2026年8月25日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比328円34銭(0.50%)高の6万5856円43銭と3営業日ぶりに反発しました。ただし数字の裏側はかなり荒れています。

寄り付きは332円安。朝方には安値6万4609円47銭まで沈み、前日比の下げ幅は918円に達しました。そこから終値まで1,247円切り返したことになります。日中の値幅は1,294円。それでいて東証プライムの売買代金は7兆99億円と、4月21日以来4カ月ぶりの低水準でした。

値幅は大きいのに商いは細い。この組み合わせが、この日の相場の性格をほぼ言い表しています。前日の8月24日の深掘りノートと並べて読むと、2日間の対比がより鮮明になります。通常版の記事はこちらからご覧いただけます。

相場サマリー

指数終値前日比騰落率
日経平均株価65,856.43円+328.34円+0.50%
TOPIX4,093.67pt+20.38pt+0.50%
JPXプライム1501,709.13pt+8.44pt+0.50%
項目数値
始値65,195.26円(▲332.83円)
高値65,904.24円
安値64,609.47円(前日比▲918.62円)
東証プライム 売買代金7兆99億円
東証プライム 売買高19億118万株
値上がり銘柄数846
値下がり銘柄数647
横ばい63

TOPIXは4日続伸となりました。日経平均が2日下げている間もTOPIXは上げ続けていたことになり、指数間の温度差はこの日ようやく解消した形です。

日経平均を動かした主な要因

1. 朝方の売りは前日の米半導体株安が起点

24日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が2.7%下落し、ナスダック総合も200ポイント安と反落しました。この流れを受けて東京市場も寄り付きから半導体関連に売りが先行し、一時900円を超える下げとなっています。

2. アジア株の切り返しが転換点

売り一巡後、ハイテク株比率の高い韓国KOSPIと台湾加権指数が午後に上昇へ転じたことが投資家心理を支えました。日本時間の時間外取引で米ナスダック100指数先物が堅調に推移したことも、海外短期筋による日経平均先物への買いを後押ししています。前引け間際にはプラス圏を回復しました。

3. 金利と原油の落ち着き

24日の米国市場で米10年債利回りが4.700%へ0.033ポイント低下し、WTI原油先物も85.01ドルと2.05ドル下落しました。25日の国内長期金利も小幅な上昇にとどまっています。前日24日には「原油高止まり、インフレ懸念、金利上昇、ハイテク売り」という連鎖が相場の重荷とされていましたが、その前提が1日で緩んだ格好です。

4. ただし買いの主体はショートの買い戻し

ここが重要な点です。東証が発表した空売り比率は25日が43.0%で、前日24日の45.8%から低下しました。市場関係者からも、押し目買いニーズが反映されたというより、ショート筋の手仕舞いに伴う買い戻しで浮揚力が働いた地合いという指摘が出ています。新規資金の流入による上昇ではない、という見方です。

寄与度分析

まず押し上げ側です。

銘柄終値前日比寄与度
ソフトバンクグループ5,087円+112円+90.11円
イビデン19,980円+1,185円+79.45円
フジクラ5,292円+276円+55.51円

続いて押し下げ側です。

銘柄終値前日比寄与度
ファーストリテイリング72,530円▲310円▲24.94円
アドバンテスト34,450円▲50円▲12.07円
ホンダ1,696円▲51円▲10.26円

日経平均構成225銘柄の内訳は、値上がり139銘柄の寄与度合計が+469.55円、値下がり82銘柄が▲141.21円、変わらずが4銘柄。押し上げ側が3.3倍の重みを持っています。

前日からの主役交代

この日の寄与度を8月24日と並べると、逆転が一目でわかります。

銘柄8月24日8月25日
ソフトバンクG▲225.27円(押し下げ2位)+90.11円(押し上げ1位)
フジクラ▲53.10円(押し下げ5位)+55.51円(押し上げ3位)
キオクシアHD▲79.55円(押し下げ3位)+7.74円
アドバンテスト▲337.90円(押し下げ1位)▲12.07円

