30日の東京株式市場で、日経平均株価は前日比433円24銭高の6万1867円43銭と3日ぶりに反発しました。前場中盤には一時1490円高まで上げ幅を広げましたが、後場にかけてその3分の2を吐き出しています。

そして同じ日、TOPIXは21.53ポイント安の3952.50と反落しました。前日29日は日経平均がマイナス、TOPIXがプラス。この日はその符号がそっくり入れ替わったことになります。2営業日続けて主要2指数が逆方向に動くという、めったにない展開です。

本記事では、なぜ29日と30日が完全な鏡像になったのかを掘り下げます。通常版の記事はこちらからご覧いただけます。

相場サマリー

指数終値前日比騰落率
日経平均株価61,867.43円+433.24円+0.71%
TOPIX3,952.50-21.53-0.54%
JPXプライム150指数1,665.37-0.21-0.01%
項目数値
始値61,258.34円(175円85銭安)
高値/安値62,924.84円/61,049.70円
売買代金(プライム概算)12兆6,645億円
売買高(プライム概算)30億462万株
値上がり/値下がり/変わらず534/993/28
東証グロース市場250指数確認できず

朝方は前日の米株大幅安を受けて175円安で始まりましたが、すぐに切り返して前場中盤には6万2900円台まで上昇しました。しかし後場は明確な方向感を欠いたまま推移し、上げ幅は433円まで縮小しています。戻り売り圧力の強さが数字にはっきり出た一日でした。

日経平均を動かした主な要因

アドバンテストの上方修正

最大の材料は、前日29日にアドバンテストが発表した業績の上方修正です。この日のアドテストは10.8%高で引け、1銘柄で日経平均を約660円押し上げました。同社の急伸をきっかけにAI・半導体株全体へ見直し買いが波及し、東京エレクトロン、キオクシアHD、TDK、イビデン、村田製作所などが軒並み買い戻されています。東京エレクトロンも上期経常を6%上方修正し最高益予想を上乗せ、上期配当を23円増額すると発表しました。

サムスン電子の好決算と自律反発

30日朝に決算を発表した韓国のサムスン電子が大幅高となり、韓国総合株価指数(KOSPI)は一時5%高まで上昇しました。半導体株比率の高いKOSPIとの連動性が強まっているなか、リスク許容度が回復した海外投機筋による日経平均先物への買いも加速しています。日経平均は前日までの2営業日で3500円近く下落しており、短期目線の自律反発狙いの買いも入りやすい地合いでした。

米株大幅安とFOMC後の長期金利急伸

一方で上値は重いままでした。前日の米国市場ではNYダウが1153ドル安と4日ぶりに大幅反落しています。FOMCは市場予想通り政策金利の据え置きを決めましたが、票決は9対3で、3人の委員が0.25%の利上げを主張して反対票を投じました。ウォーシュFRB議長の会見を受けて利上げの遅れによるインフレ加速が警戒され、米30年債利回りは一時5.22%と2007年以来19年ぶりの高水準まで上昇しています。政策金利が据え置かれたのに長期金利が跳ね上がるという展開が、日本株の戻りにも重しとなりました。

寄与度分析

区分銘柄コード寄与度(前引け時点)
押し上げ上位アドバンテスト6857+698.73円
押し上げ上位東京エレクトロン8035+267.51円
押し上げ上位キオクシアホールディングス285A+84.71円
押し下げ上位ファーストリテイリング9983-126.31円
押し下げ上位ソフトバンクグループ9984-65.17円
押し下げ上位コナミグループ9766-40.56円

寄与度の数値は前引け時点のものです。押し上げ側はこの3銘柄に続いてTDKが75.42円、イビデンが61.01円。押し下げ側はKDDIが35.00円、リクルートHDが30.67円と続きました。

そして大引けベースでは、アドバンテスト1銘柄の押し上げ効果約660円が、この日の上昇幅433円を上回っています。つまりアドテストがなければ日経平均はマイナスで引けていた計算です。TOPIXが反落したこととも整合します。

前日29日は、押し下げ上位5銘柄の効果1209円が下落幅930円を上回りました。この日は押し上げ1銘柄が上昇幅を上回った。指数の符号は逆でも、起きていることは同じ「値がさ半導体株による指数の歪み」です。29日は半導体だけが下げ、30日は半導体だけが上げた。それだけの違いしかありません。

東証プライム騰落状況

東証プライム市場の値上がり銘柄数は534と全体の3割強にとどまり、値下がりは993、変わらずは28でした。前日29日の値上がり1044対値下がり491から、こちらも完全に反転しています。

業種別では、前引け時点で33業種中9業種が上昇。上昇率1位は電気機器で、以下、非鉄金属、ガラス・土石、精密機器が続きました。値下がり上位には証券・商品先物、空運、銀行が並んでいます。前日は25業種が上昇していましたから、こちらも大きく様変わりしました。

売買代金は12兆6645億円と、前日の13兆1999億円に続いて高水準です。2営業日連続で12兆円を超える商いが続いており、市場が大きくポジションを入れ替えていることがうかがえます。

業種別・テーマ別の動き

3日続いた「原油安トレード」の逆回転

この日の最も重要な変化は、空運が下落業種上位に転落したことです。27日から29日までの3営業日、空運と陸運は原油安によるコスト改善期待から連日で上昇業種の上位に並んでいました。ところが前日29日の米市場でWTI原油先物が5.20ドル高の84.46ドルと約6.5%急騰し、東京時間には85ドル台まで上昇。今週続いた「原油安だから内需・運輸を買う」という構図が、この日でついに巻き戻りました。

