「配当をもらえると思って買ったのに、翌日に株価が下がって含み損になった」。9月末や3月末が近づくと、こうした戸惑いの声をよく目にします。
その下落の多くは、「権利落ち」という仕組みで説明できます。知っていれば慌てずに済み、知らなければ不安になって売ってしまうかもしれません。
この記事では、次の3点を整理します。
- 権利落ち日に株価が下がる理由と、日程の仕組み
- 日経平均や個別株が、実際にどれくらい動いてきたか
- 初心者がやりがちな失敗と、権利落ち日との向き合い方
本記事の情報は2026年9月21日時点のものです。最新情報は各公式サイトをご確認ください。
先に結論:下がるのは「配当の分」。損をしたわけではない
最初に結論をお伝えします。
- 権利落ち日には、理論上、配当金の分だけ株価が下がる
- 下がった分は、後日配当金として受け取る。資産の合計は理論上変わらない
- ただし実際の株価は、地合いや需給で理論値より大きくも小さくも動く
- 配当だけを狙った短期売買は、理論上は有利にならない
権利落ちによる下落は、企業の価値が損なわれたことを意味しません。会社の財布から株主の財布へ、お金が移る準備が始まっただけです。
以下、順番に見ていきます。
権利落ち日とは? 3つの日付を整理する
配当を受け取るには、企業が定める「権利確定日」に株主名簿へ載っている必要があります。ここで注意したいのが、株の受け渡しにかかる日数です。
株を買ってから名簿に載るまでには、約定日を含めて3営業日かかります。そのため、権利確定日の2営業日前までに買っておく必要があります。この期限の日が「権利付き最終日」です。
その翌営業日が「権利落ち日」です。この日以降に買っても、今回の配当は受け取れません。
図1:2026年9月末銘柄の日程
| 日付 | 名称 | 意味 |
|---|---|---|
| 9月21日(月・祝)〜23日(水・祝) | 休場 | 祝日のため取引なし |
| 9月25日(金) | ― | 一部証券会社の夜間取引(PTS)では、この日が権利取りの期限になる場合あり |
| 9月28日(月) | 権利付き最終日 | この日の取引終了時点で保有していれば、配当の権利を得られる |
| 9月29日(火) | 権利落ち日 | この日に買っても、今回の配当は受け取れない。売却しても権利は残る |
| 9月30日(水) | 権利確定日 | 株主名簿が確定する日 |
| 11月下旬〜12月ごろ | 配当金の支払い | 権利確定から2〜3か月後が一般的 |
※月末が権利確定日の銘柄の場合です。20日など月末以外を権利確定日とする銘柄もあります。夜間取引の扱いは証券会社により異なります。
覚えておきたいのは2点です。権利付き最終日の取引終了時点で持っていれば権利は確定すること。そして、権利落ち日に売っても配当は受け取れることです。
(関連用語:権利確定日、権利付き最終日、権利落ち日)
なぜ株価が下がるのか
理屈は「配当をもらえる株」と「もらえない株」の差
9月28日に買った株には、配当を受け取る権利が付いています。翌29日に買った株には付いていません。同じ会社の株でも、1日違いで価値が変わります。
配当が1株5円なら、その差は5円です。権利落ち日の株価は、理論上、この5円分だけ安くなります。
図2:権利落ちの前後で、資産はどう変わるか(1株あたりの単純な例)
| 権利付き最終日 | 権利落ち日(理論値) | |
|---|---|---|
| 株価 | 1,000円 | 995円 |
| 受け取る予定の配当 | ― | 5円 |
| 合計 | 1,000円 | 1,000円 |
※税金・手数料と、他の要因による値動きを考慮しない場合の例です。
株価は5円下がりますが、5円の配当を受け取る権利が手元に残ります。合計は変わりません。
企業の側から見ても同じです。配当を支払えば、その分の現金が会社から出ていきます。会社の資産が減る分、株価が下がるのは自然なことです。
証券口座の画面で驚かないために
権利落ち日の朝、保有株の評価額が減っているのを見て驚く方は多いようです。
配当金が実際に振り込まれるのは、2〜3か月先です。その間、口座の画面には「下がった株価」だけが表示されます。受け取る予定の配当は、評価額には含まれません。
また、証券会社によっては、権利付き最終日の夕方から、予想配当を差し引いた価格で評価額を表示する場合があります。夜のうちに評価額が減って見えても、異常ではありません。
(関連用語:配当落ち、理論株価)
日経平均はどれくらい下がる?
