2026年8月28日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比273円58銭(0.41%)高の6万6405円56銭と反発しました。前日の米国市場でエヌビディアが急反発した流れを受け、後場には一時710円高まで買われています。

そして今週最後の営業日も、押し上げ寄与のトップはアドバンテストでした。これで5営業日のうち4日で寄与度ランキングの首位です。

一方で見落とせない数字があります。この日のTOPIXは+0.72%と、日経平均の+0.41%を上回りました。週間で見ると差はさらに開きます。日経平均が+0.59%だったのに対し、TOPIXは+1.95%。3倍以上の開きです。

指数の数字だけを追っていると、今週の市場で何が起きていたのかを見誤ります。この記事では1日の値動きと、週全体の構造の両方を整理します。今週の他の記事は8月24日、8月25日、8月26日、8月27日からご覧いただけます。通常版はこちらです。

相場サマリー

指数終値前日比騰落率
日経平均株価66,405.56円+273.58円+0.41%
TOPIX4,146.71pt+29.49pt+0.72%(7日続伸)
東証グロース市場250指数先物819pt+25pt5日続伸
項目数値
始値66,104.49円(▲27.49円)
高値66,842.82円(+710.84円、12時30分)
安値66,012.20円(▲119.78円)
東証プライム 売買代金8兆1,223億円
東証プライム 売買高21億7,795万株
値上がり銘柄数873(56.1%)
値下がり銘柄数631(40.5%)
横ばい49

日経225構成銘柄は値上がり146、値下がり74、変わらず5。値上がり146銘柄は今週最多です。東証33業種は18業種が上昇、15業種が下落しました。

日経平均を動かした主な要因

1. エヌビディアの急反発が起点

27日の米国市場でナスダック総合が411ポイント(1.57%)高と急伸しました。エヌビディア株は一時7.9%上昇し、10%近く上げる場面もありました。CEOが需要は非常に強く加速していると楽観的な見解を示したことで、AIバブルへの懸念が後退しています。

2. セールスフォース好決算でソフトウェア関連に波及

同じく26日夕に決算を発表したセールスフォースが2割を超える急騰となりました。東京市場でも野村総合研究所、トレンドマイクロ、NEC、富士通といったソフトウェア・IT関連が買われています。これが33業種の上昇率トップとなったサービス業を押し上げました。

3. 国内の雇用統計が改善

7月の失業率は2.4%と、市場予想の2.5%、前回の2.5%をともに下回りました。有効求人倍率は1.18倍で前回並みです。

4. ただし後場は失速

午後零時30分に710円高の6万6842円82銭まで買われた後、上げ幅を437円削って引けました。今晩のウォーシュFRB議長のジャクソンホール講演を見極めたいとして、戻り待ちの売りが出やすい状況でした。

この「朝高・後場失速」は3日連続です。8月26日は高値+585円から終値+405円、27日は高値+692円から終値▲130円、28日は高値+710円から終値+273円。いずれも高値をつけた後、引けにかけて上げ幅を削っています。

寄与度分析

押し上げ側です。

銘柄終値前日比寄与度
アドバンテスト35,270円+660円+159.30円
リクルートHD17,800円+830円+83.47円
東京エレクトロン56,230円+230円+23.13円

押し下げ側です。

銘柄終値前日比騰落率寄与度
キオクシアHD47,900円▲4,600円▲8.76%▲107.94円
フジクラ5,340円▲160円▲2.91%▲32.18円
ソフトバンクグループ5,161円▲39円▲0.75%▲31.38円

