「NISAなら配当金が非課税になる」――この一点を理由に高配当株投資を始めようとしている方は、少し立ち止まってみてください。2026年8月現在、日本の投資環境は数年前とはまったく違う場所に立っています。
新発10年国債の利回りは一時2.9%台をつけ、約29年10カ月ぶりの高い水準に達しました。一方で東証プライムの平均配当利回りは2%台前半です。市場平均の配当利回りが長期金利を下回るという、少し前までは考えにくかった逆転が起きています。
それでもNISA口座で最も買われている日本株は、依然として高配当銘柄です。この一見矛盾した状況を、公的なデータをもとに解きほぐしていきます。
- NISAの成長投資枠で実際に買われている日本株の多くは高配当銘柄で、制度の使われ方と設計意図にはズレがある
- 配当にかかる20.315%が非課税になる効果は、保有し続ける限り毎年発生し続ける
- 企業の増配・自社株買いは過去最高水準にあり、株主還元の姿勢そのものが構造的に変わりつつある
- 一方で株価上昇により配当利回りは低下し、長期金利を下回る水準まで来ている
- 「株式数比例配分方式」の設定を忘れると、NISA口座でも配当に課税される
- 損益通算ができない、米国株の現地課税が残るなど、制度上の制約も理解しておく必要がある
データが示す「NISA=高配当株」という実態
まず、NISA制度そのものの普及状況を確認しておきましょう。金融庁の利用状況調査によると、口座数と買付額は次のように推移しています。
| 時点 | NISA口座数 | 累計買付額 |
|---|---|---|
| 2023年12月末 | 2,125万口座 | 35兆円 |
| 2024年12月末 | 2,559万口座 | 53兆円 |
| 2025年12月末 | 2,821万口座 | 71兆円 |
政府目標は「2027年12月末までに3,400万口座・56兆円」ですが、買付額はすでに目標を大きく上回っています。制度が新しくなった2024年からの2年間で、買付額は35兆円から71兆円へと倍増した計算です。
買われているのは、実は高配当株
ここからが本題です。日本証券業協会が証券会社10社を対象に実施した調査(2026年3月末時点)から、興味深い事実が読み取れます。
2026年1〜3月のNISA買付額のうち、79%が成長投資枠での買付でした。さらに成長投資枠で買われた株式のうち60%が国内株で、NISA買付額全体で見ても44%が国内株です。「NISAといえば全世界株式インデックス」というイメージとは、少し違う姿が見えてきます。
そして特徴的なのが、2026年3月単月における成長投資枠・株式買付額の上位10銘柄の配当利回り分布です。
| 配当利回り | 該当銘柄数 |
|---|---|
| 5%台 | 1銘柄 |
| 4%台 | 1銘柄 |
| 3%台 | 3銘柄 |
| 2%台 | 3銘柄 |
| 2%未満 | 2銘柄 |
10銘柄中5銘柄が配当利回り3%以上でした。上位10銘柄はすべて国内株で、業種は情報・通信業、銀行業、輸送用機器が各2銘柄を占めています。
個別の証券会社が公表しているデータでも、同じ傾向が確認できます。あるネット証券のNISA口座(成長投資枠)における国内株式の保有残高ランキング(2026年6月)では、通信、たばこ、メガバンク、総合商社、自動車といった、高配当株として知られる大型銘柄が上位に並びました。国内ETFの保有残高ランキングでは、日経平均高配当株50指数に連動するETFが1位となっています。
つまり、制度設計上は「成長資金の供給」を狙ったNISAの成長投資枠が、実際には個人投資家の配当収入づくりの場として使われている、というのが現在地です。
メリット(1)配当の20.315%が丸ごと手元に残る
高配当株とNISAの相性が良いと言われる最大の理由は、税金です。
通常、上場株式の配当金には20.315%(所得税15.315%+住民税5%、復興特別所得税を含む)が源泉徴収されます。NISA口座で保有していれば、この国内課税がかかりません。
| 年間配当額 | 課税口座の手取り | NISAの手取り | 差額 |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 79,685円 | 100,000円 | +20,315円 |
| 20万円 | 159,370円 | 200,000円 | +40,630円 |
| 30万円 | 239,055円 | 300,000円 | +60,945円 |
| 42万円 | 334,677円 | 420,000円 | +85,323円 |
