2026年7月13日から17日の週、日経平均株価は前週末比4416円安の6万4141円12銭で取引を終えました。週間の下げ幅としては過去最大です。週の半ばには1000円を超える上昇日もあり、日々の値動きだけを追えば方向感のない乱高下に見えます。しかし週全体を俯瞰すると、売られた対象は一貫してAI・半導体でした。材料は日替わりで変わりながら、同じセクターが繰り返し標的になった1週間だったといえます。
今週の数字を一目で振り返る
| 曜日 | 日付 | 終値 | 前日比 | 騰落率 |
|---|---|---|---|---|
| 月 | 7月13日 | 67,242.73円 | ▲1,315.00円 | ▲1.92% |
| 火 | 7月14日 | 67,743.50円 | +500.77円 | +0.74% |
| 水 | 7月15日 | 68,751.51円 | +1,008.01円 | +1.49% |
| 木 | 7月16日 | 66,835.54円 | ▲1,915.97円 | ▲2.79% |
| 金 | 7月17日 | 64,141.12円 | ▲2,694.42円 | ▲4.03% |
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 週初の起点(7月10日終値) | 68,557.73円 |
| 週末終値(7月17日) | 64,141.12円 |
| 週間騰落 | ▲4,416.61円 |
| 週間騰落率 | ▲6.44% |
| 週間高値(7月13日ザラ場) | 69,078.21円 |
| 週間安値(7月17日ザラ場) | 6万3000円割れの場面あり |
週間の下げ幅4416円は過去最大です。6月25日につけた最高値7万2366円からは1割強の下落となり、終値では6月8日(6万4024円)以来の安値水準まで水準を切り下げました。1日の値幅で見ると、5営業日中4日が1000円を超える変動幅となっており、荒い相場が続いた週でもありました。
今週の主要テーマ
テーマ1:材料は日替わり、売られる対象は一貫
今週のAI・半導体売りには、日ごとに異なる材料がありました。月曜はSKハイニックスの米ADR上場後の利益確定売りを起点とした韓国株の急落。木曜は中国半導体メモリー大手の上海IPOを控えた競争激化懸念。金曜はTSMCの好決算が「織り込み済み」として売り材料に転じたことです。
これらは互いに独立した出来事です。それでも週を通じて売られたのは、常にアドバンテスト、東京エレクトロン、ソフトバンクグループ、キオクシアといった同じ顔ぶれでした。個々のニュースが下げを引き起こしたというより、AI投資への期待水準そのものが切り下がる過程にあり、そこに材料が次々と口実を与えていた、と見るほうが実態に近いかもしれません。
金曜の値動きはその象徴でした。TSMCの4〜6月期決算は市場予想を上回り、通期の増収率見通しも引き上げられています。それでも株価は売られました。好決算が買われない局面は、業績そのものより期待水準に問題があることを示唆します。
テーマ2:日経平均とTOPIXの乖離が語るもの
週間で日経平均が6.44%下げた一方、TOPIXの下落幅はこれを下回りました。日次でも金曜は日経平均▲4.03%に対しTOPIX▲2.72%、木曜は▲2.79%に対し▲1.45%と、一貫して日経平均の下落率が大きくなっています。値がさのAI・半導体株が指数を押し下げる一方、市場全体はそこまで崩れていないという構図です。
金曜の東証プライムでも、値下がり1081銘柄に対して449銘柄が値上がりしています。木曜にいたっては前引け時点で値上がり782・値下がり732と、値上がりが過半を占めていました。「株が全面的に売られた週」というより、「AI・半導体に集中していた資金が別の行き先を探した週」と整理するのが実態に近いでしょう。
テーマ3:資金の受け皿となった内需・ディフェンシブ
AI・半導体から流出した資金は消えたわけではありません。週を通じて、内需・ディフェンシブ・金融が受け皿となりました。月曜は金利先高観を背景にメガバンクへ資金が向かい、三菱UFJが上場来高値を更新して時価総額首位に立っています。水曜は米金融大手の好決算を受けて三菱UFJや野村など銀行・証券株が買われました。金曜はファーストリテが指数のプラス寄与トップとなり、コナミG、テルモ、中外薬、任天堂、ニトリHDなどにも買いが入っています。
サイゼリヤは「値上げ検討」報道を材料に木曜のストップ高に続き金曜も値上がり率トップとなりました。AI関連の値動きが荒れる局面で、業績の見通しが立てやすい内需銘柄に資金が向かう傾向は、来週以降も続くかどうかが注目されます。
注目銘柄——明暗を分けたもの
| 銘柄 | 週内の動き | 材料 | コメント |
|---|---|---|---|
| キオクシアHD | 金曜にストップ安、上場来高値から半値割れ | 米陪審が特許侵害を認定、賠償額約371億円(業績影響は精査中) | 週を通じて売買代金上位。6月22日の高値11万2700円から半値以下に |
| アドバンテスト | 週内で乱高下、金曜は前引けだけで指数を約772円押し下げ | AI・半導体センチメントに完全連動 | 火曜には指数押し上げトップ、金曜には押し下げトップと役割が逆転 |