アドバンテストとリクルートHDの2銘柄で約242円の押し上げ。この日の上げ幅273円の約89%にあたります。

アドバンテストの5日間

今週の日経平均を語るうえで、この銘柄を外すことはできません。

日付終値前日比寄与度順位日経平均
8月21日(金)35,900円———66,016.36円
8月24日(月)34,500円▲1,400円▲337.90円押し下げ1位▲488.27円
8月25日(火)34,450円▲50円▲12.07円押し下げ2位+328.34円
8月26日(水)35,700円+1,250円+301.70円押し上げ1位+405.73円
8月27日(木)34,610円▲1,090円▲263.08円押し下げ1位▲130.18円
8月28日(金)35,270円+660円+159.30円押し上げ1位+273.58円

5営業日のうち4日で寄与度首位。寄与度の合計は▲152円05銭です。ところが株価そのものは3万5900円から3万5270円へ、週間で630円(1.75%)下げただけでした。

1銘柄の1.75%の下落が、日経平均を毎日100円から340円の幅で動かし続けたことになります。日経平均が株価の高い銘柄ほど影響を受ける株価平均型の指数であることの帰結が、今週はこれ以上ないほど鮮明に出ました。

キオクシアの「好材料出尽くし」

この日の押し下げトップはキオクシアHDで、8.76%安と急落しました。理由は前日の材料にあります。

キオクシアは27日の取引終了後、サンディスクとともに、政府支援を前提として2032年までに総額約5兆円の投資を見込むと発表しました。四日市工場と北上工場の生産設備構築を目的としたもので、AI関連需要の急拡大に対応する供給体制の整備です。

ところが株価は下げました。市場では過剰投資への警戒感につながったとの見方が出ています。加えてキオクシアは、岩手県での新工場棟建設報道を受けて27日にすでに5%高となっていました。前日の米国市場でサンディスク株が下落したこと、28日の韓国総合株価指数が軟調だったことも重なっています。

前日に材料を織り込んで買われ、正式発表で売られる。これは前日27日のアドバンテストとまったく同じ構図です。今週は2日連続で、好材料が売り材料に転じる場面を見たことになります。

東証プライムの騰落状況と週の構造

値上がり873銘柄、値下がり631銘柄、横ばい49銘柄。値上がり比率56.1%は今週で最も高い水準でした。日経225構成銘柄でも値上がり146は今週最多です。

売買代金は8兆1,223億円。今週の推移を並べると、市場心理の変化がそのまま数字に出ています。

曜日売買代金前日比
月(8/24)7兆636億円—
火(8/25)7兆99億円▲537億円
水(8/26)6兆7057億円▲3,042億円
木(8/27)7兆8700億円+1兆1,643億円
金(8/28)8兆1223億円+2,523億円

エヌビディア決算とジャクソンホール会議を控えて3日連続で細り、水曜には4カ月ぶりに7兆円を割り込みました。決算を通過した木曜から一転して膨らみ、金曜には今週最大となっています。イベントが市場参加者の行動をどう支配したかが、きれいなV字で表れました。

週間ではTOPIXが日経平均の3倍以上上昇

今週最も重要な数字がこれです。

指数8月21日終値8月28日終値週間騰落週間騰落率
日経平均66,016.36円66,405.56円+389.20円+0.59%
TOPIX4,067.29pt4,146.71pt+79.42pt+1.95%

TOPIXは週の5営業日すべてでプラスとなり、8月20日から7日続伸しています。日経平均は月曜に488円下げたことが響き、週間の上昇率は0.59%にとどまりました。NT倍率は16.23倍から16.01倍へ低下しています。

つまり今週の東京市場は、「値がさAI株が乱高下していた」のであって、「市場全体が方向感を失っていた」わけではありません。日経平均という一つの指数だけを見ていると、この違いは見えてきません。

業種別・テーマ別の動き

上昇した業種

サービス業が上昇率トップ。電通グループ、リクルートHD、ベイカレント、エムスリーが買われました。米セールスフォースの好決算を受けたIT・ソフトウェアへの見直しが波及した形です。

