2026年7月6日〜10日の東京株式市場は、値がさ半導体株の急落と急反発、中東情勢の再燃と後退、そして年金基金の国内投資拡大観測という異なる性質の材料が週の前半・後半で目まぐるしく入れ替わった一週間だった。日経平均株価は週初の69,737円台から週末には68,557円台まで水準を切り下げ、週間ではおよそ1,180円の下落となった。一方でTOPIXは週初に史上最高値を更新するなど、指数間で明暗が分かれる週でもあった。
今週の数字を一目で振り返る
| 曜日 | 日付 | 終値 | 前日比 | 騰落率 |
|---|---|---|---|---|
| 月 | 7月6日 | 69,737.69円 | ▲6.38円 | ▲0.01% |
| 火 | 7月7日 | 68,256.96円 | ▲1,480.73円 | ▲2.12% |
| 水 | 7月8日 | 66,819.05円 | ▲1,437.91円 | ▲2.11% |
| 木 | 7月9日 | 67,743.85円 | +924.80円 | +1.38% |
| 金 | 7月10日 | 68,557.73円 | +813.88円 | +1.20% |
| 週初(月曜終値) | 週末(金曜終値) | 週間騰落 | 週間騰落率 |
|---|---|---|---|
| 69,737.69円 | 68,557.73円 | ▲1,179.96円 | ▲1.69% |
週の前半3日間で日経平均は合計およそ2,925円下落したのに対し、後半2日間で合計およそ1,739円反発した。値動きの荒さが際立った週であり、週間の下落幅そのものは決して小さくないものの、日々の変動率で見れば「一方的な下落」ではなく「乱高下からのやや弱含みでの着地」と表現するのが実態に近い。
今週の主要テーマ
半導体・AI関連株の乱高下
週の最大のテーマは、半導体・AI関連株を巡る目まぐるしい資金の出入りだった。週明け6日はTOPIXが最高値を更新する一方、半導体株の一角には利益確定売りが出て日経平均は小幅安にとどまった。週前半のハイライトは7日の「サムスンショック」だ。韓国・サムスン電子が発表した好決算が逆にAI関連株への過熱警戒感を呼び起こし、同社株が急落。韓国総合株価指数(KOSPI)はサーキットブレーカーが発動されるほどの下落となり、この流れが東京市場の半導体関連株(キオクシアHD、東京エレクトロン、アドバンテストなど)にも波及した。8日には米ハイテク株安と中東情勢の悪化も重なり、日経平均は3日続落で1カ月ぶりの安値水準まで沈んだ。
ところが週後半の流れは一変する。9日には前日の米半導体株高を追い風にAI・半導体関連株への見直し買いが活発化し、日経平均は4営業日ぶりに大幅反発。10日にはさらに、韓国メモリー大手SKハイニックスの米預託証券(ADR)上場に売り出しの7倍超の応募があったと報じられ、メモリー関連株への投資家の関心の高さが改めて示された。1週間という短いスパンの中で、AI・半導体セクターへの「過熱警戒」と「見直し買い」が繰り返された格好だ。
中東情勢の再燃と後退
週半ばには中東情勢が相場の重荷として急浮上した。イランのイスラム革命防衛隊が6日にホルムズ海峡で商船へのミサイル攻撃を行ったとされ、米国が7日にイランへ報復攻撃を実施。米ニュースサイト・アクシオスは、この攻撃が前回と比べ「規模と威力で4〜5倍」だったと報じ、戦闘終結に向けた交渉への不透明感が強まった。この地政学リスクの再燃は8日の下落局面の一因となった。しかし9日には米中央軍が8日にイランへの攻撃を完了したと発表し、原油価格の下落とともにインフレ懸念が後退。トランプ米大統領がエアフォースワン機内で「イラン側から電話があり、取引を望んでいる」と発言したと報じられたことも投資家心理の改善につながり、週後半の株価反発を後押しした。
需給要因とGPIF発言による国内投資拡大期待
週の後半にかけては、需給面の要因も相場を左右した。決算日を迎えたETF(上場投資信託)の分配金捻出に絡む換金売りが8日・10日にそれぞれ相場の重荷となった。一方で10日には、片山さつき財務相が閣議後会見でGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの年金基金による日本の金融資産投資を後押しする考えを示したと報じられ、市場は株高・円高・金利低下の「トリプル高」で反応。三井住友DSアセットマネジメントのストラテジストは「仮に外国株と外国債を売って国内資産を増やすとなれば、日本株の上昇につながる」と指摘しており、この発言の具体化が来週以降も材料視されそうだ。