最後の42万円は、成長投資枠の生涯上限1,200万円を配当利回り3.5%で埋めた場合の年間配当額を想定したものです。年間8.5万円の差は小さく見えるかもしれませんが、非課税で保有できる期間に期限がない以上、この差は保有を続ける限り毎年積み上がっていきます。単純計算で20年なら約170万円、30年なら約256万円です。
ここが、値上がり益を狙う投資とは性格の違うところです。値上がり益の非課税メリットは売却して初めて確定しますが、配当の非課税メリットは保有しているだけで年に1〜2回、自動的に発生します。
メリット(2)企業の増配という追い風
税制だけでなく、日本企業の株主還元に対する姿勢そのものが大きく変わりつつあります。
- 配当総額は6年連続で過去最高の見通し。2027年3月期の上場企業の配当総額は前期比6%増の23兆円になるとみられ、全体の5割弱の企業が増配を計画しています(3月期決算企業およそ2,200社を対象とした報道機関の集計)。
- 増配計画を示す企業の割合が過去最高。TOPIX500構成銘柄のうち、2026年度に増配計画を示した会社の割合は70%に達しました。配当総額は前期比8%増の計画で、過去のパターンでは期初計画に対して実績が5%程度上振れる傾向があるとされています。
- 自社株買いも過去最高ペース。2026年1〜5月に設定された自社株取得枠は前年同期比34%増の16.2兆円。この期間としては過去最高で、2025年の年間設定額17.7兆円に迫る水準です。
- 累進配当を掲げる企業が381社。累進配当とは「減配せず、配当を維持または増配する」という方針のことです。上場企業の有価証券報告書を調査した集計では、381社がこの方針を明示していました。
東京証券取引所によるPBR改善の要請、政策保有株の解消、資本効率への意識の高まり。これらが複合的に作用し、日本企業は「利益を内部に溜め込む」から「株主に返す」へと軸足を移しつつあります。高配当株投資にとって、これは制度面の追い風と同じくらい大きな構造変化と言えるでしょう。
メリット(3)分配金は実際に増えている
増配トレンドを抽象論で終わらせないために、実際の数字を見てみましょう。国内最大の高配当ETFである日経平均高配当株50指数連動型ETF(銘柄コード1489)の分配金実績です。
| 年 | 年間分配金(100口あたり) | 前年比 |
|---|---|---|
| 2018年 | 4,167円 | ― |
| 2019年 | 4,463円 | +7.1% |
| 2020年 | 3,860円 | ▲13.5% |
| 2021年 | 4,693円 | +21.6% |
| 2022年 | 7,140円 | +52.1% |
| 2023年 | 7,027円 | ▲1.6% |
| 2024年 | 7,800円 | +11.0% |
| 2025年 | 8,900円 | +14.1% |
分配金の支払基準日は毎年1月・4月・7月・10月の各7日で、上の表は公表されている各回の実績を暦年で合算したものです。
2018年から2025年までの7年間で、年間分配金はおよそ2.1倍になりました。仮に2018年に買って持ち続けていた場合、購入価格に対する実質的な利回り(取得価格ベースの利回り)は当時の2倍以上に高まっている計算になります。これが高配当株投資における増配の効果です。
この表には、もう一つ見落とせない情報が含まれています。2020年は前年比13.5%の減配でした。感染症拡大で構成企業の業績が悪化した結果です。50銘柄に分散されたETFであっても、こうした年はあります。分散はリスクを小さくしますが、ゼロにはできません。
注意点(1)制度の落とし穴は4つある
ここからが記事の後半、注意点の整理です。NISAで高配当株を買う際に初心者がつまずきやすいポイントを4つ挙げます。
1. 「株式数比例配分方式」にしないと非課税にならない
NISA口座で買った上場株式の配当金を非課税で受け取るには、配当金の受取方法を証券口座で受け取る「株式数比例配分方式」に設定しておく必要があります。この設定をしていない場合、NISA口座で保有している株式であっても、配当金には20.315%が課税されます。
郵便局などで受け取る「配当金領収証方式」や、指定した銀行口座に振り込まれる「登録配当金受領口座方式」を選んでいると、非課税の恩恵を受けられません。さらに、権利確定日を過ぎてから設定を変更しても、その回の配当については非課税の対象になりません。
「NISAで買ったから非課税のはず」と思い込んだまま、実は課税され続けていたというケースは決して珍しくありません。高配当株を買う前に、証券会社の設定画面を一度確認しておくことをおすすめします。
なお、この方式を選ぶと、NISA口座だけでなく特定口座・一般口座で保有する株式の配当金もすべて同じ方式で支払われます。NISA口座だけを個別に設定することはできません。
