10月26日(月)から30日(金)の東京市場は、日経平均が週間で597円高(+0.95%)の63,290円11銭と、2週ぶりに反発して週を終えました。ただし週間の値動きは激しく、月曜に3カ月ぶり安値を付けた後、火曜から木曜にかけて3日続伸で2,400円超を取り戻し、金曜にはその半分以上を1日で吐き出しました。
相場を揺さぶったのはAI投資の収益性を巡る評価の往復です。アンソロピックのIPO申請やSKハイニックスの好決算がAI・半導体株の買い戻しを呼び、週末にはアルファベットの決算が「巨額投資は回収できるのか」という懸念を再燃させました。日米の中央銀行会合はいずれも据え置きでしたが、日銀は基調物価の2%到達を初めて認定し、ETF売却ペースの加速も決めています。本記事では、この1週間を日次の動きではなく週全体の構造から振り返ります。
今週の数字を一目で振り返る
| 曜日 | 日付 | 終値 | 前日比 | 騰落率 |
|---|---|---|---|---|
| 月 | 10月26日 | 62,189.65円 | -503.51円 | -0.80% |
| 火 | 10月27日 | 63,268.37円 | +1,078.72円 | +1.73% |
| 水 | 10月28日 | 63,954.19円 | +685.82円 | +1.08% |
| 木 | 10月29日 | 64,659.47円 | +705.28円 | +1.10% |
| 金 | 10月30日 | 63,290.11円 | -1,369.36円 | -2.12% |
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 前週末終値(10月23日) | 62,693.16円 |
| 週初終値(10月26日) | 62,189.65円 |
| 週末終値(10月30日) | 63,290.11円 |
| 週間騰落(前週末比) | +596.95円 |
| 週間騰落率 | +0.95% |
| 週間高値 | 64,831.29円(10月29日) |
| 週末のTOPIX | 3,965.07(週間では小幅安) |
日経平均が週間で上昇した一方、TOPIXは木曜に4,003.28まで上昇した後、金曜の下げで週初の水準を下回りました。日経平均とTOPIXの週間騰落の向きが分かれたこと自体が、この週の相場の性格を表しています。
今週の主要テーマ
AI投資の収益性を巡る「期待と懸念」の往復
週前半は期待が優勢でした。火曜はアンソロピックのIPO申請を受けてAI株への買い戻しが入り、アドバンテストが9%近く上昇して1銘柄で約601円を押し上げました。水曜はSKハイニックスが過去最高決算と「メモリー不足は2030年まで続く」との見方を示し、キオクシアHDが13.76%高と急伸しました。木曜はアドバンテストが通期計画を再び上方修正して6%高となり、日経平均は3日続伸で64,000円台を回復しました。
週末に風向きが変わりました。アルファベットの決算で広告事業の伸びが市場予想を下回り、同社株は12.64%安と上場以来最大の下落率を記録しました。アマゾンのフリーキャッシュフロー悪化やインテルの時間外安も重なり、金曜の東京市場ではアドバンテスト、東京エレクトロン、ソフトバンクグループ、イビデン、TDKの5銘柄だけで約1,265円分を押し下げました。AI関連の設備投資が「成長の証」から「回収の不安」へと読み替えられた1週間でした。
指数と相場の中身の乖離
今週は5営業日のうち4日で、日経平均の方向と東証プライムの騰落銘柄数の多数派が食い違いました。月曜は日経平均が503円安でも値上がり816銘柄が値下がりを上回り、火曜は1,078円高でも値下がり797銘柄が優勢、水曜は685円高でもプライムの7割が下落、木曜は705円高でも値下がりが上回り、金曜は1,369円安でも値上がり807銘柄が過半でした。
これは指数の上下がアドバンテスト、東京エレクトロン、ソフトバンクグループ、イビデンといった少数の値がさ株に集中していたためです。火曜は上げ幅の9割超を4銘柄が占め、金曜は下げの大半を5銘柄で説明できました。AI関連以外の銘柄には、商社・資源(月曜)、空運・海運・医薬品(金曜)など、決算や原油を手がかりとした資金の回転が続いており、相場全体の体温は指数が示すほど極端ではありません。
中銀ウィークと決算の「選別」
FOMCは政策金利を据え置きましたが、反対2票はいずれも利上げ主張で、市場が織り込む12月利上げ確率は8割前後と高水準です。日銀も1.25%据え置きながら、展望レポートで基調物価が2%目標と「おおむね整合的な水準」にあると初めて明記し、ETF売却ペースを従来の2.6倍に引き上げました。高田委員は1.5%への利上げを提案しており、据え置きの中身はタカ派的と受け止められています。
国内決算では「上方修正でも期待に届かなければ売られる」反応が目立ちました。アドバンテストや東京エレクトロンデバイスの上方修正、コナミグループやメタウォーターの好決算は買われた一方、日立製作所は上方修正でも純利益が市場予想に届かず9.8%安、コマツも7.6%安、富士通と栗田工業は金曜にストップ安となりました。修正幅がコンセンサスを上回るかどうかが、株価反応の分かれ目になっています。
注目銘柄——明暗を分けたもの
