8月3日の東京株式市場で日経平均株価は3営業日ぶりに反落し、終値は前週末比607円12銭安の6万3754円90銭となりました。日米両政府が3日朝、前週末7月31日に円買いの協調介入を実施したと発表したことで、外国為替市場では円が一時1ドル=155円台前半まで急騰。輸出関連株を中心に売りが広がり、日経平均の下げ幅は午前中に一時1600円を超えました。

ただし、終値ベースの下落率は0.94%にとどまっています。安値から1000円以上戻したこと、そして下落幅の大半がごく一部の銘柄に集中していたことが、この数字のギャップを生みました。今日はこの「見た目の下落率と実感のズレ」を軸に読み解いていきます。

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相場サマリー

指数終値前日比騰落率
日経平均株価63,754.90円-607.12円-0.94%
TOPIX3,960.03-43.27pt-1.08%
東証グロース市場250指数687.65+1.68pt+0.24%
東証REIT指数1,818.71-33.06pt-1.79%
項目数値
東証プライム 売買代金11兆7,886億円
東証プライム 出来高28億2,409万株
値上がり銘柄数464銘柄(約29.8%)
値下がり銘柄数1,060銘柄(約68.1%)
変わらず33銘柄

日経平均は始値6万3834円95銭(前週末比527円07銭安)で反落してスタートし、午前10時18分に安値6万2703円47銭(同1658円55銭安、-2.58%)を付けました。その後は下げ幅を縮小し、後場前半には6万3900円台まで戻す場面もありましたが、13時以降はこう着感の強い展開が続いています。

日経平均を動かした主な要因

1. 日米協調介入の公表による急速な円高

最大の要因はこれに尽きます。日米両政府は日本時間3日朝、7月31日に米財務省と協調して円買い介入を実施したと発表しました。片山財務相とベッセント米財務長官はいずれもさらなる協調介入に躊躇しない姿勢を示しており、市場は追加介入を強く意識する展開となりました。

特徴的なのは、米国側の取引でニューヨーク連銀が米財務省に代わってユーロを売り円を買ったと報じられている点です。ドル円だけを対象にした介入ではなかったため、円相場全体の下落を抑える意思が示されたと市場では受け止められました。

2. 決算シーズンとの重なりによる下方修正警戒

国内では3月期企業の4〜6月期決算発表が本格化しています。市場では「通期の想定為替レートを期初より円安方向に見直した企業も多く、協調介入による円高効果が続けば業績の下方修正につながる」との警戒の声が聞かれました。円高そのものよりも、円高が業績予想の前提を崩すタイミングだったことが売りを増幅させています。

3. ファナックの決算失望と前週末の急伸の反動

ファナックは2027年3月期の営業利益見通しを引き上げたものの市場予想に届かず、一時19%安と1986年9月以来約40年ぶりの日中下落率を記録しました。加えて、前週末7月31日に日経平均が2400円を超える急伸となった反動から、利益確定売りも先行しています。

寄与度分析

押し上げ・押し下げの上位銘柄は以下の通りです。

押し上げ上位終値騰落率寄与度
ファーストリテイリング79,600円+1.80%+113.44円
ソフトバンクグループ5,393円+2.53%+107.00円
キオクシアHD49,160円+5.72%+62.42円
押し下げ上位終値騰落率寄与度
アドバンテスト31,430円-3.29%-258.25円
ファナック6,114円-14.31%-171.13円
イビデン15,535円-6.70%-74.75円

ここが今日の相場の核心です。アドバンテストとファナックの2銘柄だけで日経平均を約429円押し下げており、これは下落幅607円12銭のおよそ7割にあたります。逆にファーストリテイリングとソフトバンクグループの2銘柄は合計で約220円を押し上げました。

日経225構成銘柄の内訳を見ると、値上がり52銘柄・値下がり169銘柄・変わらず4銘柄。プラス寄与の合計が+490.65円、マイナス寄与の合計が-1097.77円で、差し引きが-607.12円という構造です。前引け時点では値上がりわずか23銘柄・値下がり202銘柄でしたから、後場にかけて明確に戻していたことがわかります。

東証プライム騰落状況

東証プライム市場では値上がり464銘柄に対し値下がり1060銘柄と、全体の約7割が下落しました。東証33業種のうち28業種が下落、上昇はわずか5業種です。午前中の一時期には全33業種が下落する全面安の場面もありました。