海運業も上昇率上位に入りました。日本郵船、川崎汽船が買われています。8月26日には下落率トップだった業種で、今週も日替わりの動きでした。

その他製品ではアシックス、任天堂、コナミグループ、バンダイナムコHD。8月27日に下落率トップだった業種が、翌日には上昇率上位へ反転しています。

証券・商品先物取引業は今週3日目の上位入り。野村、大和証券グループが買われました。銀行、保険、輸送用機器もそろって堅調です。

下落した業種 — 電線株の急落

非鉄金属が下落率トップとなりました。古河電気工業が4.55%安、住友電気工業が3.33%安、フジクラが2.91%安です。

今週の電線株は激しく動きました。8月25日には非鉄金属が上昇率トップ(+2.83%)となり、古河電工は10.34%高。26日には反落し、27日にフジクラが押し上げ寄与3位に入り、28日には再び急落しています。

AI・データセンター向けの電線需要という物語自体は変わっていません。それでも1週間で上昇率トップと下落率トップを往復しました。テーマの持続性と、株価の値動きは別の問題です。

電気機器の内部選別は5日連続

この日はアドバンテスト、東京エレクトロン、TDK、太陽誘電、村田製作所、ソニーGが上昇する一方、キオクシアHD、イビデン、京セラ、ソシオネクストが下落しました。

今週5営業日すべてで、買われる銘柄と売られる銘柄の組み合わせが変わり続けています。「半導体株が買われた」「AI関連が売られた」という粗い括りでは、今週の値動きは一度も説明できませんでした。

為替・米国株・金利の影響

ドル円は28日の東京時間、午前に159円29銭まで下げた後、午後は159円56銭まで値を上げました。15時台は159円50銭前後です。米インフレ指標の高止まりを受け、今晩のウォーシュ議長のタカ派的見解をにらんだドル買いが先行しました。

今週のドル円を並べると、その膠着ぶりがわかります。

日付15時台の水準
8月24日158.90円
8月25日159.33円
8月26日159.00円
8月27日159.30円台
8月28日159.50円前後

5営業日すべてが158円90銭から159円56銭という66銭のレンジに収まりました。ゆるやかな円安基調ではありますが、株式市場に方向感を与える材料にはなっていません。今週の相場を動かしたのは、為替ではなく個別銘柄の需給でした。

指標(8月27日終値)終値前日比
NYダウ53,569.44ドル+105.56ドル(+0.19%)
NASDAQ総合26,541.35+411.15(+1.57%)

27日の米国市場は反発しました。半導体・同製造装置とソフトウェア・サービスが上昇した一方、消費者サービスは下落しています。ダウの上昇が0.19%にとどまったのに対しナスダックが1.57%上昇したことからも、買われた対象が明確に偏っていたことがわかります。

なお、米長期金利は上昇しました。米週次新規失業保険申請件数が予想外に減少し、7月卸売在庫速報値も予想を上回る良好な内容だったためです。原油先物も中東情勢の先行き不透明感から上昇しており、週半ばに相場を支えた「原油安と金利低下」という前提は、週末にかけて再び揺らぎ始めています。

個別材料株

国内の主要な決算発表はありませんでした。27日引け後の発表分では、DyDoとオートバックスが好決算銘柄として挙げられています。

銘柄材料・背景株価反応
キオクシアHDサンディスクと2032年までに総額約5兆円の投資計画を発表するも、過剰投資への警戒感47,900円(▲4,600円、▲8.76%)
リクルートHD確認できず17,800円(+830円、+4.89%)
トレンドマイクロ米セールスフォース好決算でソフトウェア関連に見直し6,050円(+339円、+5.94%)
野村総合研究所同上5,266円(+220円)
太陽誘電米ハイテク株高9,244円(+344円、+3.87%)
古河電気工業電線株への利益確定売り3,903円(▲186円、▲4.55%)

市場の注目テーマでは「SaaS」が19位にランクインし、セールスフォースの好決算で見直し機運が高まりました。新興市場ではパワーエックスやテラドローンが上昇し、グロース250指数先物は5日続伸しています。