個別株だけでなく、日経平均株価も権利落ちの影響を受けます。構成銘柄の多くが3月期決算で、3月末と9月末に配当の権利落ちが集中するためです。
この影響額は「配当落ち分」と呼ばれ、証券会社や情報ベンダーが試算を公表しています。
図3:日経平均の配当落ち分(各社試算)
| 時期 | 配当落ち分の試算 | グラフ(■=約25円) | 出所 |
|---|---|---|---|
| 2023年9月末 | 約224円 | ■■■■■■■■■ | QUICK試算(日本経済新聞) |
| 2024年3月末 | 約260円 | ■■■■■■■■■■ | 日本経済新聞 |
| 2025年9月末 | 約303円(指数の約0.68%) | ■■■■■■■■■■■■ | 野村證券試算 |
| 2026年3月末 | 約230〜260円 | ■■■■■■■■■〜■■■■■■■■■■ | 市場推計 |
※試算の主体や時点が異なるため、厳密な比較はできません。2026年9月末の試算値は、執筆時点で公表を確認できていません。
野村證券は2025年9月の解説で、指数の上昇と配当金額の増加により、配当落ちの影響は着実に大きくなっていると指摘しています。
配当の増加は続いています。野村證券は、日本の上場企業の2026年度の配当総額を31.6兆円、前年度比20.3%増と見込んでいます(2026年8月時点の見通し)。配当が増えれば、権利落ちで動く金額も大きくなります。
ニュースで「日経平均は300円安」と聞くと、悪材料が出たように感じます。権利落ち日については、下落幅のうち配当落ち分を差し引いて考える必要があります。
先物が安く見える朝のカラクリ
権利付き最終日が近づくと、日経平均先物が現物より安い状態になります。先物を持っていても配当は受け取れないため、あらかじめ配当落ち分を織り込んだ価格が付くからです。
朝のニュースで「先物が大幅安」と報じられても、その一部は配当落ち分である場合があります。3月と9月の下旬は、この点を頭に入れておくと落ち着いて相場を見られます。
(関連用語:配当落ち分、日経平均先物、配当込み指数)
実際の値動き:理論どおりにはいかない
理論上は配当の分だけ下がります。実際の株価は、その日の地合いで大きく変わります。3つの実例を見てみます。
図4:権利落ち日の日経平均(実例)
| 権利落ち日 | 配当落ち分の試算 | 実際の動き | 背景 |
|---|---|---|---|
| 2023年9月28日 | 約224円 | 始値は前日比252円安。下げ幅は一時300円超 | 前日の米国株安も重荷に |
| 2025年9月29日 | 約300円 | 始値は前週末比241円安 | 前週末の米国株高が支えとなり、下値は堅かった |
| 2026年3月30日 | 約230〜260円 | 一時、前日比2,800円超安 | 中東情勢への懸念などで相場全体が急落 |
※日本経済新聞、野村證券の公表情報をもとに作成。
2025年9月は、配当落ち分より小さな下げで始まりました。地合いが良ければ、落ち分の一部がすぐに埋まることもあります。
2026年3月は対照的です。配当落ち分は200円台でしたが、実際の下げは一時その10倍を超えました。権利落ちとは無関係の要因が、相場を大きく動かした例です。
個別株は「配当以上に下がる」こともある
個別株では、配当額を上回る下落も珍しくありません。
2025年9月29日の権利落ち日には、9月末に中間配当の権利が確定する主要な高配当株の多くが、配当額より大きく下げたとの集計があります。みずほフィナンシャルグループは、中間配当72.5円に対して165円の下落でした。
なぜ配当以上に下がるのでしょうか。理由のひとつとして、配当の権利を取った投資家の売りが考えられます。
権利取り前後の値動きには傾向がある
マネックス証券のアナリストは、2021〜2025年の3月について、予想配当利回り4%以上の銘柄の値動きを検証しています(TOPIX500構成銘柄が対象)。
結果は次のとおりです。
- 権利付き最終日に向けて、株価は緩やかに上昇する傾向があった
- 権利付き最終日を過ぎると、下落に転じる傾向があった
- 配当の受け取りを含めて計算しても、権利落ち後は下落していた
3点目が重要です。配当分を差し引いても下がっているということは、単なる配当落ち以上の売り圧力があったと考えられます。権利を取り終えた投資家の売却が、株価の重しになっている可能性があるということです。
ただし、この傾向は毎年必ず現れるわけではありません。同じ検証では、欧米で銀行不安が広がった2023年3月は例外で、高配当株は権利付き最終日に向けて下落したとされています。
「配当落ちを即日で埋めた」は強い相場のサイン?