つまり、下落そのものは市場全体に広く及んでいたことになります。にもかかわらず日経平均の下落率が0.94%にとどまったのは、値がさ株のファーストリテイリングとソフトバンクグループが上昇し、指数を下支えしたためです。

興味深いのは、TOPIXが-1.08%と日経平均より大きく下げている点です。日経平均とTOPIXの乖離は「値がさ株が指数を歪める」文脈で語られることが多いのですが、今日はその歪みが下支え方向に働きました。NT倍率は16.10倍と前日の16.08倍からわずかに上昇しています。

業種別・テーマ別の動き

下落したセクター

下落率トップは不動産業でした。三井不動産や三菱地所などが売られ、米長期金利の高止まりが重荷となっています。次いで輸送用機器で、トヨタ、ホンダ、スズキといった円高の影響が最も直接的に及ぶ銘柄が並びました。陸運業(JR東日本、JR東海)、石油・石炭製品(出光興産、ENEOS)、鉱業(INPEX、石油資源)、保険業、ゴム製品も軟調でした。

上昇したセクター

精密機器(HOYA、セイコーグループ)、空運業(JAL、ANA)、金属製品、情報・通信業、小売業の5業種が上昇しました。空運は原油高一服と円高メリットの両面が意識された格好です。

半導体・AI関連は明確な二極化

今日の半導体関連は「売られた側」と「買われた側」がきれいに分かれました。売られたのはアドバンテスト、東京エレクトロン、イビデン、京セラ、村田製作所、太陽誘電。一方でキオクシアHD(+5.72%)、レーザーテック(+7.91%)、ルネサス(+13.45%)、ディスコ(+3.49%)、TDK(+2.79%)は買われています。

「半導体売り」と一括りにできない日でした。指数寄与度の大きい前工程・検査装置系が売られ、メモリ・AI需要に直結する銘柄が買われた、という選別が働いた可能性があります。

為替・米国株・金利の影響

項目水準
ドル円(3日15時時点)156.39円
ドル円 午前の高値-安値157.88円 - 155.23円
7月31日終値158.225円
米10年債利回り(3日東京時間)4.68%台
日本10年債利回り2.82%(+0.025)
WTI原油先物79ドル台

ドル円は3日午前に155円23銭まで急伸し、5月上旬以来の円高水準を付けました。前週末終値の158円22銭台からは約3円の円高です。15時時点では156円39銭と、午前の下落幅の半値戻し水準をやや上回る位置で伸び悩みました。

前週末7月31日の米国市場は3指数そろって上昇しています。NYダウは276.97ドル高の5万2485.03ドル、ナスダック総合は251.68ポイント高の2万5373.85、S&P500は0.70%高の7489.72で終了。アマゾンの好決算が牽引しましたが、アップルは弱い見通しで急落しており、大型テック内部でも明暗が分かれました。

金利面では、7月31日に米10年債利回りが4.7%を超え2025年1月以来の高水準に、30年債利回りは5.25%と2007年以来の水準まで上昇しています。3日の東京時間には4.68%台に低下しており、この金利低下が後場の下げ渋りを一部支えた可能性があります。

個別決算・材料株

銘柄材料株価反応
マクセル1Qが大幅増収増益、営業利益44.8%増ストップ高(+24.15%)
トーメンデバイス決算好感+23.64%
カシオ計算機今期経常を260億円→340億円に31%上方修正+22.67%
日本電気硝子通期見通しを下方修正-17.45%(一時ストップ安)
ファナック営業利益見通し引き上げも市場予想未達-14.31%
TOTO決算失望-11.97%
アイシン1Q経常-16.52%-13.84%
デンソー1Q経常-19.68%-12.47%
三菱UFJFG4-6月期経常58%増益3日発表
日本航空4-6月期最終80%減益3日発表

年初来高値を更新したのは37銘柄、年初来安値を更新したのは20銘柄。ストップ高は9銘柄、ストップ安は3銘柄でした。全面安と言いながらも、好決算銘柄はきちんと買われています。

テクニカル面

水準
25日移動平均線66,656.34円(乖離率 -4.35%)
均衡表基準線(日足)66,205.62円
75日移動平均線64,942.09円(乖離率 -1.83%)
均衡表雲下限(日足)64,532.26円
均衡表転換線(日足)64,020.55円
3日終値63,754.90円
6日移動平均線63,119.11円
26週移動平均線61,489.94円