テクニカル面

8月21日時点の75日移動平均線は6万6241円、25日移動平均線は6万5615円でした。この日の終値6万6405円は、いずれも上回っています。8月27日の終値6万6131円が75日線を下回っていたことを考えると、1日で回復した形です。

一方、この日の高値6万6842円は、前日27日の高値6万6954円に届きませんでした。

テクニカルアナリストの伊藤智洋氏は28日朝の時点で、8月20日以降が下降途中の一時的な調整なら前日高値6万6954円が終点となって8月25日の安値6万4609円を目指す展開になり、逆に下値堅く推移すれば下降の流れがいったん終了して上値の重い場所を再確認する動きに入っている可能性があると指摘していました。

実際の値動きは下値堅く推移しましたが、6万6954円を試す場面もありませんでした。下降の流れはいったん止まったものの、上値も確認できていないという中間的な位置に留まったのが、この日の結論です。

上値メドは前日高値の6万6954円、13週移動平均線の6万7023円、心理的節目の6万8000円、8月14日高値の6万9608円。下値メドは8月25日の安値6万4609円、心理的節目の6万4000円、100日移動平均線の6万3860円です。

今後の見通し

期間想定レンジ主な前提条件
翌営業日(週明け)65,800円〜67,200円28日夜のウォーシュFRB議長講演の内容を週明けに織り込む。講演に質疑応答がないため、想定外の踏み込みがなければ方向感の乏しい展開が続く可能性
1ヶ月後63,000円〜69,500円米雇用統計と日銀9月会合が焦点。東京都区部コアCPIが+1.8%へ鈍化した点は利上げ観測にとって微妙な材料。9月は季節的に株価が軟調になりやすい
1年後58,000円〜78,000円AI投資サイクルの持続性、米国の金融政策、中東情勢と原油価格、日銀の正常化ペースが主な変動要因

今晩23時のウォーシュFRB議長の講演が、この週の最後の材料です。同議長はフォワードガイダンスに慎重な姿勢とされ、今回の講演には質疑応答が予定されていません。踏み込んだ言及がなければ、週明けの東京市場も方向感を欠いた展開が続く可能性があります。

逆に9月会合での利上げや引き締め姿勢に明確な示唆があれば、米金利上昇とドル高・円安が進み、日本株には輸出関連への追い風とグロース株への逆風が同時に生じることになります。

来週以降は、米雇用統計と日本の財政動向に関心が移ると見込まれています。加えて、米政権が半導体や電子機器の一部への追加関税を検討していると報じられた点も、AI関連株の重荷になりうる材料です。

今日の結論

「今週の締めもアドバンテスト。ただし本当に動いていたのはTOPIXのほうだった」

この日もアドバンテストが押し上げ寄与のトップに立ち、5営業日で4回目の首位となりました。株価は週間で1.75%下げただけなのに、日経平均を毎日数百円単位で振り回し続けています。

一方でキオクシアは、5兆円の投資計画という大型の好材料を発表しながら8.76%安。前日に織り込まれていたためです。前日のアドバンテストと同じ構図で、今週は2日連続で「良い材料が売り材料に転じる」場面を見たことになります。

そして週間では、日経平均が+0.59%だったのに対しTOPIXは+1.95%。TOPIXは7日続伸で、グロース250先物も5日続伸しました。値がさAI株の激しい上下が、市場全体の静かな上昇を覆い隠していた1週間だったと言えます。

指数はひとつではありません。日経平均だけを見て「今週は動かなかった」と結論づけると、実際に起きていた資金の流れを丸ごと見落とすことになります。

より簡潔にこの日の相場をつかみたい方は、通常版の日経ノートもあわせてご覧ください。

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【2026年8月28日】今日の日本株ノート|アドバンテストが5日で4回目の寄与度首位、週間ではTOPIXが日経平均の3倍上昇
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