前日に売られた銘柄がそのまま買い戻されており、空売り比率の低下と符合します。値動きの解釈と需給データが一致する、わかりやすい例です。ただしアドバンテストだけは2日連続で押し下げ上位に残りました。

東証プライムの騰落状況

東証プライムでは値上がり846、値下がり647、横ばい63。値上がり比率は約54%でした。東証33業種では22業種が上昇し、下落は11業種です。

前日24日も値上がり841、値下がり658と数の上では買い優勢でしたが、指数は488円安でした。25日は同じような騰落比率で指数が上昇しています。違いは寄与度の分布にあり、24日は値がさ2銘柄が集中的に売られたのに対し、25日は上昇が広く分散していました。

つまりこの2日間は、「銘柄数が同じでも指数の動きは正反対になりうる」ことを示す教材のような組み合わせになっています。

業種別・テーマ別の動き

非鉄金属が上昇率トップ、主役は電線

33業種の上昇率トップは非鉄金属で2.83%高。上位銘柄は古河電気工業、フジクラ、SWCCと電線が並びました。古河電工は375円高の4,000円で10.34%の上昇となり、AI需要の拡大やデータセンター向け製品への期待が背景とされています。住友電気工業も48円高でした。

金融3業種が上位を独占

保険業が1.85%高、証券・商品先物取引業が1.63%高、銀行業が1.30%高と、金融が上位を占めました。ただし国内長期金利の上昇は小幅にとどまっており、金利要因というより個別材料の影響が大きかったとみられます。東京海上ホールディングスと阿波銀行がこの日、株式分割を決定しています。

電気機器の内部では選別が進む

電気機器は0.48%高と小幅な上昇にとどまりましたが、中身は割れています。イビデンが1,185円高、日本CMKやメイコーも上昇した一方、ディスコは720円安、アドバンテストは50円安でした。

プリント基板・実装系が買われ、前工程の装置株が売られる構図です。前日24日も東京エレクトロンが上昇するなかでアドバンテストが急落しており、2日続けて「半導体」という括りでは説明できない選別が続いています。

輸送用機器が下落率トップ

トヨタが43円安、ホンダが51円安、デンソーとSUBARUも下落し、輸送用機器は33業種の下落率トップとなりました。この日はドル円が円安方向に振れており、通常であれば輸出関連には追い風となる場面です。為替と自動車株の連動が働かなかった点は留意しておきたいところです。

為替・米国株・金利の影響

ドル円は25日午後3時時点で1ドル=159円33銭前後。前日午後5時時点と比べて18銭のドル高・円安でした。午後5時時点では159円43銭から45銭とさらに円安方向へ振れています。前日の158円90銭からは約43銭の円安ですが、前述のとおり輸送用機器は下落率トップでした。

指数(8月24日終値)終値前日比
NYダウ53,417.16ドル+140.15ドル
S&P5007,652.86▲21.51
NASDAQ総合25,980.19▲200.27

24日の米国市場は高安まちまちでした。原油価格の下落と長期金利の低下が好感されてダウは続伸した一方、ナスダックはエヌビディア決算への警戒から終日軟調に推移しています。SOX指数は2.7%下落しました。

この「ダウ高・ナスダック安」という分裂が、25日の東京市場の朝方の売りと、その後の切り返しの両方を説明します。半導体には売り、それ以外には安心感という二層構造がそのまま持ち込まれた形です。

金利は米10年債利回りが4.700%と0.033ポイント低下。WTI原油先物は85.01ドルと2.05ドル下落しました。VIX指数は15.85と0.72ポイント上昇しています。

個別材料株

4-6月期決算が一巡した端境期にあり、この日の材料は株式分割の発表に集中しました。

銘柄材料株価反応
古河電気工業AI需要拡大とデータセンター向け製品への期待4,000円(+375円、+10.34%)
イビデン株式分割(1株→2株、10月1日効力発生)を発表19,980円(+1,185円)
東京海上HD株式分割を決定7,408円(+147円)
阿波銀行株式分割を発表(9月30日基準日)一時9,360円(一時+430円)
KSK株式分割(1株→3株)と自社株消却を発表カイ気配
日本カーボン株主優待制度の導入を決議一時4,935円(一時+80円)
UNICON HD大豊建設との資本・業務提携を発表一時974円(一時+63円)