2. 損益通算・繰越控除ができない
NISA口座で生じた損失は、税務上は「なかったもの」として扱われます。
たとえばNISA口座で10万円の損失、特定口座で20万円の利益が出たとします。課税口座同士であれば損益を相殺して課税対象額を10万円に圧縮できますが、NISA口座の損失は考慮されないため、特定口座の利益20万円全額が課税対象となります。損失を翌年以降に繰り越す繰越控除も使えません。
高配当株は、減配の発表をきっかけに株価が大きく下げることがある商品です。その損失が税務上まったく救済されない点は、事前に理解しておきたいところです。
3. 外国株の現地課税は取り戻せない
米国株の配当には、現地で10%が源泉徴収されます。課税口座であれば確定申告で「外国税額控除」を使ってこの一部を取り戻せますが、NISA口座では日本国内で非課税とされているため二重課税に当たらず、外国税額控除を適用できません。
結果として、NISA口座で米国の高配当株を保有しても、現地の10%は差し引かれたままになります。この制度上の特性から、NISAでの高配当投資は日本株のほうが構造的に相性が良いと考えられます。国内に上場するETFであっても、投資先が外国株の場合は同様の課税が発生する点にご注意ください。
4. 枠の復活は翌年、つみたて投資枠では買えない
NISAで売却した分の非課税枠が復活するのは翌年です。年内に買い直そうとしても、その年のうちに枠は戻りません。金融庁は「売却した当年中の枠復活」を要望していましたが、令和8年度税制改正では採用されない見込みで、この点は2027年以降も変わらないとみられます。
また、個別の高配当株や高配当ETFは成長投資枠でしか買えません。つみたて投資枠の対象は、金融庁の基準を満たしたインデックス型・アクティブ型の投資信託に限られているためです。したがって高配当株投資に使える枠は、年間240万円・生涯1,200万円が上限となります。
注意点(2)利回りは「去年の常識」で測れない
2026年の高配当株投資を考えるうえで避けて通れないのが、利回り水準そのものの低下です。
| 指標 | 水準 | 基準日 |
|---|---|---|
| 東証プライム 予想平均配当利回り(加重平均) | 2.01% | 2026年7月15日 |
| 日経平均高配当株50指数連動型ETF 分配金利回り | 2.68% | 2026年8月20日 |
| 個人向け国債・変動10年 | 1.87% | 2026年8月募集分 |
| 新発10年国債利回り | 一時2.945% | 2026年8月18日 |
日本を代表する高配当ETFの分配金利回り(2.68%)が、10年国債の利回り(2.9%台)を下回っている。これが2026年夏の状況です。このETFは過去10年の平均利回りが約3.9%で、5%を超える時期もありました。それがここまで低下した理由はシンプルで、株価が上がったからです。
配当利回りは「1株あたり配当金÷株価」で決まります。配当金額が同じでも株価が5割上がれば、利回りはおよそ3分の2に縮みます。日経平均株価は2026年8月21日の終値で66,016円。年初来では3月末に50,558円の安値、6月に72,831円の高値をつけており、株価水準そのものが大きく切り上がりました。
去年つくった高配当株リストを、そのまま使わないことです。配当利回りは銘柄ごとに、今日の株価で計算し直してください。同じ銘柄でも、1年前とは投資判断の前提がまるで変わっている可能性があります。
注意点(3)「高配当の罠」を見抜く4つの視点
配当利回りの高い順に上から買っていく。これが初心者に最も多い失敗パターンです。
利回りは「配当÷株価」で計算されるため、株価が下落している最中の銘柄ほど、数字上の利回りは高く跳ね上がります。その中には、業績悪化により近い将来の減配が見込まれる「見せかけの高配当」も少なくありません。
| 視点 | 確認すること | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 配当性向 | 利益の何割を配当に回しているか | おおむね30〜50%なら健全とされる。70%超は増配余力が乏しく、100%超は利益以上に配当を払う状態で減配リスクが高まる |
| 配当方針 | 累進配当やDOEを掲げているか | 累進配当(減配しない方針)やDOE(株主資本配当率)を基準にしている企業は、業績が振れた年でも配当が下支えされやすい |
| 営業キャッシュフロー | 配当の原資を本業で稼げているか | 営業CFが安定してプラスで、配当支払額を上回っているかを確認する |
