31日の東京株式市場で、日経平均株価は前日比2494円59銭高の6万4362円02銭と大幅に続伸しました。前場には3500円近く上昇して6万5000円台に乗せる場面もあり、上昇率は4.03%に達しています。

ところが東証プライム市場の値下がり銘柄数は922と、値上がりの612を大きく上回りました。日経平均採用銘柄に限っても、値上がり96に対し値下がりは129。日経平均が4%上がった日に、採用銘柄の6割近くが下落していたことになります。

本記事では、この日の異常な集中と、5営業日連続でねじれ続けた今週の構図を掘り下げます。通常版の記事はこちらからご覧いただけます。

相場サマリー

指数終値前日比騰落率
日経平均株価64,362.02円+2,494.59円+4.03%
TOPIX4,003.30+50.80+1.29%
JPXプライム150指数1,681.65+16.28+0.98%
項目数値
始値61,957.10円(89円67銭高)
高値/安値6万5000円台/確認できず
売買代金(プライム概算)10兆1,069億円
売買高(プライム概算)32億1,466万株
値上がり/値下がり/変わらず612/922/24
東証グロース市場250指数確認できず

寄り付きは89円高と穏やかな始まりでしたが、時間の経過とともに急速に上げ幅を拡大し、前場中盤に6万5000円台を回復。前引けは2704円高でした。後場は日銀の金融政策決定会合の結果を経て利益確定売りが出て、上げ幅を1000円ほど縮小して引けています。TOPIXは月間ベースで4カ月連続の上昇となりました。

日経平均を動かした主な要因

マイクロソフトの好決算とAI懸念の後退

最大の材料は、前日の米国市場でのマイクロソフトの急伸です。同社は一時17%上昇しました。AI向け需要が強く4〜6月期決算で売上高などが市場予想を上回ったことに加え、27年6月期通期のフリーキャッシュフローが黒字を維持するとの見通しを示したことで、AI投資の回収を巡る過度な懸念が後退しました。今週ずっと市場を圧迫してきた「AI過剰投資への警戒」に、初めて明確な反証が出た格好です。

SOX指数の6営業日ぶり急反発

フィラデルフィア半導体株指数は6営業日ぶりに上昇し、8.2%高で終了しました。半導体製造装置大手のラムリサーチが29日発表の決算と見通しを好感されて26%あまり上昇する場面があり、アプライドマテリアルズやマイクロン・テクノロジーにも買いが入っています。ナスダック総合は2.78%高、ダウ平均は613ドル高でした。

日銀は政策金利を1.0%に据え置き

日銀は金融政策決定会合で、市場の予想通り政策金利を1.0%に据え置きました。利上げを主張したのは高田委員1名です。結果発表は取引時間中、植田総裁の記者会見は15時30分からという時間差があり、後場は会見の内容を見極めたいとするムードが広がって上値が重くなりました。市場では次回の利上げ時期について、物価の状況次第で早ければ10月といった声も出ています。

寄与度分析

区分銘柄コード前日比寄与度
押し上げアドバンテスト6857+4,565円+1,101.80円
押し上げソフトバンクグループ9984+638円+513.29円
押し上げ東京エレクトロン8035+3,260円+327.85円
押し上げイビデン4062+3,000円+201.13円
押し上げキオクシアホールディングス285A+7,000円+164.26円
押し下げKDDI9433-130円-52.29円
押し下げコナミグループ9766-1,200円-40.23円
押し下げリクルートホールディングス6098-365円-36.71円

値上がり96銘柄の寄与度合計が3226.54円、値下がり129銘柄の合計が731.95円。差し引きが2494.59円という内訳です。

この日の集中度は、今週で最も極端でした。アドバンテスト1銘柄で上昇幅2494円の44%、上位2銘柄で65%、上位5銘柄で実に93%を説明できます。アドテストとソフトバンクグループはともにストップ高。上位5銘柄はすべて半導体・AI関連です。

押し下げ側を見ると、KDDI、コナミグループ、リクルートHD、ファーストリテイリングと、今週前半に買われた内需・ディフェンシブが並びました。さらに第一三共、デンソー、野村総合研究所は取引時間中の決算発表を受けて急落しています。

東証プライム騰落状況

東証プライム市場の値上がり銘柄数は612と全体の約4割にとどまり、値下がりは922、変わらずは24でした。日経平均が4%高で終えた日に、市場の6割近くが下落していたことになります。

業種別では非鉄金属、電気機器、ガラス・土石製品などが上昇した一方、医薬品、不動産業、陸運業などが下落しました。特に医薬品は下落率の上位で、押し下げ寄与の上位20銘柄のうち第一三共、中外製薬、塩野義製薬、テルモ、アステラス製薬の5銘柄を占めています。今週前半に買われ続けたディフェンシブが、最終日に一斉に手仕舞われた形です。

売買代金は10兆1069億円と前日から2兆5000億円ほど減少しました。それでも10兆円台を維持しており、今週は5営業日すべてで9兆円を超える商いが続きました。

業種別・テーマ別の動き

半導体・AI関連の全面高

アドバンテストとソフトバンクグループがストップ高、キオクシアHDが7000円高、東京エレクトロンが3260円高、イビデンが3000円高。ディスコ、レーザーテック、太陽誘電、村田製作所、フジクラ、ローム、SCREENホールディングス、京セラ、TDKも軒並み大幅高となりました。前日の米SOX指数8.2%高を、東京市場がそのまま増幅した格好です。