終値は75日線と雲下限をいずれも下回った位置にあります。上値では6万4020円(転換線)から6万4532円(雲下限)のゾーンを回復できるかが最初の関門で、その先に75日線6万4942円が控えます。下値では6日線6万3119円が近く、これを割り込むと26週線とボリンジャー-2σ(25日)が重なる6万1500円台までいったん節目が薄くなります。

25日線との乖離率は-4.35%。一般に-5%を超えると売られすぎとされる水準に近づきつつありますが、まだ到達はしていません。ストキャスティクスはST.Fast(9日)が40.31(前日28.83)、ST.Slow(9日)が27.43(同19.91)と底値圏から切り上がっており、短期的な下げ止まりの兆しは出ています。なお年初来高値は6月22日の7万2831円73銭、年初来安値は3月31日の5万558円91銭です。

見通し

期間想定レンジ主な前提条件
翌営業日63,000円〜64,600円ドル円が155〜158円で落ち着き、追加介入の観測が新たに出ないこと。米7月ISM製造業景況指数の結果と、三菱重工・イビデンなど約90社の決算内容
1ヶ月後60,000円〜67,500円円高を織り込んだ通期業績の修正がどの程度出るか。米7月雇用統計(8月7日)とCPI(8月12日)を通過した後の米金利水準。ソフトバンクグループ決算(8月6日)
1年後58,000円〜78,000円AI・半導体投資サイクルの持続性、日銀の追加利上げペース、中東情勢と原油価格の推移

レンジはあくまで前提条件が成り立った場合の目安です。介入という政策要因が絡む局面では、想定外の方向に大きく振れる可能性がある点にはご留意ください。

今日の結論

「全面安なのに下落率1%未満。値がさ株の歪みが、今日は下支えに回った日」

東証プライムの7割が下落し、33業種中28業種が安く、下げ幅は一時1600円を超えました。それでも終値の下落率は0.94%です。この乖離を作ったのは、アドバンテストとファナックの2銘柄で下落幅の7割を作りつつ、ファーストリテイリングとソフトバンクグループが220円分を取り返したという、極端に集中した寄与度構造でした。

日経平均とTOPIXの乖離は普段「日経平均が実態より大きく振れる」文脈で語られますが、今日はその逆でした。指数の数字だけを見て「思ったほど下げていない」と判断すると、市場の実感を取り違える可能性があります。明日以降は、円高を前提とした業績見通しの修正がどこまで出てくるかが焦点になりそうです。

通常版の記事はこちらからご覧いただけます。


編集者メモ(公開本文には含めない)

記事化に際して重視した点

  • 対比データペアを「33業種中28業種安・プライム7割下落」vs「日経平均-0.94%」に設定。さらに「安値-1,658円」vs「終値-607円」の二重構造で補強
  • 日経平均とTOPIXの乖離テーマを扱ったが、今回は「値がさ株が指数を押し上げる」通常パターンではなく「下支えに回った」逆パターンである点を明示
  • アドバンテスト+ファナックで下落幅の70.7%という集中度を記事の背骨に据えた

通常版から省略した詳細情報

  • 日銀7月30〜31日会合の詳細(政策金利1.0%据え置き、賛成8反対1、高田委員が1.25%を提案、成長率見通し上方修正)。通常版・深掘りとも本文には入れていないが、背景として重要
  • 7月30日夜の日本単独介入(163.65円付近から急落、50分で5円上昇)の経緯
  • 前場の下落率上位銘柄(JR東日本-6.5%、ツガミ-6.2%等)
  • 8月10日以降の日程(日銀「主な意見」、TSMC月次、8/11山の日休場、8/12米CPI、8/14オプションSQ)

事実確認が必要な点

  • 日経平均の当日高値が未取得。「後場前半に6万3900円台まで戻す場面」との記述のみで数値未確定。本文では幅を持たせた表現に留めた
  • 売買代金は媒体差あり(11兆7,886億円/11兆7,800億円概算)。前者を採用
  • ルネサスの騰落率+13.45%は寄与度データからの算出値。寄与度+15.52円と小さい割に騰落率が大きいため、原文確認を推奨
  • 各個別銘柄の騰落率は終値と前日比からの算出値
  • ドル円は15:00時点156.39円(ザイFX!)を採用。大引け頃は156.79円で40銭の差がある

通常版へのリンク設定状況

  • 冒頭リード・今日の結論の2箇所に 20260803-nikkei へのリンクを設置済み
  • ファイル名:20260803-deep.md

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3
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