| ソフトバンクG | 火曜は押し上げ2位、木・金は押し下げ上位 | AI関連への評価の振れが直撃 | 指数への影響度が大きく、日々の方向を左右 |
| 東京エレクトロン | 水曜はASML決算で一段高、木・金は反落 | 半導体製造装置の需要期待と調整 | 装置株はASML・TSMCの決算に敏感に反応 |
| 三菱UFJ | 月曜に上場来高値更新、時価総額首位に | 金利先高観と米金融大手の好決算 | AI関連からの資金退避先として週を通じて底堅い |
| ファーストリテ | 金曜は+1,360円で指数のプラス寄与トップ | 内需への資金シフト | 火曜には押し下げ上位だった銘柄が、週末には支え役に |
| サイゼリヤ | 木曜ストップ高、金曜も値上がり率トップ(+12.09%) | 「値上げ検討」報道と増配 | AI相場の外側で独自に評価された銘柄 |
| ベイカレント | 木曜に急騰 | 27年2月期第1四半期が大幅増収増益 | 好決算が素直に買われた数少ない例 |
来週の注目点5選
1. AI・半導体株が下げ止まるかどうか
今週の下げは好決算すら買われない局面まで進みました。期待水準の切り下げがどこで一巡するかが最大の焦点です。半導体株が下げ止まれば日経平均も落ち着きを取り戻しやすくなる一方、下げが続けば指数はさらに水準を切り下げる可能性があります。判断材料としては、韓国KOSPIと米SOX指数の動向が引き続き有効でしょう。
2. 3連休中の海外市場の動向
東京市場は7月18日から3連休で、次の取引日は7月21日(火)です。連休中に米国市場が動くため、窓を開けて始まる可能性があります。今週は3連休を控えて積極的な買いが手控えられた面もあり、連休明けにポジションが動きやすい環境です。海外市場が落ち着けば買い戻しが入りやすく、荒れれば下値を試す展開になりやすい局面です。
3. 中東情勢と原油価格
今週はホルムズ海峡の再封鎖宣言、米軍の対イラン攻撃の再開・激化と、緊迫した状態が続きました。WTI原油は一時80ドル台まで上昇しています。原油高は日本の貿易収支悪化を通じた円売り材料であると同時に、企業業績とインフレへの懸念材料でもあります。事態が沈静化すれば株式市場の重荷が一つ外れる一方、さらなる悪化があればリスク回避が強まりやすい状況です。
4. 国内決算シーズンの本格化
3-5月期および4-6月期の決算発表が本格化します。今週はベイカレントの好決算が素直に買われた一方、マニーは上方修正でも市場予想に届かず10%超下落しました。AI・半導体以外のセクターで好決算が確認されれば、資金の受け皿が広がり相場全体の底堅さにつながる可能性があります。立花証券の鎌田重俊参与は「設備投資拡大を背景に工作機械関連の26年4〜6月期は好決算が予想され、日本株全体の底堅さは維持されている」との見方を示していました。
5. 為替と為替介入への警戒
今週のドル円は162円台で推移し、日経平均が2700円超下げた金曜も為替への影響は限定的でした。株安が円買いを呼ばない点は、日本株の下げが世界的なAI関連の調整であって日本固有の要因ではないことを示唆しています。片山財務相は「必要とあればいつでも果断な措置をとる」と発言していますが、市場の反応は限られました。163円が意識される局面では介入警戒が強まりやすく、円安の進行度合いが輸出関連株の支えとなるかが注目されます。
来週の日経平均シナリオ
| シナリオ | 想定レンジ | 主な前提条件 |
|---|---|---|
| 強気シナリオ | 66,000円〜69,300円 | 連休中に米半導体株が反発し、売られすぎの反動から買い戻しが入る。中東情勢が沈静化し原油が低下。国内決算で工作機械・内需の好業績が確認される |
| 基本シナリオ | 61,000円〜67,300円 | AI・半導体の調整が続くものの下げ幅は限定的。内需・金融が下支えし、6万4000円前後で下値を固めながら方向感を探る |
| 弱気シナリオ | 59,000円〜62,200円 | 連休中に海外AI関連が一段安。キオクシアの特許問題の業績影響が拡大。中東情勢の悪化で原油が一段高となりリスク回避が加速 |
週末終値6万4141円は、6月8日の安値6万4024円をわずかに上回る水準にあります。この6万4000円前後を維持できるかが目先の分岐点として意識されそうです。一方、週間下げ幅が過去最大に達したことは、短期的な売られすぎの反動が出やすい水準に近づいたことも意味します。どちらに振れてもおかしくない局面といえるでしょう。
今週の相場を一言で総括
「材料は日替わり、売られる対象は一貫。AI・半導体の期待水準が切り下がった週間下げ幅過去最大の1週間」。
数字だけを見れば歴史的な下落週ですが、内訳を見るとTOPIXの下落率は日経平均を大きく下回り、金曜も449銘柄が値上がりしています。市場全体が崩れたというより、AI・半導体に偏っていた資金の配分が組み替わる過程にあると整理するのが妥当でしょう。好決算が買われない局面がどこで終わるかが、来週以降の最大の論点となりそうです。
各営業日の詳細な分析は、日次の深掘りノートでご覧いただけます。7月13日/7月14日/7月15日/7月16日/7月17日