| 連続増配・非減配の年数 | 過去の実績はどうか | 長期の連続増配は、景気変動を乗り越えてきた事業基盤があることの手がかりになる |
銘柄を見るときの流れ
知名度の高い企業でも減配リスクはある
NISAの保有残高ランキングでも上位の常連である大手たばこメーカーは、配当性向75%前後を目安とする株主還元方針を掲げてきました。しかし2024年度は、海外子会社の訴訟和解に伴う特別損失を計上した影響で、連結配当性向が一時192%まで上昇し、減配リスクが指摘される場面がありました。
先ほど触れたETFが2020年に13.5%減配したことも含め、「有名企業だから」「ETFだから」といって減配しないわけではありません。この点は、投資を始める前に受け入れておく必要があります。
注意点(4)金利上昇局面では「高配当」の中身が分かれる
2026年ならではの論点として、金利環境の変化も押さえておきましょう。
日本銀行は2026年6月15〜16日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げました。1995年以来、およそ31年ぶりの水準です。7月の会合では1.0%に据え置いたものの、利上げ路線を維持する方針を改めて示しています。
金利の上昇は、高配当セクターに対して方向の異なる影響を与えます。
| セクター | 金利上昇の影響 | 背景 |
|---|---|---|
| 銀行・保険などの金融 | 追い風になりやすい | 利ざやの改善により収益が拡大しやすい |
| 商社・海運などの市況関連 | 中立〜まちまち | 金利よりも景気や市況の要因が影響しやすい |
| 電力・ガス、REIT、内需ディフェンシブ | 逆風になりやすい | 債券の代替として買われてきた面があり、債券利回りの上昇で相対的な魅力が低下しやすい。有利子負債の利払い負担も増える |
「高配当株」とひとくくりにされがちですが、金利への感応度という観点では、正反対の性格を持つ銘柄が同居しています。金融株だけに偏ったポートフォリオは、利上げ局面では強くても、金利が低下する局面では脆くなりやすいという面があります。業種の分散は、単なる分散以上の意味を持つと考えておきたいところです。
その点、日経平均高配当株50指数は、母集団である日経平均株価が流動性と業種バランスを考慮して構成されているため、高配当を狙いながらも特定業種に偏りにくい設計になっているとされています。
「NISAで高配当株はもったいない」という意見をどう考えるか
高配当株投資について調べていると、次のような主張に出会うことがあります。
NISAは複利を育てる場所であって、配当を受け取る場所ではない。配当を受け取ってから再投資すると、その分だけ貴重な非課税枠を消費してしまう。分配金を出さないインデックス投信であれば、内部で再投資されるので枠を消費しない。
これは理屈として筋の通った指摘です。純粋に資産額の最大化だけを目的とするなら、分配金を出さないインデックス投信のほうが効率的と考えられます。また高配当株投資は「株式投資の中では相対的に低リスク」と言われることがありますが、TOPIXや全世界株式のインデックス投資と比べれば、銘柄の集中や業種の偏りの分だけリスクは高くなります。
では高配当株に意味はないのかというと、そうではありません。判断の分かれ目は、投資の目的とライフステージにあります。
| 項目 | 資産形成期(20〜50代前半) | 取り崩し期・準リタイア期(50代後半〜) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 資産の最大化 | 元本を維持しながらキャッシュフローを得る |
| 相性が良いとされる手段 | インデックス投信 | 高配当株・高配当ETF |
| 理由 | 分配金を出さず内部で再投資されるため、非課税枠を消費しない | 資産を売却せずに収入を得られる。毎回いくら取り崩すかを判断する必要がない |
高配当株の価値は、リターンの効率よりも「売らずに使える」という設計にあると考えられます。資産を取り崩していく局面で、毎回どれだけ売るかを判断するストレスから解放される。相場が下がっている時に、あえて売らずに済む。こうした実務面・心理面のメリットは、シミュレーション上の数%の差だけでは測りきれない部分です。
現役世代であっても、「配当が振り込まれる」という体験が投資を続ける支えになるのであれば、それも一つの合理的な選択でしょう。投資は続けられなければ意味がありません。
現実的な着地点としては、インデックス投信を中心に据え、高配当株を組み合わせる形にしたうえで、年齢とともに比率を調整していく設計が、多くの方にとって無理がないと考えられます。
実践編:どんな手段があるか
