7月24日の東京株式市場で、日経平均株価は前日比1,811円45銭(2.73%)安の64,611円15銭と急反落しました。終値ベースで6万5,000円を下回るのは17日以来、1週間ぶりです。

下落の背景には二つの力が同時に働きました。ひとつは中東情勢の緊迫による原油の急騰、もうひとつは米国発のAI過剰投資懸念です。どちらか一方であれば吸収できたかもしれませんが、両者が重なったことで値がさ半導体株に売りが集中しました。本記事ではこの一日を寄与度・業種・決算の各面から深掘りします。数値を絞ったダイジェスト版は通常版ノートからご覧いただけます。

相場サマリー

指標終値前日比騰落率
日経平均64,611.15-1,811.45-2.73%
TOPIX4,011.31-42.57-1.05%
JPXプライム1501,672.48-19.34-1.14%
グロース250確認できず確認できず反落

東証プライムの売買代金は概算8兆4,378億円、売買高は19億2,293万株でした。日経平均の下落率2.73%に対しTOPIXは1.05%と、下げ幅に明確な差が出ています。TOPIXは一時4,000の節目を割り込みましたが、終値では回復しました。

日中の値動き——朝から終始右肩下がり

寄り付きは838円35銭安の65,584円25銭。この時点ですでに大きな下落でしたが、そこからさらに崩れます。10時12分には下げ幅が一時1,900円を超えて6万5,000円を割り込み、前場中には2,000円超安まで拡大しました。前引けは1,853円85銭安の64,568円75銭です。

後場は1,985円98銭安の64,436円62銭で始まり、13時03分に安値64,201円03銭を記録。13時49分時点では下げ幅が一時2,200円を超えました。大引けにかけてやや戻したものの、1,811円安で取引を終えています。前日23日が朝方高値から失速した「上から下」の一日だったのに対し、本日は寄り付きから終始下向きという展開でした。

日経平均を動かした主な要因

米国株の大幅続落

前日23日の米国市場は大幅続落し、ダウ平均は506.93ドル安の51,711.65ドル、ナスダックは553.20ポイント安の25,137.70で取引を終了しました。ナスダックは2.1%安で2カ月半ぶりの安値です。前々日に決算を発表したアルファベットや電気自動車メーカーのテスラを受けてAI過剰投資懸念が再燃し、加えてトランプ米大統領の対イラン大規模攻撃警告を受けた原油高が警戒されました。雇用関連指標が堅調でFRBの年内利上げ確率が上昇したことも重荷となっています。

韓国発の半導体売り

韓国では、SKハイニックスなどを対象とした個別株レバレッジ型上場投資信託(ETF)について、投資家への取引規制の強化を前倒しで実施すると発表されました。これを受けてKOSPIが急落し、日本のキオクシアも連れ安しています。今週は韓国株の動向が東京市場に波及する場面が繰り返されましたが、本日はそれが逆方向に働きました。

原油高とインフレ再燃懸念

中東情勢の悪化を背景に原油先物相場が上昇し、インフレ再燃への警戒感が投資家心理を冷やしました。原油高が企業業績を圧迫するとの懸念が、幅広い銘柄の売りにつながっています。原油高が物価を押し上げるとの見方から日米で長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感を意識した売りも出やすい地合いでした。

需給・イベント要因

来週は国内でアドバンテストや東京エレクトロン、米国でマイクロソフトやアマゾン・ドット・コムの決算が予定されています。決算発表を控えて積極的な買いが入れづらいとの声があり、休日前の手じまい売りも出ました。

寄与度分析——上位3銘柄で約1,185円の押し下げ

以下は前引け時点の寄与度です(大引けの確定値は本稿執筆時点で未取得)。

順位銘柄株価前日比寄与度
押し下げ1位東京エレクトロン61,490円-4,460円-448.53円
押し下げ2位アドバンテスト29,130円-1,670円-403.07円
押し下げ3位ソフトバンクG5,504円-414円-333.08円
押し下げ4位キオクシアHD55,760円-6,120円-143.61円
押し下げ5位ディスコ59,680円-9,730円-65.23円
押し上げ1位中外製薬7,460円+248円+24.94円
押し上げ2位KDDI2,899円+29円+11.46円
押し上げ3位東京海上HD8,153円+195円+9.81円