非半導体からの一斉流出

その裏側で、今週買われてきた銘柄が売られました。KDDI、コナミグループ、リクルートHD、任天堂、バンダイナムコHD、ファーストリテイリングはいずれも下落。医薬品も総崩れでした。買いの資金が新たに市場へ入ったというより、非半導体から半導体へ資金が移し替えられた性格が濃い一日です。

自動車株は円高が重荷

トヨタやホンダといった自動車株には売りが出ました。前日夜からの急激な円高が直撃した形です。デンソーは取引時間中の決算発表を受けて急落しました。

為替・米国株・金利の影響

項目水準時点
ドル円160.60円2026-07-31 15時
ドル円の東京レンジ159.38円 - 160.88円2026-07-31
NYダウ52,208.06ドル(+613.92)2026-07-30
ナスダック総合25,122.18(+679.24)2026-07-30
SOX指数8.2%高(6営業日ぶり反発)2026-07-30
VIX指数17.09(-17.28%)2026-07-30
WTI原油先物83ドル台(反落)2026-07-30

この日、株式以上に大きく動いたのは為替でした。30日のニューヨーク市場で円が急上昇し、ドル円は163円台から一気に158円割れまで下落。安値は157円98銭で、200日移動平均線まで一時到達しました。市場では日本の通貨当局による円買い介入の観測が広がっています。円先物の取引量が急増しており、これは介入時によく見られる動きだとの指摘も出ました。ただし実際に介入が行われたかどうかは確認されていません。

東京市場では買い戻しが進み、15時時点のドル円は160.60円。日銀の据え置き決定を受けて160.88円まで上値を伸ばした後、植田総裁の会見を控えて160円台半ばで推移しました。会見が始まると一時160円を割り込んでいます。

今週のドル円は27日から30日まで163円台で膠着していました。それが30日夜からの一晩で6円動いたことになります。週前半は「株が3000円動いても為替は動かない」相場でしたが、週末は逆に「為替のほうが大きく動いた」相場に変わりました。今週の性格を語るうえで、この転換は外せません。

個別決算・材料株

銘柄コード材料内容株価反応
東京エレクトロン80354〜9月期は純利益44%増の見通しに上振れ、下期はさらに出荷増+3,260円
キオクシアHD285A決算発表を控えストップ高水準の買い気配+7,000円
パナソニックHD6752値上がり率上位+700円
第一三共4568取引時間中の決算発表-321.5円
デンソー6902取引時間中の決算発表-230円
野村総合研究所4307大幅安-890円

この日は281社が決算を発表しました。今週最大のラッシュです。トーメンデバイスが23.32%高、リケンテクノスが22.03%高、イビデンが21.98%高と、値上がり率の上位も決算絡みが目立ちました。来週3日には三菱UFJフィナンシャル・グループなど83社が発表を予定しています。

テクニカル面

この日の移動平均線の数値は確認できていませんが、価格の推移そのものに読みどころがあります。

29日につけた安値6万448円90銭から、この日の高値6万5000円台まで、わずか2営業日で4500円を超える戻りを演じました。29日と30日に2営業日連続で下値を支えた6万1000円近辺の支持帯が、有効に機能したことになります。

ただし、週の始まりである27日の終値6万4931円19銭にはまだ届いていません。前週末24日の終値6万4611円15銭も回復していません。大きく下げて大きく戻したものの、週で見れば元の位置に帰ってきただけというのが、この日の終値の意味です。V字回復ではなく行って来い、と整理するのが正確でしょう。

今後の見通し

期間想定レンジ主な前提条件
翌営業日62,500円〜66,500円植田総裁会見の内容の消化、決算発表の後半戦、為替介入観測の余波。半導体の勢いが継続するか、利益確定売りに押されるか
1ヶ月後58,000円〜70,000円AI投資の採算をめぐる市場の評価、日銀の次回利上げ時期の織り込み、中東情勢と原油価格、為替の水準
1年後55,000円〜78,000円AI・半導体投資サイクルの持続性、メモリー市況の需給、日米の金融政策の方向性、為替水準の落ち着きどころ

いずれも一定の前提を置いた想定レンジであり、実際の値動きを保証するものではありません。前提が崩れればレンジの外に振れる可能性もあります。

今日の結論

今週は5営業日すべてで、指数の動きと市場の中身が一致しませんでした。

27日は市場の9割が上がったのに指数は0.50%高。28日は上位2銘柄で下げ幅の56%。29日は日経平均が下げてTOPIXが上がり、30日はその逆。そして31日は、上位5銘柄で上昇幅の93%を説明できてしまいました。日経平均という指数が、いまどれほど一部の値がさ半導体株に振り回されているか。今週はそれを5日連続、あらゆる角度から見せつけた週だったと言えます。

そして週間の成績は、前週末比249円13銭安、率にして0.39%の下落でした。週内では最大3497円下げ、そこから4500円戻したにもかかわらず、着地はほぼ変わらず。日経平均の数字だけを月曜と金曜で比べていた人には、この週は「何も起きなかった週」に見えるはずです。実際には、半導体が崩れて内需に資金が逃げ、介入観測で為替が一晩に6円動いた週でした。指数の数字は、市場で起きたことのごく一部しか語りません。通常版の記事はこちら、この現象についてはリターンリバーサルの解説もあわせてご覧ください。

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