原油は7月24日の89.40ドルから3営業日で79.26ドルまで約11%下落し、そこから1日で6.5%戻すという激しい往復を演じています。中東情勢の再燃が背景で、トランプ米大統領がイランへの強力な対応を予告したことが直接のきっかけです。

今週買われた銘柄の一斉反落

前日29日にプラス寄与の上位を占めたコナミグループ、リクルートHD、KDDI、ファーストリテイリングは、この日そろって押し下げ上位に回りました。オリエンタルランドやカプコンも下落しています。今週3営業日にわたって内需・ディフェンシブへ流れ込んだ資金が、半導体の反発を受けて一気に引き揚げられた形です。

金融株の下落

証券・商品先物が下落率上位に立ち、三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそなHD、東京海上HDがそろって下落しました。米長期金利が急伸した局面で金融株が売られた点は、通常とは逆の反応です。

半導体も一枚岩ではない

電気機器が上昇率1位となる一方、ソシオネクストとSUMCOは下落しました。買い戻しは指数寄与度の大きい値がさ株に集中しており、半導体セクター全体が一様に買われたわけではない点は押さえておきたいところです。

為替・米国株・金利の影響

項目水準時点
ドル円163.53円2026-07-30 15時
NYダウ51,594.14ドル(-1,153.18)2026-07-29
S&P5007,316.15(-112.63)2026-07-29
ナスダック総合24,442.94(-433.97)2026-07-29
米10年債利回り4.680%(+0.073)2026-07-29
WTI原油先物84.46ドル(+5.20)2026-07-29
VIX指数20.66(+2.45)2026-07-29

前日の米国市場は主要3指数がそろって大幅安となりました。ダウの下落率2.19%がナスダックの1.74%を上回っている点が重要です。今週の東京市場は半導体だけが売られる相場でしたが、米国では売られる対象が半導体から市場全体へ広がっていました。VIX指数も20台を回復しています。

ドル円は15時時点で163.53円と、12時時点の163.49円から4銭ほどドル高に振れました。時間外の米10年債利回りが4.70%台まで上昇したことやWTI原油先物が85ドル台まで上昇したことを受け、163.56円まで上値を伸ばす場面もありました。前日29日はリスクオフの円買いが機能しましたが、この日は原油高と米金利上昇によるドル買いが優勢でした。

もっとも、今週のドル円は27日から30日まで163円50銭から163円80銭の狭いレンジに収まっています。日経平均が週内で3000円以上動いたことを考えると、為替は驚くほど動いていません。この週の値動きが為替要因ではなく、ほぼ完全に半導体セクターの需給で説明できることを示しています。

個別決算・材料株

銘柄コード材料内容株価反応
アドバンテスト6857業績を上方修正(29日発表)+10.8%
東京エレクトロン8035上期経常6%上方修正、最高益予想上乗せ、上期配当23円増額上昇
トーメンデバイス2737今期経常を2.8倍に上方修正、最高益予想上乗せ、増配上昇
SCREENホールディングス7735今期経常4%上方修正、最高益予想上乗せ、配当8円増額上昇
キオクシアHD285A前日の4万円割れからの反発前引け41,990円

この日の決算発表は東京エレクトロン、みずほFG、東京電力HDなど135社。引け後には武田薬品工業が続きました。明日31日はキオクシアHDと村田製作所を含む281社が発表する今週最大のラッシュです。ストップ高7銘柄、ストップ安2銘柄でした。

テクニカル面

この日の移動平均線やオシレーターの数値は確認できていませんが、価格そのものから読み取れることがあります。

まず下値です。29日の安値は6万448円90銭で、当時の26週移動平均線6万1011円90銭を一時割り込みながら終値では回復しました。そして30日の安値は6万1049円70銭と、ほぼ同じ水準で下げ止まりました。2営業日連続で6万1000円ちょうど近辺が支持帯として機能したことになります。

次に上値です。この日の高値6万2924円84銭は、29日時点の日足の雲下限6万2994円34銭にわずかに届きませんでした。戻りが雲の下で止められた格好で、6万3000円手前が上値の関門として残っています。

当面は6万1000円から6万3000円のレンジ内での攻防が続きやすい形と整理できます。なお下値のメドとしては、5月20日の直近ボトム5万9292円25銭も引き続き意識されます。

今後の見通し

期間想定レンジ主な前提条件
翌営業日60,500円〜63,500円日銀金融政策決定会合の結果と植田総裁会見、キオクシアHDと村田製作所を含む281社の決算。6万1000円近辺の支持帯を維持できるかが焦点
1ヶ月後56,000円〜67,000円中東情勢と原油価格の行方、米長期金利の水準、AI投資の採算をめぐる市場の評価、日銀の政策スタンス
1年後54,000円〜77,000円AI・半導体投資サイクルの持続性、メモリー市況の需給、米金融政策の方向性、為替水準の落ち着きどころ

いずれも一定の前提を置いた想定レンジであり、実際の値動きを保証するものではありません。前提が崩れればレンジの外に振れる可能性もあります。

今日の結論

29日と30日は、完全な鏡像でした。

29日は押し下げ上位5銘柄の1209円が下落幅930円を上回り、日経平均だけがマイナスでTOPIXはプラス。30日はアドバンテスト1銘柄の660円が上昇幅433円を上回り、日経平均だけがプラスでTOPIXはマイナス。符号は逆ですが、どちらも「値がさ半導体株が指数を歪めた」という同じ現象です。

今週は4営業日すべてで、指数の動きと市場の中身がねじれ続けました。日経平均の数字だけを追っていた人と、騰落銘柄数を見ていた人とでは、まったく違う週に見えたはずです。明日は日銀会合の結果とキオクシアHDの決算が同じ日に重なります。通常版の記事はこちらからご覧いただけます。

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