| 銘柄 | 週間騰落率 | 材料 | コメント |
|---|---|---|---|
| アドバンテスト | 約+7.8% | 通期計画の再上方修正と2,800億円の自社株買い | 火曜に約601円、木曜に約453円押し上げ、金曜に約468円押し下げ。週の主役 |
| キオクシアHD | 約+5.6% | SKハイニックス好決算でメモリー関連に買い | 水曜に13.76%高。金曜は7.1%安と往復が激しい |
| ソフトバンクグループ | 約+4.8% | AI関連の代表銘柄として買い戻し | 金曜は6.0%安。週初はCDSスプレッド拡大が重荷だった |
| コナミグループ | 約+7.7% | 中間期最高益、通期・配当予想を上方修正 | 水曜はカプコン急落の連想で6.4%安、金曜に15%高で年初来高値 |
| 東京エレクトロン | 約+0.6% | 金曜引け後に通期最高益見通しと実質52%増配 | 決算は週明けの反応待ち。金曜は5.2%安で終えた |
| ファーストリテイリング | 約-0.7% | 個別材料は乏しく指数の需給で上下 | 月曜は押し下げ3位、金曜は押し上げ1位と逆方向に働いた |
| イビデン | 約-1.8% | インテルの時間外急落を嫌気 | 水曜に7.9%高の後、金曜はストップ安(-15.21%) |
| 日立製作所 | 確認できず | 通期上方修正も純利益が市場予想に届かず | 木曜に9.8%安。上方修正でも売られる「選別」の象徴 |
来週の注目点5選
1. 東京エレクトロン決算への反応と半導体株の下げ止まり
金曜引け後に発表された東京エレクトロンの決算は、通期経常利益が87%増の1兆1,790億円と2期ぶりの最高益見通しで、年間配当も実質52%増配です。週明けにこの内容が買われるかどうかが注目されます。アルファベット決算で高まったAI投資懸念を国内製造装置の業績が打ち消せれば半導体株の自律反発につながりやすく、好決算でも売られるようなら調整が長引くリスクがあります。
2. 米国でのインテル・アマゾン決算の本番反応
金曜の東京市場はインテルとアマゾンの決算を時間外の反応で織り込みました。30日の米国市場での本番反応がそれより穏やかなら東京の売りが行き過ぎだった可能性が意識され、続落なら週明けも半導体株に重荷となります。アップル(11月3日早朝)とAMDの決算も、AI向け需要の見通しを確認する材料になります。
3. 米雇用統計(11月6日)と12月利上げ観測
FOMC後の市場は12月利上げを8割前後の確率で織り込んでいます。雇用統計が予想を上回れば利上げ観測が強まって米長期金利が上昇し、ハイテク株の上値を抑えやすくなります。逆に弱い結果なら金利低下を通じてグロース株に追い風となりますが、景気減速懸念とどちらが勝るかで反応が変わりうる局面です。
4. 米中間選挙(11月3日)
選挙結果は関税や財政政策、対イラン政策の見通しに影響します。結果が市場の想定通りなら材料出尽くしで落ち着きやすく、議会のねじれや予想外の結果となれば不確実性が高まり、為替と原油を通じて日本株にも波及しうる点に注意が必要です。
5. 日銀後の国内金利・為替と国内決算の本格化
日銀の2%到達認定とETF売却加速を受け、12月利上げ観測がどこまで強まるかが銀行株と円相場を左右します。円高が進めば輸出株の重荷となる一方、銀行株には追い風です。国内では7-9月期決算が佳境を迎え、上方修正の幅がコンセンサスを上回るかどうかで個別銘柄の明暗が続きそうです。
来週の日経平均シナリオ
| シナリオ | 想定レンジ | 主な前提条件 |
|---|---|---|
| 強気シナリオ | 65,000円〜68,000円 | 東京エレクトロンの最高益見通しとアップル・AMD決算でAI投資懸念が後退し、半導体株が自律反発。米雇用統計が無難で長期金利が落ち着けば、25日移動平均線(66,000円台前半)の回復を試す余地があります |
| 基本シナリオ | 61,500円〜65,500円 | AI関連の売りは一巡するものの、中間選挙と雇用統計を控えて方向感に欠ける展開。値がさ株の需給で日々の振れ幅は大きく、決算の選別が続きます |
| 弱気シナリオ | 58,500円〜61,500円 | 米ハイテク株が続落し、AI投資の回収不安が国内製造装置・電子部品株に波及。雇用統計で12月利上げ観測が強まり米金利が再び5%台に乗せれば、10月23日安値の61,462円を割り込むリスクがあります |
レンジは現時点の材料に基づく目安であり、売買を推奨するものではありません。
今週の相場を一言で総括
「AI投資の評価が往復した1週間——指数は値がさ株に振り回され、中身は決算で選別された」
日経平均は週間で597円高と反発しましたが、その上下はアドバンテストなど少数の値がさ株に集中し、プライムの騰落銘柄数は指数と逆方向の日が大半でした。日米の中銀会合は据え置きで通過したものの、日銀の2%到達認定とETF売却加速は金融正常化の次の段階を意識させる内容です。来週は東京エレクトロン決算の反応と米雇用統計・中間選挙次第で、AI関連の調整が続くか押し目買いが入るかの方向感が変わりうる局面です。
各日の詳しい分析は深掘りノートをご覧ください:10月26日・10月27日・10月28日・10月29日・10月30日