権利落ち日のニュースでは、「配当落ち分を即日で埋めた」という表現が使われます。配当落ち分の下げを、その日のうちに取り戻したという意味です。相場の強さを示す目安として語られます。
背景として挙げられるのが、年金基金などによる「配当再投資」の買いです。機関投資家は、将来受け取る配当金を見越して、先に株価指数先物を買うことがあります。2024年3月末には、指数先物に1.2兆円程度の買い需要が発生するとの試算が報じられました。
ただし、即日で埋めたから安心とは言い切れません。野村證券は2012年以降のデータを検証し、9月の権利落ち日に落ち分を埋めたかどうかは、その後の株価動向と逆相関の傾向も見られるとしています。ひとつの目安にとどめるのが無難です。
(関連用語:配当再投資、即日埋め、需給)
初心者がやりがちな3つの失敗
失敗1:「配当だけもらって、すぐ売ればお得」と考える
権利付き最終日に買い、権利落ち日に売る。1日で配当が手に入るなら、得に見えます。
しかし、ここまで見てきたとおり、理論上は配当の分だけ株価が下がります。配当を受け取っても、同じ額の値下がりで相殺されます。
図5:配当取りの短期売買の損得(筆者による単純試算)
前提:株価2,000円の株を100株購入。1株40円の配当。権利落ち日に理論どおり40円下落。
| 課税口座(特定口座など) | NISA口座 | |
|---|---|---|
| 株価の変動 | −4,000円 | −4,000円 |
| 配当金(税引前) | +4,000円 | +4,000円 |
| 配当にかかる税金(20.315%) | −812円 | 0円 |
| 差し引き | −812円 | 0円 |
※売買手数料と、他の要因による値動きは考慮していません。課税口座で売却して損失が確定した場合、口座の種類や配当の受取方法によっては、配当との損益通算により税金が還付されることがあります。
課税口座では、配当から税金が先に差し引かれます。値下がり分はそのまま残るため、手取りベースでは一時的にマイナスになります。
特定口座(源泉徴収あり)で配当を受け取っている場合は、売却損と配当が損益通算され、税金が戻ることもあります。それでも、得になるわけではありません。損得がほぼゼロに近づくだけです。
しかも、先ほどの検証のとおり、高配当株は権利落ち後に配当以上に下がる傾向が見られました。配当取りの短期売買は、値動きのリスクだけを背負う取引になりがちです。
失敗2:信用取引や貸株で、思っていた配当にならない
現物株を普通に保有していれば問題ありません。注意が必要なのは、次の2つのケースです。
図6:保有の形による配当の扱いの違い
| 保有の形 | 受け取るもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 現物株 | 配当金 | NISAで非課税にするには受取方法の設定が必要(後述) |
| 信用取引の買い建て | 配当落調整金 | 配当金や株主優待の権利は得られない。税金の扱いも配当金とは異なる |
| 貸株サービスで貸し出し中 | 配当金相当額 | 配当金とは税金の扱いが異なり、配当控除などの対象外とされる。権利付き最終日までに貸株から外す設定が必要 |
※取り扱いの詳細は証券会社により異なります。各社の公式サイトでご確認ください。
貸株サービスを利用している方は、特に注意が必要です。多くの証券会社には、権利確定の時期に自動で貸株から外す設定が用意されています。権利付き最終日の前に、設定を確認しておきましょう。
失敗3:権利落ちの下げに驚いて、慌てて売る
権利落ち日の下落は、あらかじめ予定された値動きです。業績の悪化でも、不祥事でもありません。
長期で配当を受け取るつもりで買った株を、権利落ちの下げを理由に売る必要はありません。売却を考えるべきなのは、減配や業績悪化など、保有の前提が崩れたときです。
逆に、権利付き最終日の直前に飛びつき買いをするのも考えものです。権利取りの買いで株価が上がった局面で買うと、権利落ち後の下げを大きく受けるおそれがあります。
(関連用語:配当落調整金、貸株、損益通算)
税金の話:NISAなら「税引きの分だけ不利」がなくなる
図5で見たとおり、課税口座では配当に20.315%の税金がかかります。権利落ちで株価は配当の全額分下がるのに、受け取れるのは約8割です。長期保有であっても、この差は毎回生じます。
NISA口座で保有していれば、配当に税金がかかりません。権利落ちで下がった分を、配当でそのまま受け取れます。配当を重視する投資とNISAは、相性の良い組み合わせです。
ただし、NISAで配当を非課税にするには条件があります。配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」(証券口座で受け取る方式)にしておくことです。郵便局などで受け取る方式を選んでいると、NISA口座でも20.315%が課税されます。
設定は証券会社のマイページなどで確認・変更できます。権利付き最終日を迎える前に、一度確認しておくと安心です。
配当投資をこれから始める場合は、証券口座とNISA口座の開設が最初の一歩になります。
(関連用語:NISA、成長投資枠、株式数比例配分方式)