押し下げ上位3銘柄だけで約1,185円。前引け時点で値下がり130銘柄の寄与度合計は約2,001円のマイナスだったのに対し、値上がり93銘柄の合計は約147円のプラスにとどまりました。押し上げ最大の中外製薬が24.94円ですから、ディフェンシブ株の買いでは到底埋め合わせられない規模です。

ここで注目したいのは前日23日との対比です。23日はアドバンテスト単独で約293円の押し上げでしたが、本日は約403円の押し下げ。同じ銘柄が一日で押し上げ役から押し下げ役へ完全に反転しました。今週を通じて、指数の動きは常に少数の値がさ半導体株に握られていたことになります。

東証プライムの騰落状況

東証プライムの値下がりは877銘柄で全体の6割近くを占め、値上がりは632、横ばいは49でした。前引け時点では61%の銘柄が値下がりし、36%が値上がりしています。

今週は22日が「日経平均マイナス・値上がり比率54%」、23日が「日経平均プラス・値上がり比率44%」と指数と中身が食い違う日が続きましたが、本日は久しぶりに両者が同じ方向を向きました。もっとも売買代金は8兆4,378億円と前日の8兆5,663億円からさらに小幅減少しており、パニック的な投げ売りというより、値がさ株に売りが集中する一方で全体の商いは膨らまなかったと見るのが自然です。

業種別・テーマ別の動き

東証33業種のうち、値上がりは11業種、値下がりは22業種でした。

上昇した業種

医薬品、鉱業、保険業などが上昇しました。医薬品は中外製薬、第一三共、武田薬品、塩野義製薬、エーザイと軒並み高く、明確なディフェンシブシフトが確認できます。鉱業は原油高の恩恵、保険業は金利上昇を追い風に今週3日連続で上昇上位に入りました。中東情勢の緊迫化で運賃上昇期待から郵船など海運株も買われています。

下落した業種

非鉄金属、電気機器、化学などが下落しました。電気機器は半導体関連の全面安を反映したもの。空運業は原油高によるコスト増懸念で売られています。非鉄金属は前日23日に上昇率3位だったため、こちらも完全な反転でした。

物色の方向

グロースからディフェンシブへ、という明確な資金移動が起きた一日です。今週前半は「グロースからバリューへ」でしたが、本日は景気敏感のバリュー株すら売られ、医薬品・通信・保安といったよりディフェンシブな領域に資金が退避しました。リスク許容度そのものが一段下がったことを示す動きといえます。

ディスコ決算——好決算でも売られた理由

本日の象徴的な銘柄がディスコです。前日23日の引け後に発表した2026年4〜6月期は、純利益が44%増の342億円、営業利益が490億円で前年同期比42.2%増。増配も発表しており、数字だけ見れば好決算でした。

売られた理由は7〜9月期の見通しにあります。連結純利益の計画は前年同期比23%増の395億円で、同期間として3年連続の過去最高を更新する計算ですが、QUICKコンセンサスが集計した市場予想平均473億円を大きく下回りました。営業利益計画も559億円で、コンセンサスの600億円強に届いていません。株価は一時前日比8,830円(12.72%)安の6万580円まで下落し、約2カ月ぶりの安値水準に沈みました。

同社の業績予想は従来から保守的な傾向があり、その延長線上との見方もあります。ただこの日は半導体株安の流れが逆風となり、ネガティブな反応が先行しました。「過去最高益でも期待に届かなければ売られる」という現在の相場の厳しさを示す一例です。

個別銘柄の動き

区分銘柄騰落率
上昇1位三井松島HD+14.75%
上昇2位プロレド・パートナーズ+13.53%
上昇3位KOA+11.55%
上昇4位愛媛銀行+11.40%
上昇5位OBC+8.88%

三井松島HDは前日23日も上昇率1位(+25.76%)で、2日連続の上昇率上位となりました。KOAとOBCは決算発表を材料とした動きとみられますが、詳細は確認できていません。

