今日の日本株 深掘りノート|韓国発AI株安の第2波でキオクシアがストップ安、日経平均は2566円安と約2カ月ぶり安値へ 次の記事 → 【2026年7月30日】今日の日本株 深掘りノート|アドテスト1銘柄で660円押し上げ、日経平均プラス・TOPIXマイナスと前日の完全な裏返しに