2026年5月25日〜29日の東京株式市場は、ボラティリティの高い1週間となりました。日経平均株価は週初の5月25日に史上初めて65,000円台に乗せ、週末の29日には終値66,329円50銭と再び最高値を更新。前週末(5月22日)の63,339円から週間で約2,990円(+4.7%)の上昇となりました。
もっとも、その道のりは決して平坦ではありません。週半ばには一時66,000円台に乗せながら終値はほぼ横ばいという失速劇があり、木曜には中東情勢の再燃で一時1,100円超の急落も経験しました。本稿では、各営業日の深掘りノートをもとに、今週の相場を週全体の視点で再構成します。
今週の数字を一目で振り返る
| 曜日 | 日付 | 日経平均終値 | 前日比 | 騰落率 |
|---|---|---|---|---|
| 月 | 5/25 | 65,158円 | +1,819円 | +2.87% |
| 火 | 5/26 | 64,996円 | ▲162円 | ▲0.25% |
| 水 | 5/27 | 64,999円 | +3円 | +0.01% |
| 木 | 5/28 | 64,693円 | ▲306円 | ▲0.47% |
| 金 | 5/29 | 66,329円 | +1,636円 | +2.53% |
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 前週末終値(5/22) | 63,339円 |
| 当週末終値(5/29) | 66,329円 |
| 週間騰落 | +2,990円 |
| 週間騰落率 | +4.7% |
| 週間高値(取引時間中) | 66,505円(5/29) |
5営業日のうち上昇は3日、下落は2日。値幅の大きい上昇2日(月曜・金曜)が小幅な下落をカバーし、トータルでは力強い週となりました。週末のTOPIXは3,957.17(+1.41%)と日経平均同様に最高値を更新しています。
今週の主要テーマ
① 65,000円から66,000円へ——AI・電子部品が主導した最高値ラリー
今週の相場を一言で表せば「節目の連続突破」でした。月曜に史上初の65,000円台へ乗せ、金曜には終値で初の66,000円台に到達。中心にいたのはAI・半導体、そして週末に主役となったMLCC(積層セラミックコンデンサー)関連です。
特に金曜は、AIサーバー需要を背景にした村田製作所などの電子部品株が急騰。東証プライムの売買代金は史上初めて16兆円台に達し、相場の厚みが数字の上でも裏付けられました。AIインフラ投資という構造的なテーマが、依然として日本株の上値を押し上げる原動力になっています。
② 中東リスクの振り子——和平期待・軍事応酬・停戦延長
今週の値動きを大きく揺さぶったのが米・イラン情勢です。週初はホルムズ海峡開放に向けた合意期待から原油安・国内金利低下が進み、成長株の追い風になりました。ところが木曜には米軍とイランの軍事応酬が報じられ、リスク回避の売りで一時1,100円超の急落。そして金曜には一転、60日間の停戦延長合意の報道(最終承認は未確定)でリスクオンが再点火しました。
地政学ヘッドラインに相場が一喜一憂した週でしたが、木曜の急落を押し目買いが急速に吸収したことは、上昇トレンドの下値の堅さも同時に示しています。
③ 日経平均とTOPIXの乖離——値がさ株集中という相場の「クセ」
もう一つ見逃せないのが、指数と市場全体の温度差です。日経平均が+2〜3%動く日でも、東証プライムでは値下がり銘柄が過半数を占める場面が目立ちました。上昇率でも日経平均がTOPIXを大きく上回り、NT倍率は一段と切り上がっています。
これはソフトバンクグループや一部の半導体・電子部品といった値がさ株への資金集中を反映したものです。「市場全体が一様に強い」というより「特定テーマへの集中物色」が続いている点は、相場の表面的な高値とあわせて意識しておきたいところです。
注目銘柄——明暗を分けたもの
| 銘柄 | 週内の動き | 主な材料 | コメント |
|---|---|---|---|
| ソフトバンクG(9984) | 週前半は押し上げ役→27日に▲7.3%急落 | OpenAI IPO申請観測、融資契約締結 | 材料が出揃い「出尽くし」の利確。週内の振れ幅が最も大きい象徴銘柄 |
| 村田製作所(6981) | 29日に+12%超の急騰 | MLCC需給逼迫への期待 | 週末ラリーの主役。AIサーバー向け需要が再評価された |