株式分割は8月に入って発表が相次いでおり、イビデンのほか三越伊勢丹ホールディングス、三井金属なども実施を決めています。イビデンは今年1月にも分割しており、2026年に入って2回目です。東証が2022年10月に投資単位の引き下げを要請して以降、複数回の分割を実施した企業には株価が日経平均の上昇率を上回るケースが多いとされ、決算材料が乏しい時期の物色対象になっています。

一方、前日24日に野村が目標株価を8,400円から9,300円へ引き上げて233円高となっていた横浜ゴムは、この日260円安と全戻ししました。レーティング材料の効果が1日で消えた形です。

テクニカル面

8月21日時点の25日移動平均線は6万5615円、75日移動平均線は6万6241円でした。24日の終値6万5528円は25日線をわずかに下回っていましたが、25日の終値6万5856円は25日線を回復しています。ただし75日線には届いていません。

注目したいのは安値です。この日の安値6万4609円47銭は、8月19日の安値6万5133円を明確に下回りました。日中に一度は下値を切り下げたうえで、終値では25日線を回復して引けたことになります。

安値からの切り返し幅1,247円は下値での買い需要の存在を示唆する一方、売買代金が4カ月ぶりの低水準だったことを踏まえれば、薄い板のなかで先物が振り回した結果とも読めます。どちらの解釈を採るかで、この反発の持続性の見方は変わってきます。

上値メドは8月20日の高値6万6325円と75日線の6万6241円近辺、下値メドはこの日の安値6万4609円と心理的節目の6万4000円です。参考までに年初来高値は6月22日の7万2831円73銭、年初来安値は3月31日の5万558円91銭となっています。

今後の見通し

期間想定レンジ主な前提条件
翌営業日65,000円〜66,500円26日夜の米7月PCEデフレーターを通過するものの、27日早朝のエヌビディア決算を控え、薄商いのなかでの方向感の乏しい展開が続く想定
1ヶ月後62,500円〜68,500円27日のエヌビディア決算と氷見野日銀副総裁の記者会見、28日のジャクソンホール講演を通過してAI関連の方向感が定まる。日銀9月会合への思惑も焦点
1年後58,000円〜78,000円AI投資サイクルの持続性、米国の金融政策、中東情勢と原油価格、日銀の正常化ペースが主な変動要因

今週の日程を整理すると、26日の日本時間夜に米7月PCEデフレーター、27日早朝にエヌビディアの5-7月期決算、同27日に氷見野日銀副総裁の記者会見、28日にウォーシュFRB議長のジャクソンホール講演が続きます。日本市場が最も強く反応しうるのは27日です。

市場では、それぞれのイベントが全体相場の方向を大きく左右するほどの影響力を持つかについては懐疑的な見方も出ています。ただし薄商いのなかでは、想定外の内容が出た場合の振れ幅は大きくなりやすい点には注意が必要です。

今日の結論

「前日売られた銘柄がそのまま買い戻された1日。値幅は1,294円、商いは4カ月ぶりの低水準」

朝方の900円超の急落から1,247円切り返して328円高で引けた、という数字だけを見れば力強い反発です。しかし売買代金は4カ月ぶりの低水準で、空売り比率は45.8%から43.0%へ低下しました。上昇を担ったのは新規の買いではなく、ショートの手仕舞いだった可能性が高いと言えます。

物色の中身にも変化が見えます。AI関連として買われたのは半導体ではなく、古河電工やフジクラといった電線、そしてイビデンなどの基板でした。「AI関連株」という一括りでは、この2日間の値動きは追えません。

より簡潔にこの日の相場をつかみたい方は、通常版の日経ノートもあわせてご覧ください。

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