ETFにも「分配金落ち」がある
権利落ちは、個別株だけの話ではありません。ETF(上場投資信託)にも、同じ仕組みがあります。
ETFは決算日ごとに分配金を支払います。決算日の2営業日前が権利付き最終日で、その翌営業日には、分配金の分だけ価格が下がりやすくなります。
たとえば、国内の高配当ETFで純資産総額が最大の「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)」は、毎年1月・4月・7月・10月の各7日が決算日です。次回の決算日は2026年10月7日(水)で、権利付き最終日は10月5日(月)の見込みです。正確な日程は証券会社の案内でご確認ください。
1489は、4月と10月の分配金が多い傾向があります。3月末・9月末の企業の配当が、その時期の分配に反映されるためです。分配金が多い回ほど、分配金落ちの値幅も大きくなります。
高配当ETFと個別株の違いについては、高配当ETFと個別高配当株、どちらが初心者向き?で詳しく整理しています。
(関連用語:ETF、分配金、決算日)
権利落ち日との向き合い方
ここまでの内容を、投資スタイル別に整理します。
図7:スタイル別の考え方
| こんな方 | 権利落ち日との向き合い方 |
|---|---|
| 配当目的で長期保有している | 基本的に何もしなくてよい。下落は配当の前払いのようなもの |
| これから高配当株を買いたい | 権利付き最終日の直前に急いで買う必要はない。業績と配当方針を確認して判断する |
| 権利落ち後の下げで買いたい | 一案ではあるが、下げが続くこともある。時期を分けて買うなど、無理のない方法で |
| 配当取りの短期売買を考えている | 理論上は有利にならない。値動きのリスクだけが残りやすい |
| 信用取引・貸株を利用している | 権利付き最終日の前に、配当の扱いと設定を確認する |
権利付き最終日までのチェックリスト
- 権利付き最終日の日付を確認したか(2026年9月末銘柄は9月28日)
- 保有銘柄の権利確定日は月末か(20日などの銘柄もある)
- NISA口座の配当受取方法は「株式数比例配分方式」になっているか
- 貸株サービスを使っている場合、権利取りの設定はできているか
- 配当だけを理由に、直前の高値で買おうとしていないか
よくある質問
Q1. 権利落ち日に株を売っても、配当はもらえますか?
はい、もらえます。権利付き最終日の取引終了時点で保有していれば、権利は確定しています。権利落ち日以降に売却しても、配当金は後日支払われます。
Q2. 権利落ちで下がった株価は、いつ戻りますか?
決まった期間はありません。数日で戻ることもあれば、長くかかることもあります。その後の株価は、業績や相場全体の動きで決まります。野村證券の検証では、9月の配当落ち前後は35〜40営業日ほど一進一退になりやすい傾向が確認されています。あくまで過去の平均的な傾向です。
Q3. 株主優待の権利落ちでも、株価は下がりますか?
下がることがあります。優待の人気が高い銘柄では、権利付き最終日に向けて買われ、権利落ち日に売られる動きが見られます。優待の価値は配当のように金額で決まらないため、下落幅は理論的に計算しにくい面があります。
Q4. 権利落ち日に買うのはお得ですか?
一概には言えません。配当の分だけ安く買えますが、その配当は受け取れません。理論上の損得は変わりません。権利取りの売りで一時的に下げすぎた場面を狙うという考え方はあります。ただし、下げが続く可能性もあります。
Q5. 株価チャートを見ると、権利落ちのたびに下がっていて不安です。
長期の成績を見るときは、配当を含めた「トータルリターン」で考えるのがおすすめです。株価だけの指数は、権利落ちのたびに配当の分だけ下がります。配当を含めた指数で見ると、TOPIXは2021年1月に、1989年12月の高値を更新しています。配当は、長期の投資成果の大きな部分を占めています。
まとめ
- 権利落ち日には、理論上、配当の分だけ株価が下がる。下がった分は後日配当として受け取るため、資産の合計は理論上変わらない
- 2026年9月末銘柄は、9月28日(月)が権利付き最終日、29日(火)が権利落ち日
- 日経平均の配当落ち分は、近年200〜300円台で推移してきた。配当の増加にともない、影響は大きくなる傾向にある
- 実際の値動きは地合い次第。配当落ち分より小さな下げで済む日もあれば、別の要因で急落する日もある
- 高配当株は、権利付き最終日に向けて上がり、権利落ち後に配当以上に下がる傾向が確認されている。配当取りの短期売買は有利になりにくい
- 信用取引や貸株では、配当の扱いが現物株と異なる。NISAは受取方法の設定を確認する
権利落ち日の下落は、配当という果実を受け取るための通過点です。仕組みを知っていれば、慌てる必要はありません。日々の値動きよりも、その企業が配当を出し続けられるかどうかに目を向けていきましょう。
本記事の情報は2026年9月21日時点のものです。最新情報は各公式サイトをご確認ください。
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