下落側では東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクG、キオクシアHD、ディスコに加え、イビデン、TDK、信越化学、ファナック、フジクラ、リクルートHD、太陽誘電、レーザーテック、村田製作所と半導体・電子部品が総崩れ。トヨタ自動車や住友電気工業といった輸出関連も売られました。

為替・米国株・金利の影響

指標直近値前日比
NYダウ(7/23終値)51,711.65-506.93
NASDAQ総合(7/23終値)25,137.70-553.20(-2.1%)
ドル円(東京15時ごろ)約163.80円安方向
WTI原油(7/23)93ドル台大幅高

ドル円は24日午後の東京市場で動意が薄く、163円80銭付近でのもみ合いが続きました。取引レンジは163円72銭〜163円93銭と狭く、日中は方向感に乏しい展開です。前日23日のNY時間には1986年11月以来となる163円99銭前後まで上昇し、約39年8カ月ぶりの円安水準を記録しました。

もっとも、164円台が視野に入ったことで日本の為替介入への警戒感が高まり、円売りは抑制されています。片山財務相は外国為替について、姿勢は変わっておらず必要があれば果断に行動する旨を発言しました。

原油はWTI先物が約1カ月半ぶりに1バレル=93ドル台まで上昇しました。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海上でサウジアラビアの石油タンカー2隻を攻撃したとの報道を受けたもので、トランプ大統領が対イラン大規模攻撃を警告すると一段と加速。ホルムズ海峡に加え、紅海側のバブ・エル・マンデブ海峡までもが封鎖される懸念が高まっています。米中央軍は日本時間24日朝、13日連続となるイランへの攻撃を始めたと投稿しました。

前日23日時点でWTIは87.10ドルでしたので、2営業日で87ドル台から93ドル台へ急騰したことになります。これが本日の日本株急落の最大の背景です。米10年債利回りも23日に2023年10月以来の高水準となりました。

テクニカル面

節目の6万5,000円を下回る水準では、個人投資家などによる押し目買いが入って下げ渋る場面もありました。チャート上の75日移動平均(6万4,300円台)が下値支持線として意識されています。本日の安値64,201円はこの水準をやや下回りましたが、終値では上に戻して引けました。

主要な移動平均線の水準は以下の通りです(23日終値を基準とした算出値)。

指標水準
25日移動平均68,658.40円
一目均衡表・基準線68,270.00円
一目均衡表・転換線66,070.00円
5日移動平均65,646.00円
75日移動平均64,441.33円
200日移動平均56,579.65円

終値64,611円は5日線・25日線をいずれも下回り、75日線のすぐ上に位置しています。前日まで意識されていた10日移動平均線(66,978円)からは大きく下方に離れました。当面は75日線を維持できるかが焦点となりそうです。

見通し(想定レンジ)

期間想定レンジ主な前提条件
翌営業日63,500円〜65,500円75日移動平均の維持、原油価格の動向、米国株の推移
1ヶ月後60,000円〜68,000円アドバンテスト・東エレク・米ハイテク決算、FOMC、中東情勢
1年後58,000円〜75,000円世界景気の方向、AI投資の持続性、原油価格と金利の水準

いずれも確定的な予想ではなく、前提条件が変われば上下どちらにも振れやすい点にご留意ください。

今日の結論

原油とAI、二つの懸念が同時に襲った一日でした。中東発の供給不安でWTIが2営業日で87ドル台から93ドル台へ急騰し、米国ではアルファベット・テスラの決算からAI過剰投資への疑念が再燃。値がさ半導体株に売りが集中し、上位3銘柄だけで約1,185円を押し下げました。

ディスコが「44%増益・増配」でも見通しの弱さで12%超下落したことは、現在の相場が業績の実績よりも先行きの期待に敏感になっていることを示しています。資金は医薬品など明確なディフェンシブへ退避し、リスク許容度は一段下がりました。来週はアドバンテストと東京エレクトロン、そして米マイクロソフト・アマゾンの決算が控えます。本日下げを主導した銘柄そのものの決算であり、方向を決める材料になりそうです。

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