注目銘柄——明暗を分けたもの
| 銘柄 | 週間の動き | 材料 | コメント |
|---|---|---|---|
| キオクシアHD | 週前半に11%超安、週後半に急反発 | サムスンショックの波及、SKハイニックスADR上場人気 | 週内での値動きの荒さが最も際立った銘柄の一つ |
| ソフトバンクG | 週後半に指数寄与度トップの押し上げ役に | AI・半導体関連の見直し買い | 週前半の重荷から一転、週末には最大の押し上げ銘柄に |
| 東京エレクトロン・アドバンテスト | 週半ばに急落、週後半に反発 | 半導体セクター全体の資金フローに連動 | 週を通じて指数への影響度が特に大きかった |
| 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 週半ばに上場来高値を更新 | 国内長期金利の約30年ぶり高水準への上昇 | 半導体安の局面で相場を下支えする役回りを果たした |
| アサヒグループHD | 週半ばに株価急伸 | 26年12月期純利益予想を上回る決算 | 個別の好決算が評価された数少ない銘柄の一つ |
| ファーストリテイリング | 週末にかけて指数の押し下げ役に | 値がさ株としての利益確定売り | 週を通じて振れ幅が大きかった |
来週の注目点5選
1. 米6月消費者物価指数(CPI)
7月14日発表予定の米CPIが最大の注目イベントとなる。インフレ再燃を示す結果となれば、FRBの利上げ観測が強まり、株式市場には逆風となりうる。逆に落ち着いた結果であれば、AI・半導体株を中心に上値を試す展開も想定される。
2. 米大手ハイテク企業の決算シーズン本格化
今月後半に予定される米大手ハイテク企業の決算で、AI関連への設備投資の勢いが続くかが焦点となる。マイクロンやメタなど週内に前向きな設備投資計画を示した企業が多かっただけに、期待先行の反動に注意が必要となる局面もありそうだ。
3. GPIF関連報道の具体化
片山財務相の発言を受けて、GPIFなど年金基金による国内投資拡大の具体策がどこまで示されるかが注目される。具体案が明確になれば日本株買いの新たな材料となりうる一方、憶測の域を出なければ材料出尽くしとなる可能性もある。
4. 中東情勢の展開
米中央軍のイラン攻撃完了発表を受けて懸念はいったん後退したが、トランプ大統領とイラン側の交渉の行方次第では、再び地政学リスクが相場の重荷となる可能性がある。原油価格の動向とあわせて注視が必要となる。
5. 日米の金融政策会合を巡る思惑
日銀の次回金融政策発表は7月31日、米国の次回FOMCは7月29日に予定されている。国内では長期金利が約30年ぶりの高水準で推移しており、日銀の追加利上げ観測や為替介入への警戒感が、ドル円・株式双方の値動きを左右しやすい局面が続きそうだ。
来週の日経平均シナリオ
| シナリオ | 想定レンジ | 主な前提条件 |
|---|---|---|
| 強気シナリオ | 70,000円〜73,000円 | 米CPIが落ち着いた結果、米ハイテク決算が好感、GPIF関連の具体化観測が進展 |
| 基本シナリオ | 66,500円〜70,000円 | 方向感を欠く様子見が継続、CPI・決算とも無難な結果にとどまる |
| 弱気シナリオ | 63,500円〜66,500円 | 中東情勢が再び悪化、米CPI上振れで利上げ観測が強まる、ETF・需給要因の再燃 |
強気シナリオでは、半導体セクターへの資金回帰とGPIF関連の具体的な政策が相まって、出遅れていたバリュー株も含めた全面高が想定されます。基本シナリオでは、今週見られたような一日単位での資金の出入りが続き、方向感の乏しいレンジ相場になりやすいと考えられます。弱気シナリオでは、地政学リスクとインフレ懸念が同時に再燃し、半導体株を中心とした調整が深まるリスクがあります。
今週の相場を一言で総括
「サムスンショックからGPIFトリプル高まで、半導体と地政学リスクに揺れた一週間」——これが今週を象徴する一言だ。値がさ半導体株の過熱警戒と見直し買いが同じ週の中で入れ替わり、地政学リスクの再燃と後退も同時に経験するなど、材料の振れ幅が非常に大きい5営業日だった。週間ではやや下落で着地したものの、値動きの中身を見ると一方的な弱気相場ではなく、押し目では買いが入りやすい地合いが維持されていたことがうかがえる。各日の詳しい分析は、日次の深掘りノートもあわせてご覧ください。