| 太陽誘電・TDK | 週末に大幅高 | MLCC・電子部品需要 | 村田製とともに「MLCC祭り」を形成 |
| アドバンテスト(6857) | 週を通じ指数押し上げの中核も乱高下 | 半導体テスタ需要、米ハイテク高 | 日経寄与度上位の常連。木曜は利確売りに押された |
| 東京エレクトロン(8035) | 週末に分割・自社株買いを発表 | 株式分割(1対5)・自社株買い(6/1発動) | 来週以降の個人マネー流入が注目材料に |
| SUMCO | 29日に+19%超 | シリコンウエハ需要、半導体高 | 週末の半導体物色で値上がり率上位 |
| 古河電工・住友金属鉱山 | 28日に▲8%超の急落 | 中東ショック・非鉄市況 | 地政学リスクで非鉄が集中的に売られた |
来週の注目点5選
① 東京エレクトロンの株式分割(6月1日発動)
6月1日に1対5の株式分割と自社株買いが発動します。1株あたりの投資単位が下がることで個人投資家が参入しやすくなり、需給面でどう作用するかが注目されます。指数寄与度の大きい銘柄だけに、分割後の値動き次第で日経平均の方向感にも影響しうる局面です。
② 米雇用統計(6月5日)
来週最大の経済指標です。労働市場の強弱がFRBの利下げ観測を左右し、ドル円や米長期金利を通じて日本株にも波及します。市場予想を下回る弱めの内容なら利下げ期待が高まり成長株の追い風となる一方、強い数字が出れば利下げ観測の後退が重荷となりうるため、どちらに振れるか方向感が変わりやすい点に注意が必要です。
③ 米・イラン停戦延長の正式承認の行方
金曜に伝わった60日間の停戦延長合意は、まだ正式承認に至っていません。承認に進めば原油安・リスクオンが続く可能性がある一方、合意が崩れれば中東リスクが再燃し原油急騰・リスクオフへ逆回転する余地もあります。原油価格と連動しやすいテーマだけに、関連ヘッドラインの確認が欠かせません。
④ MSCIリバランス後の需給整理
5月29日の大引けでMSCIグローバルスタンダード指数の定期入れ替えが集中し、売買代金は16兆円超に膨らみました。来週初は、その反動でリバランス関連の需給がどう整理されるかが焦点です。イベント通過後に改めて実需がどちらを向くかで、当面の地合いが見えてきそうです。
⑤ 日銀の利上げ観測と国内長期金利
5月の東京都区部CPIはコアで前年比+1.3%と4月(+1.5%)から鈍化し、6月利上げ観測はやや後退気味です。とはいえ日銀内には利上げ継続を示唆する声もあり、6月会合(16〜17日)に向けた思惑が長期金利を通じて成長株のバリュエーションに影響しやすい状況です。金利の方向次第で物色対象が変わりうる点が注目されます。
来週の日経平均シナリオ
| シナリオ | 想定レンジ | 主な前提条件 |
|---|---|---|
| 強気シナリオ | 68,000円〜71,000円 | 停戦延長の正式承認・原油安が続き、米雇用統計が利下げ観測を後押し。MLCC・AI物色が継続 |
| 基本シナリオ | 64,500円〜68,000円 | 高値圏での値固め。中東情勢が一進一退、国内金利は安定。リバランス後の需給を消化 |
| 弱気シナリオ | 61,000円〜64,500円 | 中東の軍事応酬が再燃し原油急騰。米指標で利下げ観測が後退し、値がさ株の利確が加速 |
来週は66,000円という新たな高値圏でのスタートとなります。停戦延長が正式に固まり、来週末の米雇用統計が利下げ期待を支える内容となれば、AI・MLCC物色を軸に上振れ余地があります。一方で、中東情勢が再び不安定化し原油が急騰するような展開となれば、地政学リスクと利確売りが重なって下振れリスクが意識されやすい局面です。高値圏ゆえに上下どちらにも振れやすく、材料の出方を見極めたいところです。
今週の相場を一言で総括すると
「中東リスクの振り子に揺さぶられながらも、AI・MLCC物色が最高値ラリーを途切れさせなかった一週間」——これが今週を象徴する一言です。
週初の65,000円突破から、水曜の失速、木曜の中東ショックを経て、金曜には16兆円超の超大商いとともに66,000円台へ。乱高下のなかでも、押し目買いの厚さとAIインフラ需要という構造的なテーマが相場を下支えしました。来週は、停戦延長の行方・米雇用統計・東エレク分割という3つの材料が、この高値圏での次の方向を決めるカギになりそうです。
今週の各営業日の詳細な相場分析は、日次の深掘りノートをあわせてご覧ください。