高配当株投資の実行手段は、大きく3つに分かれます。
| 手段 | コスト | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 個別株 | 売買手数料のみ(ネット証券のNISAでは無料が主流) | 保有中のコストがかからない。銘柄を自分で選別できる | 銘柄分析と分散の手間がかかる。少額では分散しにくい |
| 高配当ETF | 信託報酬 年0.1〜0.3%程度 | 1本で数十銘柄に分散できる。数千円から買える | 保有中ずっとコストがかかる。組入銘柄は選べない |
| 高配当型の投資信託 | 信託報酬 年0.1%前後〜 | 100円単位で買えるため、非課税枠を使い切りやすい | 組入銘柄は選べない。分配金の原資に元本払戻金が含まれる場合がある |
代表的な商品の実データ
国内で純資産総額が最大の高配当ETFは、日経平均高配当株50指数に連動するタイプです。2026年8月20日時点の純資産総額は5,471.7億円で、信託報酬は年0.308%(税込)、総経費率は年0.37%。分配金は年4回(1月・4月・7月・10月の各7日が基準日)支払われ、分配金利回りは2.68%でした。取引所価格は2026年8月21日終値で3,550円と、この金額から購入できます。
投資信託タイプでは、信託報酬が年0.099%(税込)とアクティブ型としては非常に低い水準の日本高配当株ファンドもあり、2026年5月時点の純資産総額は2,000億円を超えています。
また一部のネット証券では、2026年3月からETFについても金額指定の少額取引に対応し、NISA成長投資枠限定で100円から購入できるサービスが提供されています。「まず少額で試してみたい」という方には、現実的な入り口になりそうです。
2027年から制度はどう変わるか
今後の制度動向も押さえておきましょう。令和8年度税制改正大綱で示されたNISA関連の主な内容は、次の3点です(施行は2027年1月以降の予定)。
- 未成年向けのつみたて投資枠を創設。0〜17歳を対象に、年間投資枠60万円・非課税保有限度額600万円。かつてのジュニアNISAと異なり、一定の要件のもとで12歳以降の払出しが可能で、非課税期間は無期限。18歳に達した時点で、特段の手続きなく成人のつみたて投資枠へ移行する仕組みとされています。
- つみたて投資枠の対象商品を拡充。指定指数に読売株価指数(読売333)とJPXプライム150指数が追加されます。また指定指数に連動しない投資信託の要件が「株式50%超」から「株式と公社債を合わせて50%超」へ見直され、債券中心やバランス型の投信も対象に加わる見込みです。
- 口座の所在地確認手続きの簡素化。
高配当株投資を考えている方にとって重要なのは、成長投資枠に変更がないという点です。年間240万円・生涯1,200万円という枠も、売却した枠の復活が翌年である点も、そのまま維持される見通しです。「2027年の改正を待ってから始めよう」と考える理由は、高配当株投資に関する限り見当たりません。
まとめ:始める前の最終チェックリスト
新NISAでの高配当株投資は、制度と企業の株主還元姿勢という2つの追い風を受けています。同時に、利回り水準の低下と金利上昇という新しい逆風にもさらされています。この両面を理解したうえで始めるかどうかが、数年後の受け止め方を分けることになりそうです。
- 配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」に設定したか
- 高配当株を買うのは成長投資枠(つみたて投資枠では買えない)と理解したか
- NISAの損失は損益通算も繰越控除もできないと理解したか
- 米国株の配当には現地10%の課税が残ると理解したか
- 買おうとしている銘柄の配当利回りを、今日の株価で計算し直したか
- その銘柄の配当性向を確認したか(100%超なら要注意)
- 業種が偏っていないか(特に金融株だけになっていないか)
- インデックス投信とのバランスを、自分の年齢と目的から決めたか
高配当株投資は、短期間で資産を大きく増やす手法ではありません。増配してくれる企業を選び、非課税で長く持ち続ける。地味ですが、それがこの投資法の性格です。2026年の高い株価水準を前に焦る必要はありません。利回りを一つずつ測り直し、納得できる銘柄から少しずつ積み上げていく。それが、この環境での現実的な進め方ではないでしょうか。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。記載した数値・制度・税制等は記事作成時点の情報に基づくものであり、最新情報は証券会社・取引所・国税庁・各企業IRなどの公式情報をご確認ください。